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解呪
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「僕は、僕はノエル一筋だからね! ノエルも、浮気なんてしたら嫌だよっ」
「しません。しませんし、する予定もないです」
必死な顔が可愛いなんて言ったら怒るだろうか? ぼくはほっこりと笑いたくなる気持ちを抑えて、真剣な顔で頷いた。
「よかった」
そう言って、またルークはぼくをぎゅっと抱き寄せた。
それからジョーンズ様は次の予定があると言うので、ぼくらは部屋を後にした。
「帰ったらすぐにキリンスを持って訪ねたいんだけど、いいかな?」
「え?」
「さっきジョーンズ様がキリンスは番だって言ってただろ? だったら善は急げで、僕の部屋のキリンスを君たちの庭に移した方がいいかなと思うんだ」
お兄様もぼくも顔を見合わせた。
「それは嬉しいです。ね? お兄様」
「そうだな。ご迷惑でなければ、よろしくお願いします」
ルークはほっとした表情になった。
もしかしたらぼくたちが怒っているとでも思っていたのだろうか? ルークだって被害者の一人なのに。
「ついでに、私にもキリンスを見せてもらってもいいか?」
ぼくたちの話を聞いて、カーギル先生が目を輝かせて近づいてきた。ジョーンズ様の話を聞いて、すぐにでもキリンスをみたいという気持ちが強くなったようだ。
「はい、構いませんが。……あ、よろしければグレアム様もいかがですか?」
「あー、悪いな。行きたいのはやまやまだが、今日はもうそろそろ帰らないとまずいんだ」
「そうですか、残念です」
クリスやアーネストも誘ってみたのだけど、クリスは用事があるといいアーネストは僕のところでキリンスをすでに見ているのでそのまま帰ると断られた。
「おおっ、これがキリンスの実物か!」
訪れたカーギル先生を早速庭に通しキリンスを見せると、感嘆の声を上げた。
キリンスの背丈は現在40cmぐらいだ。ここ最近、急激に伸びている。
「この背丈だと、そろそろ蕾もできてくるかもしれんな」
「そうなんですか? ぼくまだ花を見たことなくて」
「図鑑で見た感じだと、真ん中あたりが薄いオレンジ色でグラデーションになっていて、花の先あたりは白い色になっているらしいぞ」
「早く見てみたいです」
カーギル先生はぼくに微笑んだあと、研究者の顔に変わった。キリンスのそばにしゃがんで葉の裏を観察したり、茎の様子をじっと見て土の状態を見たりしている。
そこにメイドに案内されたルークがやってきた。キリンスの鉢を抱えている。
「キリンスのすぐ横に植えた方がいいですよね」
「そうだな。少し離してこの辺に植えてくれ」
「ぼくがやります」
カーギル先生がちょうどいい場所に魔法で穴を開けてくれたので、ぼくも慎重に、鉢からキリンスを取り出した。
丁寧に植え替えて土をならす。
「よし、いいかな」
「あっ!」
みんなの目がキリンスに釘付けになった。
風もないのに双方のキリンスが上体を倒し近づいて、まるで懐かしい知り合いに駆け寄っているかのようだった。
それが元の位置に戻った瞬間ぱんっと音を立て、ぱあっと金色の光が輝き、それはキラキラと小さな光の粒になって消えていった。
「あ……れ?」
僕の中でカシンと音がして、何かから解き放されたような気分になった。横ではルークも目を瞬いている。
「今、何かが割れた……?」
「ルーク様も?」
晴々とした、でもとても不思議な感覚に戸惑っていたらカーギル先生が良かったなと言った。
「完全に解呪されたようだ」
カーギル先生の言葉に感極まったぼくは、人前だということも忘れて、ぼろぼろと涙を流した。もう終わるんだ、やっとあの辛いループから本当に解放されるんだと、そう思ったら涙が止まらなかった。
見るとルークも泣いていた。泣きながら手を伸ばしてぼくを抱きしめた。
ハロルドお兄様がそんなぼくらを見て嬉しそうに笑い、 2人揃って優しく抱きしめてくれた。
「しません。しませんし、する予定もないです」
必死な顔が可愛いなんて言ったら怒るだろうか? ぼくはほっこりと笑いたくなる気持ちを抑えて、真剣な顔で頷いた。
「よかった」
そう言って、またルークはぼくをぎゅっと抱き寄せた。
それからジョーンズ様は次の予定があると言うので、ぼくらは部屋を後にした。
「帰ったらすぐにキリンスを持って訪ねたいんだけど、いいかな?」
「え?」
「さっきジョーンズ様がキリンスは番だって言ってただろ? だったら善は急げで、僕の部屋のキリンスを君たちの庭に移した方がいいかなと思うんだ」
お兄様もぼくも顔を見合わせた。
「それは嬉しいです。ね? お兄様」
「そうだな。ご迷惑でなければ、よろしくお願いします」
ルークはほっとした表情になった。
もしかしたらぼくたちが怒っているとでも思っていたのだろうか? ルークだって被害者の一人なのに。
「ついでに、私にもキリンスを見せてもらってもいいか?」
ぼくたちの話を聞いて、カーギル先生が目を輝かせて近づいてきた。ジョーンズ様の話を聞いて、すぐにでもキリンスをみたいという気持ちが強くなったようだ。
「はい、構いませんが。……あ、よろしければグレアム様もいかがですか?」
「あー、悪いな。行きたいのはやまやまだが、今日はもうそろそろ帰らないとまずいんだ」
「そうですか、残念です」
クリスやアーネストも誘ってみたのだけど、クリスは用事があるといいアーネストは僕のところでキリンスをすでに見ているのでそのまま帰ると断られた。
「おおっ、これがキリンスの実物か!」
訪れたカーギル先生を早速庭に通しキリンスを見せると、感嘆の声を上げた。
キリンスの背丈は現在40cmぐらいだ。ここ最近、急激に伸びている。
「この背丈だと、そろそろ蕾もできてくるかもしれんな」
「そうなんですか? ぼくまだ花を見たことなくて」
「図鑑で見た感じだと、真ん中あたりが薄いオレンジ色でグラデーションになっていて、花の先あたりは白い色になっているらしいぞ」
「早く見てみたいです」
カーギル先生はぼくに微笑んだあと、研究者の顔に変わった。キリンスのそばにしゃがんで葉の裏を観察したり、茎の様子をじっと見て土の状態を見たりしている。
そこにメイドに案内されたルークがやってきた。キリンスの鉢を抱えている。
「キリンスのすぐ横に植えた方がいいですよね」
「そうだな。少し離してこの辺に植えてくれ」
「ぼくがやります」
カーギル先生がちょうどいい場所に魔法で穴を開けてくれたので、ぼくも慎重に、鉢からキリンスを取り出した。
丁寧に植え替えて土をならす。
「よし、いいかな」
「あっ!」
みんなの目がキリンスに釘付けになった。
風もないのに双方のキリンスが上体を倒し近づいて、まるで懐かしい知り合いに駆け寄っているかのようだった。
それが元の位置に戻った瞬間ぱんっと音を立て、ぱあっと金色の光が輝き、それはキラキラと小さな光の粒になって消えていった。
「あ……れ?」
僕の中でカシンと音がして、何かから解き放されたような気分になった。横ではルークも目を瞬いている。
「今、何かが割れた……?」
「ルーク様も?」
晴々とした、でもとても不思議な感覚に戸惑っていたらカーギル先生が良かったなと言った。
「完全に解呪されたようだ」
カーギル先生の言葉に感極まったぼくは、人前だということも忘れて、ぼろぼろと涙を流した。もう終わるんだ、やっとあの辛いループから本当に解放されるんだと、そう思ったら涙が止まらなかった。
見るとルークも泣いていた。泣きながら手を伸ばしてぼくを抱きしめた。
ハロルドお兄様がそんなぼくらを見て嬉しそうに笑い、 2人揃って優しく抱きしめてくれた。
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