フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

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第三章

匂い立つフェロモン

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やっぱりあの時間からベッドに横になったせいで、母さんに何度も起こされてようやく目を覚ますことが出来た。
……とは言え、やっぱりまだ眠い。

「ふわわ……」

あくびを噛み殺しながら歩いていると、後ろからタタタと走り寄る音が聞こえてきた。

「ギャーッ!」

あまりの気持ち悪さとびっくりしたせいで、咄嗟に恐ろしい声が出た。
知らないやつが背後から抱き着いてきて、僕の乳首をグニッと押しやがったんだ!!
もちろんすぐにそいつの腕を爪で抓って、思いっきり足を踏んずけた。

「イッテ! 痛ーーっ!! 何すんだ!」
「それはこっちのセリフだ、バカヤロー! 変態っ!」

振り向いてそいつの顔を見てぎょっとした。あのトイレの変態だ。
気持ち悪さに僕の顔が段々険しくなっていくのが分かる。それなのに、目の前の変態は痛さに歪んでいた表情を、恍惚のそれにと変えていった。

「……ああ、やっぱりお前色っぽいわ。本当は誘ってるんだろ? そうだよな……」
「は?」

なにこいつ、こわっ! キモッ!

思わず後ずさったせいで、誰かにトンッとぶつかった。
慌てて振り返ると、今朝別れたばかりのロベールが立っていた。

「ロベ……」
「君は下級生相手に、何をしているんだ?」

僕の肩をグッと抱き寄せながら、ヒンヤリとした突き放すような声で変態に問いかける。……いや、問いかけというよりは威嚇だろうか? 
目の前の変態の顔色が、さすがに青くなってきた。おどおどと起き上がり、鞄を引き寄せて逃げる体勢だ。返事をしながらロベールからじりじりと遠ざかる。

「べ、別に……。こいつが俺のこと呼び寄せるから……。し、失礼しますっ!」

最後の一言は、駆け去りながら叫ぶように放った。

「ったく、油断も隙も無い奴だ。……大丈夫か?」
「うん……」

本当は気持ち悪くて仕方がないからロベールに抱き着いて甘えたいけど、ここは往来だからそういうわけにもいかないよな。
そんな風に自分の中で葛藤しながらロベールを見ると、彼は眉を下げて困ったような表情をしていた。

「ロベール?」
「甘いフェロモンがまた匂い立ってる。……私と会っているからか?」
「……え? わ、わかんないよ。でも……、さっきの奴、気持ち悪かったから……、ロベールにくっ付いて甘えたいなって思ってるけど……」
「――――」

一瞬ピシッと固まったロベールは、バッと僕を抱き上げてお姫様抱っこをした。
え?と思う間もなく目の前がぐにゃりと歪んだ。


気が付いたら僕は、ロベールにベッドの上で覆いかぶされていた。
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