近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

必死の抵抗

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「強引なのが良いんだな」
「…ちがっ」

ぐっと力を入れられたかと思ったら、顔を無理やり上向かされた。

キスされる!

陸以外の奴にそんなことをされるのは絶対嫌で、俺はとっさに唇をキュッと巻き込んで力を込めた。竹下は強引に俺にキスをしたが、固い感触に俺の抵抗を感じたようで、両頬をぐっと挟み、力を入れる。
俺の口を開かせようとしているようで、俺も負けじと歯に力を込めて抵抗した。

だけどそれは却って竹下を怒らせてしまったようだ。
竹下は俺の体を離すと、俺のシャツを引き裂くような強い力で合わせ目から引っ張った。

その勢いでボタンがいくつか飛び散っていく。

びっくりして固まる俺に、冷ややかな声がこぼれた。


「…Tシャツなんか着てんなよ」

嘘、だろ…?
ヤバい雰囲気を醸し出す竹下に、本気でまずいと思った。
恐怖で固まる体を叱咤して、ドアに手をかけようと踵を返す。たけど途中で、竹下に腕を捕まれて押し倒されてしまった。


「やめ…ろ、やめてくれ竹下…」

きっと今の俺の顔は恐怖でひきつっているはずだ。
だけどそれにも構わず、竹下は 鼻先が触れ合うくらい近くに顔を寄せて、至近距離で俺をじっと見つめる。

「ずっと見てたんだぜ、俺は。シロに触れたくて触れたくて…! なのに紫藤の奴にずっと邪魔されて、挙句の果てに今度は黒田だ」

「つ…っ」

竹下の手が直に俺の腹を撫で上げて、体がビクンと揺れた。目線を下に向けると、Tシャツがたくし上げられている。
露わになった俺の肌を見て、竹下が唾を飲み込むのが分かった。


…マジでヤられそうな状況に俺の心音がよけいに激しくなる。と同時に、竹下になんて絶対にヤられたくないと思った。
もうこれは大げさな事にしたくないだなんて、考えてる場合じゃない。

「たす……むぐっ」

声を上げようとした瞬間に、竹下に口を手で覆われる。

「あっぶねー。大人しくしてろよシロ」

楽しそうに口を歪ませて話す竹下が本当に怖い。どうにかして逃げないと、とんでもない事になる。


ゆっくりと、俺の肌蹴た胸元をめがけて近づいてくる竹下の顔。絶対絶命の中で、俺の目に飛び込んできたのは、ちょうど俺の足元にある一脚の机と椅子だった。
誰か、誰でもいいから廊下を通ってくれ!



必死の思いが通じたのか遠くから足音がバタバタと近づいてくる。
俺はタイミングを必死で見計らい、力いっぱい机を脚で蹴りつけた。
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