近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

甘々旅行デート3

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目的地で陸に引っ張られて降りる。

「すっごい人だったね」

既に降りていた千佳たちが、俺たちを見つけてやって来た。

「大丈夫だったか? 揉めてただろ、お前ら」
「え、そうなのか?」

要さんの言葉に涼さんが驚いて俺らを見た。要さんの方が涼さんより背が高いので、もしかしたら俺らがゴタゴタしているところが目に入ったのかもしれない。

「あ、大丈夫です。陸が、助けてくれたので」
「…中途半端だったけどな」
「そんなことないよ! 陸が、機転を利かしてくれてなかったら、俺もっと嫌な思いをしていたよ?」
「嫌な思いって何?痴漢にでもあった?」

陸と俺の会話を聞いていた千佳が、普通なら考えないだろう事実を言い当てた。
…何か複雑な気分だ。

「……」
返事をしたくなくて無言でいると、それはどうやら肯定とみなされてしまったらしい。
(当たってるけどさ)


「俺の目は確かだったな」

俺らのやり取りを黙って聞いていた礼人が、なぜかどや顔で言う。

「目?」
「そっ。クロならぜーったい、お前の番犬になってヤバい奴らを蹴散らしてくれると思ったんだよな」
「……」

「そーだよ。クロは剛先輩と同類だもんね♡ 番犬だし野獣だし。違うのはヘタレなところくらいか」
「おい(`ω´*)(怒)」

「ホラ、いい加減じゃれてないで、そろそろ行くぞ」
「はあい」

陸が千佳を睨んだところで、涼さんが割って入った。千佳の元気の良い返事を聞いた後、俺らはコインロッカーに荷物を預け、そのまま神社へと向かった。

もっと閑散としているのかと思ったら、土曜日だからなのか、まばらだけど適当に人が居た。観光客も、ちらほらいるようだ。
一応俺たちの目的は観光ではなく小説ゆかりの地を訪ねるという事なので、主人公が犯人に後ろから襲われた所に向かう事にした。

境内の右手にある小さな林。その奥まったところで、主人公の稲垣が背後から首を絞められそうになるのだ。

「この変じゃない?」

タタタと、千佳が走って行き、適当な木にもたれ掛かった。

「そうだな。陽が陰ると目立たない場所だしな」
「だな」

はっきり言って建て前はともかく、こういう検証は俺たちにとってはどうでもよく、一応ここだという場所を見ればそれでいいので、さっそくお参りへと向かった。

手を洗い、口を漱いで参道を歩く。
俺と陸は、一番後ろに並んでいた。俺らの真ん前には要さんと涼さん、礼人が並んでいる。
千佳と剛先輩が今ちょうどお祈りの真っ最中だ。

「なげーな。あいつら」
「ずっと一緒に居られますようにって、いろいろお願いしてるんだよ」
「…。剛先輩は違うんじゃないかな」
「え…?」

あり得ないようなびっくりすることを言われて、ギョッとして陸を見た。
俺の考えている事を察した陸が、笑いながら否定する。

「いや、そうじゃなくて。もちろん工藤と一緒に居られるようにって願ってるとは思うけど。たぶんさ、自分が工藤といられるように必死で頑張るから、常に頑張る自分でいられますようにって感じで祈ってるんじゃないかなと思ってさ。工藤とはちょっとニュアンスが違うんじゃないかなって」

「ああ…。それはあるかもしれないな」
「だろ?」

口角を上げて静かに笑う陸を、じっと見る。

…陸もそうなのかな…?
みんなに似てるって言われる二人だけど、陸も同じ事、考えてくれてる?


なんて…。
そんな事、やっぱり聞く勇気がなくて。
俺らは順番に、お参りを済ませる。

もちろん、俺は陸とずっと一緒に居られますように、そしていろんな困難があっても二人で乗り越えていけますように、と祈った。
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