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第二章

ロベールのお泊り 8

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「あ……、はっ、……ああっ」

ロベールがゆっくりと僕の中を抜き差しする。
僕の弱いとこばかりを責めているみたいで、さっきから声を止めることが出来ないし体が跳ねる。

「つ……っ、ロベール……ッ、ロベ……ル」

縋りたい、抱き着いていないとどうにかなってしまいそうだ。

「変になる……。おかしくなっちゃう……!」
「……っ、南……、腕……、いいから、どこでもいいから私につかまってろ」

そう言いながら、ロベールの動きが早くなってきた。ロベールの肩近くに手を伸ばして、意識が吹き飛ばされないように必死で縋った。

全身から噴き出すように溢れ出す快感の波と、ガクガクと制御できない自分の体。


もう、ダメ……!

熱くはじけるロベールを感じるとほぼ同時に、僕も熱を放っていた。




「う……ん?」

……気持ちいい。スルスルと滑らかで暖かな感触。だけどちょっと硬くて安心できる。

目を開けると、がっしりと抱かれたままの状態だってことが分かった。裸のままのロベールが、僕を胸に抱きこんでいる。

……ずっとこうしてくれていたのかな?

どうしよう。キュンとする。
きっともう、ロベールのいない生活なんて考えられない。

……悪魔だって言ってたけど、僕のこと本気だって言ってたから遊びとかじゃないよね?
この先はずっと僕だけだって言ってたよね?

そっとロベールの寝顔を見ようと顔を上げた。相変わらずの綺麗な整った顔。穏やかな表情だ。

体を戻してギュッと抱き着き、胸のあたりに頬を擦りつけてみる。
気持ちいい……。
トロンとして、また眠気が近づいてきた。

ギュッ。
……え?

背中に回っていたロベールの腕が、明らかに僕を抱く腕に力を込めていた。

「……起きてたのか」

僕を抱きしめたまま、髪を撫でている。

「うん……、さっき」
 
あまりにも優しい掌の感触に、また甘えたくなってしまった。僕からも抱きついて頬をスリスリとロベールの肩口に擦り付けた。

「本当にお前は……」
「……うん?」
「……不思議な体質だよな。妖しく匂い立つフェロモンだから、変質者を引き寄せてしまうが……。だけどその強烈な色香のせいで、私も南の存在に気づいたんだが……」

そう言って少し体を離して僕の顎を持ち上げて、真顔のロベールが僕の顔をじっと見つめる。

「お前は……、私に呼ばれたのかな……?」
「え?」
「ああ、いや、何でもない。こっちの話だ」

むっ、なにそれ。

ぷくーっと膨れっ面を作ってロベールを睨む。それに気づいたロベールが、苦笑いを零した。

「……情けない話だ。聞くことはない」
「なんだよ、それ」

ますます膨れっ面を作る僕に、ロベールはヤレヤレという顔をした。

「……魔界を追放されたと言っただろう? 別にそれ自体はどうでもよかったんだが、ずっと一人でいるのを寂しいと思ってしまったんだよ。……だけど思うようにいかなくてな。……まあ、私もこんな性格だから、快楽に興じて気ままに生きていけばいいかと思いもしたんだが……」

「…………」

目を伏せて、そう訥々とつとつと話すロベールの表情は自嘲しているようにも見える。寂しいと思ったという自分の気持ちを受け入れ切れていないのか、恥ずかしいことだと思っているのか……。

「だけど、それでもいいかと思いはしたものの、それでも時々思い出してしまうのは過去に知り合った、寄り添うように生きていた二人のことだった。自分には手に入れられないものだと思ってはいても、もしかしたらそういう関係をずっと望んでいたのかもしれない」

「ロベール……」

そういえば、両思いになったことないって言ってた。その二人って、ロベールにとってどんな人たちだったんだろう。……もしかして、そのうちの誰かに片思いとかしてたの?

ロベールは目を伏せたまま、ふっと笑って言葉をつづけた。

「……もしも私にも伴侶と呼べる運命の相手がいるのなら、私の前に現れろと……、私に分かるように合図を送れと、そう無茶なことを考えていたのさ」
「……もしかして、それが、僕?」
「そうだろ? こんなに分かりやすい色香をまとったフェロモンを溢れさせて……。また、……匂い立ってる」

顔を上げたロベールが、僕のことをすごく優しい表情で見つめた。

そして手を伸ばして僕を引き寄せ、優しく唇を啄んだ。
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