近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

番犬クロ

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授業が済んで、千佳が教室に俺を誘いにやって来た時、陸が竹下と揉めている最中だった。
たまたま合流した剛先輩にひと睨みされて、仕方なく竹下は自分の席に戻っていったのだけど…。

その時の竹下と陸の様子に何かを感じたようで、千佳が陸と竹下が何を揉めているのかと俺に尋ねた。
本当は言いたくなかったんだけど、千佳が俺が話すまで聞き続けるような好奇心を醸し出していたので、仕方がないので今日あったことを千佳に話した。

「すっげ。竹下って奴、本当にシロの事が好きなんだね。このクロをものともしないで立ち向かって来るなんて勇気あり過ぎ!」

千佳は俺に耳打ちをするわけでもなく普通の声音で話すものだから、前方を剛先輩と一緒に歩く陸にもその声が届いてしまう。
で、案の定、陸が千佳を睨みつける。

「うわ、陸こわーい」

ほとんど棒読みで怖がる千佳を見て、剛先輩が陸の腕を拳でどついた。

「痛いっすよ」

剛先輩を軽く睨んで陸が文句を言う。
そんな陸を剛先輩は片手で引き寄せて、何やらぼそぼそと内緒話を仕掛けていた。

断片的にしか聞こえないし、肝心な部分はより声を落として言うものだから、剛先輩が陸となんの話をしたのかまでは分からない。
だけど二人で振り返って、俺と千佳を交互に見てはため息を吐いた。
まるで俺と千佳が陸たちを困らせているといった風情だ。ちょっとムッとするぞ?


美術室に着くと、既に美術部のみんなは揃っていて、前回と同じポーズをとるよう頼まれた。
俺と千佳はそのまま指定された長椅子に座る。俺は昨日と同じように、服をくつろげた。
そして動かないよう注意して25分が終了。
2人で背伸びをして、ふーっと視線を上に戻して前を向く。ふ、と視線をずらしたらそこにはいるはずのない竹下が立っていた。

「…え?」

呆然として竹下を見ていると、竹下は笑って手を上げて近寄ってくる。

「うっわー」

千佳も気が付いて、若干引いている。剛先輩と陸は竹下に気が付かないようで、こちらに普通に歩いて来た。

「お疲れ、水。あとちょっとだな」
「う、うん。あのね、陸」
「よう、シロ」

突然割って入って来た竹下に、陸は心底驚いたようだった。

「なにしてるんだ、お前」
「え~、シロの見学に決まってんだろ。…それにしてもシロ、やっぱお前色気あるよな。俺、ドキドキ…」
「って、イッテ! おいっ、黒田! 離せよ!」


抵抗する竹下を、有無を言わせぬ勢いで陸が引っ張っていく。美術室を引きずるように出て行って、そのまま二人は戻って来なかった。
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