24 / 59
俺に触れて?
触れる喜び
しおりを挟む
「お疲れさん、明日も頼むよ」
「はい」
一時間のノルマが終わって、千佳と腕を回したり首を左右に倒したりと、コリをとる。
「クロ、戻って来なかったな」
「……」
「大丈夫だよ。クロの事だから、絶対慌てて戻ってくるって!」
「う、ん」
スクバはそのまま、俺のと一緒に置いてあるから、戻って来なきゃならないのだけど…。
俺は自分の荷物と一緒に陸の物を肩にかけ、入り口から外を覗いた。
すると廊下の向こうから、すごい勢いで陸が走ってくるのが見えた。
良かった…。
思わず肩の力が抜けて、バックが肩からずり落ちてしまった。
「ね? 言った通りだっただろ?」
千佳が、ポンポンと俺の肩をたたいた。
「うん。…安心した」
はあはあと荒い息を吐きながら、陸が近づいて来た。
「わり…。済んじまったな」
額に大粒の汗を掻いて、息もまだ整っていない。よっぽど遠くから走って来たんだろうか。
俺はポケットからハンカチを取り出して、陸の額の汗を拭く。
湿った髪を掻き上げた途端、陸に強い力で抱き寄せられた。
いきなりの陸の熱い体温と匂いに、心臓がきゅうっとなる。
まるでしおれた花が、いきなり太陽や水をたくさん浴びたような、そんな急激に満たされる思い。
心だけじゃない、細胞レベルで、俺のすべてが陸の体温を喜んでいた。
ホントに…、どれだけ自分は陸を求めて焦がれていたんだろう。
自分に自分で呆れてしまう。
だけど、そんな自分も嫌ではなかった。
俺は、力強く抱きしめる陸を全身で受け止める。陸は俺を抱きしめたまま、俺の髪に顔をうずめるように額や頬を擦り付けた。
ずっと求めていた陸の温もり…。俺は、目眩がしそうなほどうれしかった。
「おい!」
剛先輩の低い声でハッとする。
陸も肩を叩かれて我に返ったようだ。パッと体を離された。
「邪魔してごめんね~。でも、そろそろ片付け済んだみたいだから。万が一見られたりしたら嫌でしょ?」
「…悪い」
陸はバツが悪そうに下を向き、無造作に頭を掻いた。
「悪くなんかないから」
「え…?」
俺の言葉にびっくりしたのか、三人が驚いた顔で俺を見る。
だけどここで有耶無耶にしたら絶対だめだ。
きっと――
「だって、うれしかったから…」
「み、ず…」
言ったとたん、恥ずかしさで顔が熱くなった。そんな俺の顔を見て、陸の顔も赤くなる。
「うわ~、あっつーい。剛先輩、部室行くよー」
「だな」
そう言って、二人は俺らを置いて先に歩き出した。
もちろん俺らも後に続く。
隣の陸をそっと見ると、陸もこちらを向いていて目が合った。
そして目を細めて、いつものように優しく微笑んでくれる。
良かった…。ちゃんと俺の気持ちは陸に届いたようだ。
陸だけが俺を求めているんじゃない。俺だって陸に触れたいんだ。
陸の事が、すごく大好きだから…。
「はい」
一時間のノルマが終わって、千佳と腕を回したり首を左右に倒したりと、コリをとる。
「クロ、戻って来なかったな」
「……」
「大丈夫だよ。クロの事だから、絶対慌てて戻ってくるって!」
「う、ん」
スクバはそのまま、俺のと一緒に置いてあるから、戻って来なきゃならないのだけど…。
俺は自分の荷物と一緒に陸の物を肩にかけ、入り口から外を覗いた。
すると廊下の向こうから、すごい勢いで陸が走ってくるのが見えた。
良かった…。
思わず肩の力が抜けて、バックが肩からずり落ちてしまった。
「ね? 言った通りだっただろ?」
千佳が、ポンポンと俺の肩をたたいた。
「うん。…安心した」
はあはあと荒い息を吐きながら、陸が近づいて来た。
「わり…。済んじまったな」
額に大粒の汗を掻いて、息もまだ整っていない。よっぽど遠くから走って来たんだろうか。
俺はポケットからハンカチを取り出して、陸の額の汗を拭く。
湿った髪を掻き上げた途端、陸に強い力で抱き寄せられた。
いきなりの陸の熱い体温と匂いに、心臓がきゅうっとなる。
まるでしおれた花が、いきなり太陽や水をたくさん浴びたような、そんな急激に満たされる思い。
心だけじゃない、細胞レベルで、俺のすべてが陸の体温を喜んでいた。
ホントに…、どれだけ自分は陸を求めて焦がれていたんだろう。
自分に自分で呆れてしまう。
だけど、そんな自分も嫌ではなかった。
俺は、力強く抱きしめる陸を全身で受け止める。陸は俺を抱きしめたまま、俺の髪に顔をうずめるように額や頬を擦り付けた。
ずっと求めていた陸の温もり…。俺は、目眩がしそうなほどうれしかった。
「おい!」
剛先輩の低い声でハッとする。
陸も肩を叩かれて我に返ったようだ。パッと体を離された。
「邪魔してごめんね~。でも、そろそろ片付け済んだみたいだから。万が一見られたりしたら嫌でしょ?」
「…悪い」
陸はバツが悪そうに下を向き、無造作に頭を掻いた。
「悪くなんかないから」
「え…?」
俺の言葉にびっくりしたのか、三人が驚いた顔で俺を見る。
だけどここで有耶無耶にしたら絶対だめだ。
きっと――
「だって、うれしかったから…」
「み、ず…」
言ったとたん、恥ずかしさで顔が熱くなった。そんな俺の顔を見て、陸の顔も赤くなる。
「うわ~、あっつーい。剛先輩、部室行くよー」
「だな」
そう言って、二人は俺らを置いて先に歩き出した。
もちろん俺らも後に続く。
隣の陸をそっと見ると、陸もこちらを向いていて目が合った。
そして目を細めて、いつものように優しく微笑んでくれる。
良かった…。ちゃんと俺の気持ちは陸に届いたようだ。
陸だけが俺を求めているんじゃない。俺だって陸に触れたいんだ。
陸の事が、すごく大好きだから…。
2
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
【R18】【Bl】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の俺は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します
ペーパーナイフ
BL
主人公キイロは森に住む小人である。ある日ここが絵本の白雪姫の世界だと気づいた。
原作とは違い、7色の小人の家に突如やってきた白雪姫はとても傲慢でワガママだった。
はやく王子様この姫を回収しにきてくれ!そう思っていたところ王子が森に迷い込んできて…
あれ?この王子どっかで見覚えが…。
これは『【R18】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の私は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します』をBlにリメイクしたものです。
内容はそんなに変わりません。
【注意】
ガッツリエロです
睡姦、無理やり表現あり
本番ありR18
王子以外との本番あり
外でしたり、侮辱、自慰何でもありな人向け
リバはなし 主人公ずっと受け
メリバかもしれないです
最愛の幼馴染みに大事な××を奪われました。
月夜野繭
BL
昔から片想いをしていた幼馴染みと、初めてセックスした。ずっと抑えてきた欲望に負けて夢中で抱いた。そして翌朝、彼は部屋からいなくなっていた。俺たちはもう、幼馴染みどころか親友ですらなくなってしまったのだ。
――そう覚悟していたのに、なぜあいつのほうから連絡が来るんだ? しかも、一緒に出かけたい場所があるって!?
DK×DKのこじらせ両片想いラブ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※R18シーンには★印を付けています。
※他サイトにも掲載しています。
※2022年8月、改稿してタイトルを変更しました(旧題:俺の純情を返せ ~初恋の幼馴染みが小悪魔だった件~)。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる