近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺を見て?

悲鳴を上げる心

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同好会の部室に、四人で戻って来た。

「おう、お疲れ。どうだった?」

そこには今日は要さんと礼人だけで、涼さんの姿はなかった。

いくら顧問とはいえ、指導する事があるわけでもないので、恐らく職員室で自分の仕事をこなしているのだろう。
2人の手元には推理小説の有名なシリーズ本に、ガイドブックがある。

「うん。結構疲れたかな、で? なに見てるの?」

千佳と剛先輩が興味深そうに二人の手元を覗き込んだ。

「ああ、今度土日を使って小説ゆかりの地を巡るって奴を計画してみようかと思ってさ」

「ええ? 本当に? で、どこ行くの、どこ行くの?」

千佳が嬉しそうにそこにしゃがみこんで、ガイドブックに手を伸ばす。はしゃぐ様子の千佳に、剛先輩が目を細めていた。


対して俺は…、さっきから心の奥が冷えて心臓が痛い。

変わらず俺に気を遣ってくれて優しい陸だけど、明らかに俺は避けられている。
友達として好き過ぎて、恋愛と勘違いしてしまったのだと、あの時、告げられたような気がした。

心臓が痛い。頭が痛い…。
このままいくと吐き気までもよおしてしまいそうだった。




「シロ、大丈夫かお前」

突然声をかけられてハッとして顔を上げる。
心配そうに眉根を寄せて、礼人が俺の冷や汗で湿った髪をかき上げた。

「顔色、悪すぎるぞ」

何でもないと言いたいところだったけど、付き合いの長い礼人にはそんなウソ、すぐにばれてしまいそうだ。

「…ごめん。ちょっと、ダメそうだ」
「座布団下に敷いて少し休め。人がいたら気になるだろ。なんなら備品室で休んだらいい」

「…うん」

意地を張っても仕方がないので、俺は休ませてもらう事にした。礼人に支えられて備品室に入る。
座布団だけはたくさんあるから、寒気がするなら座布団かけるかと聞かれたが、寒気まではしないので断った。

「じゃあ、俺らの事は気にしないで、ゆっくり休めよ。後で起こしに来るから」
「…うん。頼む」


横になったら何となく瞼が重くなってきた。

俺は礼人に感謝しながら、そのまま目を瞑って眠りの淵へと誘われていった。 
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