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第二章

ロベールのお泊り

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正体もそうだけど、僕んちに泊まると言い張るロベールに僕の心臓がバクバクと煩い。

泊まるって……、泊まるって!

バクバクどぎまぎしながら家に着いた。

「案ずるな。家の者には気配は一ミリも出さないから」

いや、気になるのはそこじゃないし!
だって、ロベールは十分変態なことしてくるし……、僕本気でロベールに迫られたら……、どうなっちゃうんだろう。

「……濃くなってる」
「へ? はあ?」
「フェロモン濃くなってるぞ。誘ってるのか?」
「……ばっ、何言って……!」

とんでもないことを言われて、カーッと一気に顔に熱が集まった。

「ああ、悪い。とにかくさっさと家に入れ」
「わ、分かったよ」

「ただいまー」
「おかえりなさい、南。そろそろご飯にするから、着替えて手を洗ってきなさい」
「うん」

僕の部屋は二階なので、タタタと階段を駆け上がり部屋を開けた。パパッと制服を脱ぎ捨てTシャツを手に取る。

「うわっ!」

なにげに視線を向けた先に、ロベールがいたので驚いた。い……、いつの間に?

「何驚いているんだ。失礼な奴だな」
「だ、だって、急にいるからびっくりするじゃないかっ」
「窓のカギが開いていた。不用心だぞ?」
「え? なに、外から入ってきたの?」
「ああ。人通りが無くなったから、そのままふわりとな」
「そういえばロベール、飛べるんだったね。羽とかなくても飛べるなんて不思議だけど」
「ああ、短い時間ならな。私だって長時間飛ぼうと思ったら羽を広げなきゃダメだぞ」
「へえ? そうなんだ」

ってことは、ロベールは羽をもっているってこと? どこに隠してるんだろう?
疑問に思ってじろじろと見ていると、ロベールに怪訝な顔をされた。

「あ、ごめん。羽、どこにあるのかなと思って」
「なんだ、そんなことか。羽なら畳んでしまいこんでいる。それはまた今度な」
「んー、分かった」

簡単にいなされちゃった。残念。

「あ……、僕これからご飯食べに行くんだけど、ロベールはどうするの? ご飯食べなきゃお腹すいちゃうだろ?」
「それは気にしないでいい。人間の言う食事も普通にしはするが、それほど大事なことじゃない」
「そうなの?」
「ああ。だから気にするな」
「ふうん……。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」

ロベールは静かに微笑んで、手をひらひらと振って僕を見送った。

でも、気にするなと言われても、一人だけご飯を食べているのはやっぱり気になる。僕は母さんと父さんがこっちを見ていない隙に、ささっと唐揚げを二個ほどティッシュに丸めて、ごちそうさまをした後いつものように下で少しのんびりした後自室へと戻った。

「ロベー……、あっ」

大きな声を出しかけて咄嗟に口をつぐんだ。
ロベールが僕のベッドの近くに座って、待ちくたびれた子供のような姿で俯せて寝入っていた。
そっと近づいて顔を覗き込んでも起きる気配がない。

……ホント、綺麗な顔してるよなぁ。鼻筋は通っているし、唇は色っぽいし。
艶々と輝く黒い髪に、白くて滑らかな肌がより一層際立っている。

「…………」

柔らかそうな髪だなぁ。

僕はそっと手を伸ばして、ロベールの緩くウエーブのかかった髪をそっと掬い上げた。

……柔らかい。さらさらして手触りも……、!?

さっきまで寝ているものだとばかり思っていたロベールがパチッと目を見開いて、僕をグイっと引っ張る。何が起こった!?と思う間もなく僕の体は、いつの間にかベッドの上に仰向けに寝かされていて、ロベールに組み敷かれていた。

「ロ……、ロベール……?」
「黙って」

ロベールの顔がゆっくりと僕に近づく。綺麗な顔の真剣な表情は、無駄に僕のドキドキを加速させて心臓に悪い。

「あ、あの……、唐揚げ……」
「――後でもらうから。目、瞑れ」

低く甘い声にぞくりとする。僕はやっぱり、ロベールのこの声に弱いようだ。

ドキドキと高鳴る気持ちのままそっと目を閉じると、ふわりと柔らかいロベールの唇が、僕のそれをしっとりと塞いだ。
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