フェロモン? そんなの僕知りません!!

くるむ

文字の大きさ
上 下
10 / 93
第一章

僕、ロベールのこと…

しおりを挟む
ご飯を食べ終わりお弁当箱を片付けて、ハアッとため息を吐いた。

だってさ、助けたお礼に保健室に来い……ってことはさ……。もごもごもご……。

「南? 行かないの?」
「あ、うっうん、行くよ、行くっ」

訝しい顔で僕を見る奏多に、焦って笑いながら席を立った。

「じゃ、ちょっと行ってくる」
「行ってらー」

手を振る奏多に見送られながら、僕は保健室へと向かった。

……なんだか変な気もち。
ドキドキするような行きたくないような……、でも行かないっていう選択肢が無いような……。

はー。
何だろ、この焦燥感のような気分は。

保健室の扉をカラカラと開けて、硬直。綺麗系な女子が、ロベールに迫っていた。

「そんなに苦しいのなら病院に行きなさいと……、あ」
「え?」
「――――」

「ほら、具合が悪いなら担任に病院に行くように、」
「もういい! 治ったから!」

そう言ってかなり大胆に開けていたシャツの襟をバッと合わせ、その子は手早くボタンを留めた。そして僕に文句を言いたげな表情を向けて出て行った。

「…………」

「なにぼーっとしてる。来いよ」
「…………」

来い来いと手招きするから一応行くけど……。なんか、ちょっとムカつく。

ノロノロ近づく僕に業を煮やしたのか、ロベールからも近づいて来た。

「南、……どうした」
「別に」

別にと言いながら、多分顔は剥れている。そんな僕の様子を見て、ロベールが苦笑した。

「さっきのは、向こうが勝手にやって来ただけだ。興味ないからちゃんと無視したし、妬く必要は無いぞ?」
「だ……、誰が妬いたって……!」

あ……。

グイッと引っ張られて、ギュッと抱きしめられた。

「…………」

やっぱり、……やっぱりロベールは他の人と違う。
抱きしめられたらその温かさで力が抜けるし、ずっとこうしていて欲しいだなんて……、そんなことまで思ってしまう。

「南……」
「え? うわっ」

体を離されたかと思ったら、すぐにふわりと持ち上げられベッドの上に寝かされた。
突然のことに驚いたけど、やっぱり嫌悪感は無い。それどころか心臓が、トクントクンと可愛らしい音を放ち始めた。

どうしよう……、どうしよう僕……。

もしかしたら本当に僕は……。

ロベールは僕に覆い被さるように跨って、僕の目をじっと見ている。その何とも言えない力強く熱っぽい瞳に、僕も目を逸らせない。

体が熱くなる。
呼吸するその息までも、熱くなっているんじゃないかって錯覚するくらい、僕の頭は沸騰していた。

「そんな目で見られると……、堪らないな」

ちゅっ。
啄むような可愛いバードキスだ。

それを何度も何度も繰り返した後、あの翻弄される深いキスへと移行した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

「短冊に秘めた願い事」

悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。 落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。  ……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。   残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。 なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。 あれ? デート中じゃないの?  高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡ 本編は4ページで完結。 その後、おまけの番外編があります♡

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

処理中です...