近くにいるのに君が遠い

くるむ

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番外編

君にメリークリスマス♪

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「今年は22日、金曜日が終業式だな。おまえらクリスマスはどうするんだ?」

昼休み。いつものように俺らの教室にやって来た礼人が、弁当を広げながら聞いてきた。

「うん、適当にファーストフードでご飯して、それからイルミネーションでも見に行こうかって話になってる」
「それだけか?」

もっと他にあるだろうという顔で見られて、ぐっと詰まった。一応、その後は陸が俺の家にお泊りすることにはなっているんだけど。

「――その後は、水の家に泊まらせてもらうことになってるけど」

俺が端折った部分を、陸が何でもない風に補った。

「ああ、なるほどね」

納得がいった、という風にニヤニヤした後、礼人は今度は逆に言いにくそうに箸でハンバーグをつつきながら「なあ」と俺らに呼び掛けた。

「……よかったら、なんだけどさ。そのファーストフードに行く時間を、俺にもらえないか?」
「え?」

礼人の言っている意味がよくわからなくて、俺らは顔を上げ、キョトンと礼人を見た。

「――実はさ、親父の奴、クリスマスイブに仕事で家に居ないんだわ。それで義母ハハが、ちょっと気落ちしてて……」
「気落ち?」

「……俺が、あんまり義母と打ち解けてないの知ってるだろ? それでクリスマスの日にあの人……、ご馳走作って家族3人で団欒ってやつをしたかったみたいなんだよ。小学生かよって、感じなんだけどさ」

「ああ……」

そうか。
せっかくの礼人と打ち解けるイベントにしたいと思っていたお義母さんの気持ちを、礼人も礼人なりに受け止められる自分になりたいって、試行錯誤しているんだ。
人見知りで難しい性格だけど、基本、優しい奴だもんな。

「うん、いいよ。な、陸?」

陸に振り返り同意を求めると、一瞬真顔になった後、「そうだな」とつぶやいた。

「紫藤には色々世話になってるからな。そう長い時間は居れないけど、それでいいならお邪魔する」

「ああ、もちろんだ! 一応千佳たちも誘ったからさ、ごはん食べ終わってみんなが帰るときに俺も一緒に出るつもりだから」
「……いいのか?」

お義母さんを1人で置いて行っていいのかと気になって、つい聞いてしまった俺に礼人はにこりと笑った。

「大丈夫。あんまり気を遣いすぎるのも良くないんじゃないかって、要さんにこないだ言われてさ、それもそうかなーと思って気を抜いて接するようにしていたら、向こうもなんだか力を抜いて俺に向き合ってくれて、今の方が前よりずっと家に居るのも楽になりつつあるんだ。だからあまり無理はしないようにしてる」

「そうか……。クリスマス、楽しみだな」
「ああ。お前らもな」

そう言って、俺らに意味深にニヤリと笑いかけた礼人は、ハンバーグをパクリと頬張った。
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