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第二章

ロベールの正体

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適当に三人で他愛のないことを話しながら歩いていた。
奏多はもう、ロベールのことを信用しきっていて、リラックスしているようだ。きっとどんな変態が現れても、ロベールがうまく退治してくれると確信しているのだろう。

「ところで君たちは、さっきの笹山君たちとは仲がいいのかい?」
「え? 笹山と? とくには、……なあ?」
「うん。同じクラスだけど、普段はあまり話したことはないよね」
「その割には熱心に、南を送りたがっていたようだったな」
「ああ……」

奏多が顎に手を置き視線を宙に向けた。その時のことを思い出しているようだ。
ロベールはちらりと僕に流し目をよこして、意味深な表情をした。

……なんだろう。さっきも二人のこと、ちょっと冷めた目で見ていたし。ロベールはあの二人のこと気に入らないのかな?

「そういや、笹山って、日暮のことも気に入らないみたいだったよな。……ていうか、邪魔って感じだったっけ」
「うん。最初から日暮のことは、あまりいいようには言ってなかったね」
「もしかしたら笹山、南のこと好きなんじゃない?」
「ええっ!?」
「あ、いやいや、だからさ、友達になりたいと思ってんじゃないのかなって」
「……ああ、そっちか」

あー、もうびっくりさせるなよな。
……ふうっ。

まあでも、僕も過剰反応だって自覚はあるんだけどさ。変態の被害を今まで多く受けすぎてきたから、ついついそっち系統にとらえちゃうんだよ。だけど、確かに友達になりたいって考える方が普通だよな。

「……まあ真偽のほどは、さておき。南は近づいてくる相手には、一応警戒しておいた方がいいな」
「笹山に? あいつ、別にそれほど嫌な奴だとは思わないけど」
「何も笹山だけじゃない。日暮とか、そのほかの奴もだ」
「ええ? 日暮も? あいつ、いいやつだよ。なあ?」
「うん、品行方正、さすが委員長って感じだけど」
「――人は見た目で判断するものではないからな。……ということで近江、くれぐれも南のことは頼むぞ」
「へ? おう、もちろん」

奏多は意表を突かれて一瞬キョトンとした後、すぐに真面目くさった表情でこくりと頷いた。

そして奏多と別れる交差点についた。
今までだったら奏多は、遅くなり暗くなったら気を遣って僕を送ろうとしてくれるんだけど、今日はロベールがいるので安心してそのまま帰ることを選んだようだ。

「じゃ、また明日な。先生、南のことよろしくね」
「ああ。近江も、気をつけて帰れよ」
「ハハ。はい。気を付けて帰ります。じゃあな南」
「うん、明日ね!」

奏多はぶんぶんと大きく手を振って、そのまま家へと走って帰って行った。

「さて、じゃあ帰るか」
「うん」

ゆっくりと、出来るだけゆっくり僕は歩いた。
だって、家に着いちゃったらロベールとの一緒の時間は無くなっちゃうわけだし。なんとなくまだ離れたくなかった。
好きだって認めたらさ、やっぱり傍にいたいと思うじゃん。
なのに……。

「おい、何ちんたら歩いてるんだ?」
「…………」

無情なロベールの言葉にムッとする。頬を膨らますと、ロベールは小首を傾げた。

「なんだ?」
「……何もそんなに早く帰らなくてもいいじゃん」

僕がそう抗議すると、ロベールの片眉が上がる。そして何かに思い当たったのか、ゆっくりと口角を上げた。

「離れるのが嫌なのか?」
「…………」

なんだよ、それ。ロベールは寂しくないのかよ! ニヤニヤしやがって!

剥れてそっぽを向くと、ロベールの忍び笑いが聞こえた。

「甘いなあ、南。……私を誰だと思っているんだ?」
「……何?」
「離れるわけないだろう。今日はお前の部屋にそのまま泊まるぞ?」
「は……? はいぃ!? な、何言ってんだよ! そんなことできるわけないだろっ! 見つかったらどうするんだよ?」

僕がそう抗議すると、ますますロベールの表情が意地悪くなる。

「見つかる? 私が? まさか」
「え? だって……」
「人間の感覚と一緒にするな。追放されたとはいえ、私は魔王の息子だ。しかも魔力は健在だぞ?」


……は?
なんですと?

魔王の息子ーーーーー?

目をまん丸にして驚く僕を、ロベールは愉快そうに見ていた。
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