近くにいるのに君が遠い

くるむ

文字の大きさ
上 下
17 / 59
俺を見て?

二度目の告白

しおりを挟む
無言のまま、2人で歩く道のりは俺にとってはもの凄く重苦しい物だった。
あの時、とっさに俺の手を避けた陸は、ほぼ反射的にと言っていい様子だった。
あれは頭で考えての行動なんかじゃない。

苦く重い感情が俺の胸の内に広がって行く。

俺はどうしたいんだろう。
陸が友達に戻りたいと言ったら…?
それが出来ないのなら離れてくれと言ったら…?

離れる…。
そう考えた途端、ギリッと胸の痛みが更に酷くなった。

ああ、そうか。俺はどんな形ででも、陸の側にいたいんだ。離れる方が辛いんだ。

陸の気持ちが俺から離れてしまっているのに、俺はこんなにも陸が好きなんだなと改めて思い知らされて、思わず自嘲の笑みが漏れた。


『…お前は弱いようでも、芯はちゃんと強いよな? 俺がなにを言いたいのか分かるか?』

…全然強くなんかないですよ。
だけど――


もうこれ以上は…、うやむやにしている方が辛いよ。




「陸、俺とはもう…、友達に戻りたいって思ってる?」

「え?」

もの凄く驚いたような瞳で、陸が俺を見た。



久しぶりに真正面から俺を見る、陸の瞳だった。

「なに…言ってるんだ」

俺以上に、なぜか動揺した陸の声。久しぶりに真正面から見る陸の瞳には、戸惑いの色が映っていた。


「…、だって陸、俺のこと…。恋愛感情じゃ…ないんだろ?」

頑張って絞り出すように喋ったのに、今度は陸は動揺から一転し不機嫌なオーラを纏い始めた。


「どういうことだよ」


今まで目をそらし続けていた陸とは思えないくらい、強い瞳で俺を突き刺すように見る。
…何だよ。何でこっちが詰問されてるような気分にならなきゃならないんだ?

苛立ちすら見え隠れする陸の様子に、俺も何だか気持ちがざわついてくる。

「…だって、そうだろ? 陸…、アノ時を境に、俺のこと真っ直ぐ見ること無くなったじゃないか」

「水…」

「しかも、あの後俺に黙って知らないうちに帰って…! 俺の…こと、好きでも何でもないのなら、はっきり言ってくれ! そっ、その方が…っ」

必死で言葉を絞り出して自分の気持ちを訴えているうちに、俺の神経は高ぶってしまい涙が溢れ出てきてしまった。それに狼狽したかのように、陸が慌てて言葉を挟む。

「違う!! 俺が水のこと、なんとも思ってないわけないだろ! …どれだけ、俺が…っ」


「…え?」


びっくりして陸を見ると、苦しそうな、それでいて熱の籠った瞳で俺を見ていた。
だけどすぐに力なく下を向き、低く絞り出すような声で、苦し気に話し出す。


「…俺がお前のことを直視できなかったのは、…あの時、俺は自分の気持ちを抑えることが出来なくて、水の意思を無視して強引に…抱いただろ? お前、あんなに嫌がって抵抗してたのに…」

「……」

「…だから、怖かったんだ。水を傷つけて…、嫌われて離れていかれても仕方ないくらいのことをしたから。…だけど、身勝手かもしれないけど…水と別れるなんて絶対いやだったから…」


あまりにもらしくない弱々しい陸の本音に呆然とする。


そう、か。「目が覚めた」わけじゃなかったんだ…。
俺のことが…、好きだから。…好きすぎてって、こと…?


ホッとしたと同時に、ばかばかしくなってくる。

「なん…だよ。もう」
ため息をつきながらポツリと溢すと、バツの悪そうな陸と目が合った。


「…悪かった。水をそんなに追い詰めてるとは思わなくて」
「ホントだよ。もう」

ホッとした俺は、もうなんとも思ってないということを伝えたくて、軽い口調で返事をする。そんな俺に、陸は真っ直ぐに、真剣な表情をよこした。



「水、好きだ。お前以外、俺は誰も目になんか入らない。ちゃんと大事にやり直したいから、俺と付き合ってくれないか?」


「り…く」


二度目の陸の告白。それでも色褪せずに、俺の心に染み渡る。



「うん。こちらこそ、よろしく」
俺はにっこりと笑って陸を見上げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

【R18】【Bl】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の俺は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します

ペーパーナイフ
BL
主人公キイロは森に住む小人である。ある日ここが絵本の白雪姫の世界だと気づいた。 原作とは違い、7色の小人の家に突如やってきた白雪姫はとても傲慢でワガママだった。 はやく王子様この姫を回収しにきてくれ!そう思っていたところ王子が森に迷い込んできて… あれ?この王子どっかで見覚えが…。 これは『【R18】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の私は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します』をBlにリメイクしたものです。 内容はそんなに変わりません。 【注意】 ガッツリエロです 睡姦、無理やり表現あり 本番ありR18 王子以外との本番あり 外でしたり、侮辱、自慰何でもありな人向け リバはなし 主人公ずっと受け メリバかもしれないです

最愛の幼馴染みに大事な××を奪われました。

月夜野繭
BL
昔から片想いをしていた幼馴染みと、初めてセックスした。ずっと抑えてきた欲望に負けて夢中で抱いた。そして翌朝、彼は部屋からいなくなっていた。俺たちはもう、幼馴染みどころか親友ですらなくなってしまったのだ。 ――そう覚悟していたのに、なぜあいつのほうから連絡が来るんだ? しかも、一緒に出かけたい場所があるって!? DK×DKのこじらせ両片想いラブ。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ※R18シーンには★印を付けています。 ※他サイトにも掲載しています。 ※2022年8月、改稿してタイトルを変更しました(旧題:俺の純情を返せ ~初恋の幼馴染みが小悪魔だった件~)。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...