近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

陸の本音

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「行ってきます」

玄関を出て家を出ると、いつものように門の前で陸が待っていた。

「おはよう」
「おう、おはよ」

陸が、目を細めて優しく俺に微笑んだ。久しぶりに見る俺の大好きな陸の表情に、胸が熱くなる。
バカみたいだけど、俺はホントに陸のことが好きなんだなと実感して苦笑してしまった。
それに気づいた陸が「どうした?」と、俺を不思議そうに見る。


「……バカみたいだけど、嬉しいなって思ったんだよ。久しぶりに見たから…、陸のそんな顔」


俺がそう言うと、一瞬キョトンとした後、自分の今までに思い当たったようで陸も苦く笑う。

「バカみたいなのは俺の方だ。…悪かったな」

「いいよ、もう。気にしないで」

俺が明るく笑ってそう言うと、陸もホッとしたように頷いた。


「シロー、クロー」

礼人が走って近寄ってくる。

「おはよう」
「…よう」

「おう。って、お? お? なんかいい感じじゃね? 雰囲気もとに戻ったな」

「……」
「…心配かけた?」

「まっさかー、どうせお前らがギクシャクする原因なんて痴話げんかの類だろ? 心配なんてしねーよ」

カラカラと笑いながら、礼人は陸の肩を遠慮なくバシバシ叩く。
そんな礼人に対して陸が嫌そうに顔を歪め、礼人の手を振り払おうとするのだけど、それを逆に面白がった礼人に腕を捕まれて、傍から見ると、まるでじゃれあっているみたいだ。

三人で騒ぎながら(はしゃぎながら?)歩いていると、後ろから竹下に声をかけられた。

「うるさいなあ、お前ら。よっ、シロ、今日も美人だな」
「…おはよう、竹下」

相変わらずな挨拶に少しうんざりしながら返事をした。
竹下は俺が嫌がってることに気付いているはずなんだけど、嫌がらせなのか何なのか、この挨拶を一向にやめる気配はない。

そして俺の頭を撫で回そうと、お約束のように竹下の手が伸びてくる。それを瞬時に察した陸が、反射的に足を出してきた。
だけど今回はヒットせずに、竹下がギリギリ回避する。

「お前、いい加減にしろよ! 危ないだろうが!」
「それはこっちのセリフだ! 水に勝手に触れるんじゃねーよ!」

…え?

「ま、そんなもんだろ」
礼人が腕を組み、さも当然というように彼らを見ながらボソッとつぶやく。

「礼人?」

俺の驚いた顔に気が付いて、礼人が苦笑する。

「だってさ、クロが本気になることなんてシロのこと以外ないだろ。あいつがムキになることの大半はお前のことだよ」

……。



そ、そんな事、しれっと当たり前のように言うなよ…っ。

ド、ドキドキしてきた。


赤くなってるだろう顔を見られたくなくて俯く俺に、意地悪な礼人が、ニヤニヤしながら顔を覗き込んできた。
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