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第三章
天界……、人?
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「ロ……、ロベール……」
色っぽくて真剣で、僕を求めるロベールの瞳。
うう……。なんだか恥ずかしくて真面に目が合わせられない……。
「――あんなところで、」
「え?」
掠れた声が色っぽくて、つい彷徨わせていた視線を合わせた。
「あんなところで、私を煽るような可愛いことを言われたら困る」
しかも真剣な表情が妙に色っぽい。かっこよさが倍増して、無駄にドキドキしちゃうじゃないか。
「……だって」
「なんだ?」
無意識なのか何なのか、またあの艶やかな低音ボイスだ。
むううー。やっぱ、めっちゃ狡いよ、ロベール!
僕に煽るなって言いながら、何だよそのロベールの纏っている色気は。
むずむずして、むずむずして……。昨日のやらしくて色っぽくてかっこいいロベールのあれこれを思い出しちゃうじゃないか!
し、しかも僕いろいろとわけわかんないことになっちゃって、恥ずかしい声さんざん出させられてさ……。
ううーっ。思い出したくなかったのにぃ。
「こら」
「ひゃっ!」
ロベールはぐずぐずと考え込む僕の顎を捕らえて、視線を強引に合わせた。
「お前は本当に……、質の悪い奴だ」
「ロ……、ロベ……」
詰るようなその言葉に反してロベールの表情はどこか恍惚としている。唇が付きそうなくらいの近さで囁くように言われ、僕の熱はすぐにもぶり返しそうだ。心臓の音が嫌に大きく聞こえ始めた。
どうやら煽っているのはロベールの方だ。咎めるふりをして僕を追い詰めて、そのくせ口角がゆっくりと上がる。
吐息がかかるその熱で、僕の気持ちまで蕩けてきた。
もうどうなってもいいかも……。
そっと瞼を閉じようとしたとき、ガラッと勢いよく保健室の扉が開く音がした。びっくりして目を開ける。
だけど飛び起きようとした体は、ロベールの手によって制された。
「ロ……、?」
ヤバいからって、抗議しようと見上げたロベールの表情は、さっきのそれとは真逆で冷たいオーラを放っている。扉の方に向けている視線も冷たい。
何?
僕もひょいっと視線をそちらに向けてみると、そこには独特な威圧感を放ったこれまたものすごく綺麗な人が凛とした表情で立っていた。
誰、この人?
「――何か用か?」
思わず背筋が冷えるような冷たい声。やっぱり知り合いのようだ。しかもロベールは、すごく鬱陶しがっているみたいで。
「……久しぶりだというのにずいぶんなご挨拶だね。……元気そうだな」
「こいつのおかげでな」
そう言いながらロベールが、グイッと僕を引っ張って抱き寄せた。
え? ええっ?
ロ、ロベール?
人前で見せびらかすようないちゃつきは苦手なんだけど、でも恥ずかしいからと言って、なんだか雰囲気が雰囲気なだけにジタバタもがくことが出来ない。
どうしようと焦りながら、ロベールの腕の中で縮こまるように息を殺した。
「そう。……ああ、そうか。しばらく気配を消していたのに、ついつい力を使っちゃったのはその子のせいなんだね?」
「それがどうした」
「……いや」
表情をほぼ変えずに、その綺麗な人は僕の顔が見えるように位置を移動して、じっと僕の顔を見つめた。
緊張で、いやな汗が流れる。
何なの、こいつ! めっちゃ威圧的なんだけど!
「……へえ、その子がねえ」
「あ゛あ?」
値踏みするように意味深な言葉を発するその人に、ロベールが声を荒げる。
「お前は私の保護者かなんかか? 暇じゃないんだろ? さっさと天界に帰れよ」
え!? て、天界?
びっくりして見上げる僕に、その人は静かに笑った。
色っぽくて真剣で、僕を求めるロベールの瞳。
うう……。なんだか恥ずかしくて真面に目が合わせられない……。
「――あんなところで、」
「え?」
掠れた声が色っぽくて、つい彷徨わせていた視線を合わせた。
「あんなところで、私を煽るような可愛いことを言われたら困る」
しかも真剣な表情が妙に色っぽい。かっこよさが倍増して、無駄にドキドキしちゃうじゃないか。
「……だって」
「なんだ?」
無意識なのか何なのか、またあの艶やかな低音ボイスだ。
むううー。やっぱ、めっちゃ狡いよ、ロベール!
僕に煽るなって言いながら、何だよそのロベールの纏っている色気は。
むずむずして、むずむずして……。昨日のやらしくて色っぽくてかっこいいロベールのあれこれを思い出しちゃうじゃないか!
し、しかも僕いろいろとわけわかんないことになっちゃって、恥ずかしい声さんざん出させられてさ……。
ううーっ。思い出したくなかったのにぃ。
「こら」
「ひゃっ!」
ロベールはぐずぐずと考え込む僕の顎を捕らえて、視線を強引に合わせた。
「お前は本当に……、質の悪い奴だ」
「ロ……、ロベ……」
詰るようなその言葉に反してロベールの表情はどこか恍惚としている。唇が付きそうなくらいの近さで囁くように言われ、僕の熱はすぐにもぶり返しそうだ。心臓の音が嫌に大きく聞こえ始めた。
どうやら煽っているのはロベールの方だ。咎めるふりをして僕を追い詰めて、そのくせ口角がゆっくりと上がる。
吐息がかかるその熱で、僕の気持ちまで蕩けてきた。
もうどうなってもいいかも……。
そっと瞼を閉じようとしたとき、ガラッと勢いよく保健室の扉が開く音がした。びっくりして目を開ける。
だけど飛び起きようとした体は、ロベールの手によって制された。
「ロ……、?」
ヤバいからって、抗議しようと見上げたロベールの表情は、さっきのそれとは真逆で冷たいオーラを放っている。扉の方に向けている視線も冷たい。
何?
僕もひょいっと視線をそちらに向けてみると、そこには独特な威圧感を放ったこれまたものすごく綺麗な人が凛とした表情で立っていた。
誰、この人?
「――何か用か?」
思わず背筋が冷えるような冷たい声。やっぱり知り合いのようだ。しかもロベールは、すごく鬱陶しがっているみたいで。
「……久しぶりだというのにずいぶんなご挨拶だね。……元気そうだな」
「こいつのおかげでな」
そう言いながらロベールが、グイッと僕を引っ張って抱き寄せた。
え? ええっ?
ロ、ロベール?
人前で見せびらかすようないちゃつきは苦手なんだけど、でも恥ずかしいからと言って、なんだか雰囲気が雰囲気なだけにジタバタもがくことが出来ない。
どうしようと焦りながら、ロベールの腕の中で縮こまるように息を殺した。
「そう。……ああ、そうか。しばらく気配を消していたのに、ついつい力を使っちゃったのはその子のせいなんだね?」
「それがどうした」
「……いや」
表情をほぼ変えずに、その綺麗な人は僕の顔が見えるように位置を移動して、じっと僕の顔を見つめた。
緊張で、いやな汗が流れる。
何なの、こいつ! めっちゃ威圧的なんだけど!
「……へえ、その子がねえ」
「あ゛あ?」
値踏みするように意味深な言葉を発するその人に、ロベールが声を荒げる。
「お前は私の保護者かなんかか? 暇じゃないんだろ? さっさと天界に帰れよ」
え!? て、天界?
びっくりして見上げる僕に、その人は静かに笑った。
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