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それから

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 学園内はサラの噂で持ちきりだった。
 ルークをノエルから奪うために、母親のラッフェル伯爵夫人と共謀し、違法魔法を仕掛けたのだと。
 現在逮捕され取り調べが続いてはいるが、証拠があり罪が確定するのは時間の問題だといわれていた。サラには、ハイスランド学園の退学処分が言い渡された。

「これで全て解決したんですね」
「そう言ってもいいのかな? 実行犯となるローワンは、行方をくらましているようだよ」
 慎重なルークの言葉に、安堵の息をついていたアーネストもハッとした表情になった。

「それでも、君たちにはキリンスの加護ができたんだろう? もう誰も君たちに、違法な手出しをできるものはいないじゃないか」
「グレアム王子!」

 今日はテラス席でなく久しぶりにみんなで食堂を使っていた。そこにお兄様と王子が2人で現れたものだから、みんなびっくりして立ち上がった。
 しかも食事を載せたトレイを持っている。どうやら王族や特進専用のカフェではなく、食堂で食べるようだ。

「あの、こちらでお食べになるのですか?」
 お兄様におそるおそる尋ねると、お兄様は楽しそうに笑った。

「たまには気分転換をしたいとグレアム様が仰ってね」
「隣に座ってもいいかな?」
 王子の言葉に、みんな揃ってもちろんですと言った。

 王子はぼくの隣に腰掛け、お兄様はアーネストの隣に腰掛けた。
 ということで並びは、王子、ぼく、ルーク。そして向かいには、お兄様、アーネスト、クリスとなっていた。

 ぼくの横で、ルークがちょっとむくれたような表情をしているのは気がつかないふりをする。
 アーネストと僕が親しいのには友情関係が成り立っていると理解してくれたせいか気にならないようなのだけど、王子に関しては、なぜかヤキモチ焼きが発動するみたいなんだ。
 王子だって僕のことなんか眼中にないはずなのに。

 どうやら本当にルークはやきもち焼きみたいだ。

「グレアム様は、何かお聞きになっていらっしゃるんでしょうか?」

 アーネストの問いに、グレアム王子が顔を上げた。

「何かとは?」
「サラがどういう罰を受けるのか。ローワンがどこに居るのかなどです」
「残念ながら私も君らと同様、殆ど何も知らないよ。ただ、ローワンには指名手配を出して、入国を確認した時点ですぐ逮捕ということになったらしいから、ここしばらくこの国に彼が現れることはないんじゃないかな」

「しばらくは大丈夫ということですね。でも俺らも、気を抜かないようにしなくちゃならないですね」
「そういうことだな。ところで――」
 王子が不自然に言葉を止めてぼくを見た。

「王城にはいつ来れる?」
「……えっ、あっ!」
「忘れていたな」
「す、すみません。いろいろあったから、つい……」

 慌てるぼくに、王子は笑って手を振った。

「いや、いい、いい。気にするな。それより、いつなら来れる?」
「え……、多分、来週なら。今日ちょっと両親に報告しないといけないことがありまして。なので、場合によっては今週はちょっと無理かと思います」
「場合によって? おかしな言い回しだな」
「すみません」
「いや、いいよ。アーネストはどうだ?」
「私はこれといって特に用事はないので、来週でも大丈夫ですよ」
「そうか、じゃあこちらの方で来週で都合のいい日を決めておく」

 話がまとまったといったところで、ルークがおずおずと手を挙げた。

「あの、グレアム王子」
「なんだい?」
「その時、僕もお伺いしてはいけませんでしょうか?」
「――――」

 グレアム王子は何故かルークの問いにすぐには答えず、じっと彼を黙って見た。

「そうだね、いいよ」
「あっ、ありがとうございます」

 ルークはホッと息をついた。グレアム王子は意味深にちらりと僕を見て口角を上げた。

 もしかしてすぐに返事をしなかったのは、ローワンの指輪をもらってぼくを悲しませたことに対する意趣返しだったのだろうか。
 でもあれ、彼も一応被害者なんだけどね。
 
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