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俺を見て?
猛獣使い、千佳
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とりあえず、美術部でのバイトは町田の一存では決められないという事もあって、一旦持ち帰る事で話は決まった。
で、今、同好会室。
千佳の目の前では、腕組みをした剛先輩が眉間にしわを寄せて唸っている。
「そんなもん断れ。自腹で良いだろ。なんなら俺が、」
「それはダメ!」
「何でだよっ」
「先輩は俺のこと甘やかしすぎです。それにモデルなんてたいしたことないですよ。ただ一時間突っ立ってるだけで良いんですから」
「そうとは限らないだろ! シャツはだけろだとかズボン脱げだとか言われたらどうするんだよ!」
剛先輩の言葉に、ここに居る皆がびっくりして振り返った。
そ、そんな恐ろしい要求なんか、俺呑めないぞ…!
「工藤、お前そんなことに水を巻き込むんじゃねーよ!」
「るせー!お前は黙ってろ黒田! だいたいなあ、お前だってその場にいたんだろ? なんで、止めなかったんだよ!」
「止めたに決まってんだろ! なのにこいつが、金出すならやっても良いって言いやがったんだよ」
陸が千佳に文句を言ったせいで、気が付いたら剛先輩が千佳を説得するはずが、陸との言い争いになってしまっていた。
「うぉーい、なーに揉めてんだぁ」
皆が騒然としていると、のんびりした声と共に要さんと涼さんが入って来た。
「涼さん! 要さんも。良かったぁ。もうこいつらさっきからあんなんで、どうしようかと思ってたんすよ」
礼人が立ち上がって、彼らの所に歩いて行った。
涼さんも要さんも礼人の幼馴染だ。ちなみに要さんは俺らより一個上の二年生で、涼さんはこの学校で国語の教師をしている。涼さんは俺らよりだいぶ年上で今年25歳になる。
で、おまけにこの2人は恋人同士だ。
同好会を作る事が出来たのも、涼さんが顧問を引き受けてくれたという点がかなり大きい。
多分礼人の現状を、涼さんなりに気にしていてくれてたんだろうな…。
「美術部でのバイトねぇ…。別にそれくらい構わないと思うけど。しかも三日だけで良いんだろ? 剛も千佳に対して過保護すぎるんじゃねーの?」
大人な涼さんの援護に、今まで押されていた千佳が俄然勢いを取り戻した。
「ほらー、ねえ? 先輩過保護すぎなんですよ。可愛い子には旅をさせて下さいよ」
「なにが旅だ! 冗談じゃねえ! 千佳がモデルするって言うんなら、俺は横について監視するぞ。それだけは絶対譲らねえからな!」
「うわー、先輩、やっぱり大好き! 約束ですよ。俺の隣にずっといて下さいね」
ポスンと、千佳が、おっきな剛先輩の腕の中に跳びこんで行く。一瞬目を見開いた先輩だったが、「しょうがねえなあ」といった感じで、剛先輩は頬を緩めて千佳を抱きしめた。
で、今、同好会室。
千佳の目の前では、腕組みをした剛先輩が眉間にしわを寄せて唸っている。
「そんなもん断れ。自腹で良いだろ。なんなら俺が、」
「それはダメ!」
「何でだよっ」
「先輩は俺のこと甘やかしすぎです。それにモデルなんてたいしたことないですよ。ただ一時間突っ立ってるだけで良いんですから」
「そうとは限らないだろ! シャツはだけろだとかズボン脱げだとか言われたらどうするんだよ!」
剛先輩の言葉に、ここに居る皆がびっくりして振り返った。
そ、そんな恐ろしい要求なんか、俺呑めないぞ…!
「工藤、お前そんなことに水を巻き込むんじゃねーよ!」
「るせー!お前は黙ってろ黒田! だいたいなあ、お前だってその場にいたんだろ? なんで、止めなかったんだよ!」
「止めたに決まってんだろ! なのにこいつが、金出すならやっても良いって言いやがったんだよ」
陸が千佳に文句を言ったせいで、気が付いたら剛先輩が千佳を説得するはずが、陸との言い争いになってしまっていた。
「うぉーい、なーに揉めてんだぁ」
皆が騒然としていると、のんびりした声と共に要さんと涼さんが入って来た。
「涼さん! 要さんも。良かったぁ。もうこいつらさっきからあんなんで、どうしようかと思ってたんすよ」
礼人が立ち上がって、彼らの所に歩いて行った。
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で、おまけにこの2人は恋人同士だ。
同好会を作る事が出来たのも、涼さんが顧問を引き受けてくれたという点がかなり大きい。
多分礼人の現状を、涼さんなりに気にしていてくれてたんだろうな…。
「美術部でのバイトねぇ…。別にそれくらい構わないと思うけど。しかも三日だけで良いんだろ? 剛も千佳に対して過保護すぎるんじゃねーの?」
大人な涼さんの援護に、今まで押されていた千佳が俄然勢いを取り戻した。
「ほらー、ねえ? 先輩過保護すぎなんですよ。可愛い子には旅をさせて下さいよ」
「なにが旅だ! 冗談じゃねえ! 千佳がモデルするって言うんなら、俺は横について監視するぞ。それだけは絶対譲らねえからな!」
「うわー、先輩、やっぱり大好き! 約束ですよ。俺の隣にずっといて下さいね」
ポスンと、千佳が、おっきな剛先輩の腕の中に跳びこんで行く。一瞬目を見開いた先輩だったが、「しょうがねえなあ」といった感じで、剛先輩は頬を緩めて千佳を抱きしめた。
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