近くにいるのに君が遠い

くるむ

文字の大きさ
上 下
15 / 59
俺を見て?

悲鳴を上げる心

しおりを挟む
同好会の部室に、四人で戻って来た。

「おう、お疲れ。どうだった?」

そこには今日は要さんと礼人だけで、涼さんの姿はなかった。

いくら顧問とはいえ、指導する事があるわけでもないので、恐らく職員室で自分の仕事をこなしているのだろう。
2人の手元には推理小説の有名なシリーズ本に、ガイドブックがある。

「うん。結構疲れたかな、で? なに見てるの?」

千佳と剛先輩が興味深そうに二人の手元を覗き込んだ。

「ああ、今度土日を使って小説ゆかりの地を巡るって奴を計画してみようかと思ってさ」

「ええ? 本当に? で、どこ行くの、どこ行くの?」

千佳が嬉しそうにそこにしゃがみこんで、ガイドブックに手を伸ばす。はしゃぐ様子の千佳に、剛先輩が目を細めていた。


対して俺は…、さっきから心の奥が冷えて心臓が痛い。

変わらず俺に気を遣ってくれて優しい陸だけど、明らかに俺は避けられている。
友達として好き過ぎて、恋愛と勘違いしてしまったのだと、あの時、告げられたような気がした。

心臓が痛い。頭が痛い…。
このままいくと吐き気までもよおしてしまいそうだった。




「シロ、大丈夫かお前」

突然声をかけられてハッとして顔を上げる。
心配そうに眉根を寄せて、礼人が俺の冷や汗で湿った髪をかき上げた。

「顔色、悪すぎるぞ」

何でもないと言いたいところだったけど、付き合いの長い礼人にはそんなウソ、すぐにばれてしまいそうだ。

「…ごめん。ちょっと、ダメそうだ」
「座布団下に敷いて少し休め。人がいたら気になるだろ。なんなら備品室で休んだらいい」

「…うん」

意地を張っても仕方がないので、俺は休ませてもらう事にした。礼人に支えられて備品室に入る。
座布団だけはたくさんあるから、寒気がするなら座布団かけるかと聞かれたが、寒気まではしないので断った。

「じゃあ、俺らの事は気にしないで、ゆっくり休めよ。後で起こしに来るから」
「…うん。頼む」


横になったら何となく瞼が重くなってきた。

俺は礼人に感謝しながら、そのまま目を瞑って眠りの淵へと誘われていった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...