近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

近づく水の決戦旅行

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三人で揃って部室に行くと、既に全員が揃っていた。
今日は涼さんも一緒だ。

「おっそーい。待ちくたびれたぞー」

相変わらずだらだらと、剛先輩にあやされ状態の千佳が寝そべりながら文句を言う。

「お前はいつもくたびれてるだろ」

ポンと丸めたノートで、礼人が千佳の頭を叩いた。


「大体のルートは決まったぞ。見てみろ」

要さんに言われて俺らも覗きこんでみる。一枚の用紙に、ぐちゃぐちゃと色んな字が書き込まれていた。

「なんだコレ。え~っと、パンケーキの美味しい…店? チョコパフェ…?」
「それは無視だ。無視。〇✖神社と△△橋に、〇△公園だ。一応このミステリー小説の殺害現場や主人公が手掛かりを見つけた場所を参考にした」

「え~、無視ってなんだよぉ。美味しい物も食べたいだろー」

駄々をこねるように足をバタバタさせて千佳が文句を言う。
剛先輩が宥めるように千佳の髪の毛を撫でていた。

「千佳、それは俺と二人で行けばいいだろ」
「でもー、剛先輩甘い物好きじゃないでしょ?」
「…いいさ。俺はコーヒーでも飲んでいるから」

普段の番犬ぶりを感じさせない剛先輩の甘い声音に、思わず俺らは先輩を凝視する。
皆の注目を浴びていることくらい気が付いていそうだけれど、千佳も剛先輩も全く気にする様子は無かった。
完璧に二人の世界に入り込んでしまっている。

「先輩…」

甘えるような上目遣いで、千佳が先輩を見上げる。
その驚異的な可愛さに、見慣れてるとはいえ、今度は千佳を凝視した。
それに気づいた剛先輩が、威嚇するかのように軽く俺らを睨みつけた。


「…さすが猛獣使いだよな。さて、と。ああ、そうそう。部屋、予約しておいたからな」
「そうか、手間かけたな。来週の土日って言ったらもうすぐだよな」

礼人の言葉に涼さんが、スケジュールを確認しながらつぶやいた。俺らと違って社会人の涼さんは、旅行だと言って浮かれてばかりもいられないのだろう。

多分、いろいろやり繰りしてくれてるんだよな…。
涼さんは優しいからそんな事、一言も言わないけど。


視線を感じて振り向くと、彼らの会話が聞こえたのか、千佳が俺の方をじっと見ていた。
剛先輩と土壇場で入れ替わると言う話をしていたので、大丈夫とは言ったものの、心配してくれているんだろう。しかも、陸指定のツインじゃなくて、ダブルベッドになっているし。

俺は千佳に、ニコリと笑って親指を立てて見せた。


大丈夫にしたいと、切に願う。
俺は陸と、心の底から信頼しあいたいと思っているから…。 
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