近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

心も体も1

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ショップを出た後ファミレスで食事を終えて、駅のコインロッカーで荷物を取り、ホテルへと向かった。

俺の心臓は緊張でドキドキし始める。
自分で仕掛けたこととはいえ、陸の反応を考えると少し怖い。掌まで汗でべったりだ。
カギをフロントで受け取って、皆でエレベーターに乗りそれぞれの部屋へと分かれた。
俺は陸の後をついて行き、陸がカギを開ける傍で待機する。

「どうした? 部屋に荷物置きに行かなくていいのか?」

カチャリとカギを開ける音。
ドアを開けながら尋ねる陸に曖昧に微笑んで、俺も一緒にドアを押し開けて中に入った。

「おい、水?」

カギを差し込んで明かりが点く。
そこで初めて陸は、この部屋がツインではなくダブルだという事を知った。


「――」

無言で俺を見る陸。
だけどその顔は怒っているわけではなく、ただただ疑問に溢れていた。


「俺が頼んだんだ。陸と…、ダブルの部屋にしてくれって」

俺の言葉に陸が瞳を大きく見開く。信じられないと言った感じだ。

さっきから、俺の心臓の音は半端ない。
こんなに緊張したことってあったっけ?


陸は荷物をポンと放り、視線を床下に向けた。さっきの疑問に溢れた表情は、だんだん怒ったような表情に変わってきていた。
そんな陸の表情に、俺の掌の汗が増す。


「お前、俺の事全然わかってない」

ぐしゃりと自分の髪を掻き上げて、陸は絞り出すような低い声で呟いた。

「どういう…ことだよ」

分かってないって何?
俺の方こそ、それを言いたいよ。
陸が俺のことをすごく好きでいてくれるのは分かるけど、だけどあの時から、陸は俺の心の中をちっとも見てくれてはいない。
俺だって男なんだから人並みに欲求くらいはある。なのに陸は、まるで俺がそんな事を考えてもいないとでも思っているのか?


「…大切にするって言った。大事にしたいって……」

床を見ながら何かに耐えるように話す陸に、やっぱりと思う。
陸は俺をどこかの清純なお嬢様だとでも思っているのか。

「そんな必要ない」

俺の言葉に弾かれたように顔を上げた陸は、驚いた表情で俺を見る。


「陸、俺は女の子じゃないんだよ。こんなんでも、れっきとした男だ。…陸に触れたいとか、キスしたいとか…、もっと陸に近づいて、陸を感じたいって思うんだ」
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