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ルークの手に渡った指輪 3

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「ルーク様、少し2人で話をさせてください」
 思い切ってそう言ったのにルークの表情が曇る。
「ノエル様、ルーク様を困らせないでくださいませんか? 今、私がルーク様と大切な話をしているんです。邪魔をなさらないでください」
「なっ、」
 文句を言い返そうとした僕の横から、アーネストがずいっと前に出てきた。

「サラ嬢。そういう言い方はないんじゃないですか? ノエル様はルーク様の婚約者候補ですよ? あなたこそ邪魔じゃないんですか?」
「アーネスト、サラに対してそういう言い方をしないでくれ」
 アーネストの進言に即座に言い返すルーク。サラの顔が愉悦に歪む。
 ブチッとぼくの中で何かが切れる音がした。

「……ルーク様、それ、どういう気持ちでおっしゃってるんですか?」
 思わず低い声が出た。ぼくのために前に出て苦言を呈してくれたアーネストも、驚いたようにぼくを見た。

 だんだん腹が立ってきていた。だってあんなに気をつけろと、物をもらっちゃいけないと注意していたのに、これなんだもの。しかもぼくがルークにこういう思いをさせられるのは今だけじゃない。何度も経験させられているんだから。
 羽交い締めにしてでもあの指輪を引き抜きたいけど、サラの目の前でそれをするのは、あとあと面倒になると思って我慢した。

「あ……ノエル、君にはもちろん悪いと思って、」
「ルーク様!」
 クリスがルークの言葉を遮った。これ以上言わせてはいけないと思ったのだろう。
 そのときタイミングがいいと言うべきか、次の授業が始まるチャイムが鳴った。だけどぼくもアーネストもサラも、ここから動こうとしない。

「サラ嬢、教室に戻らないと遅刻しますよ」
 クリスにそう言われて、サラはしぶしぶ席を立った。

「また来ます、ルーク様」
「ああ、待ってるよ」
 ぼくにちらりと視線を向けたサラは、ふてぶてしい笑みを残して教室を出て行った。

「ルーク様」
「あ、ああ」
 呼ぶとルークは、叱られた子犬のような顔をしてぼくを見た。イライラする。

「今日ジョーンズ様にお会いする際、もちろん一緒に行かれますよね」
「それは、うん。約束したから」
「では後で、お迎えに参ります」
「……わかった」

「ぼくたちも戻ろうか、アーネスト」
「はい」
 アーネストは気持ちよく返事をして、ぼくの背中を押しながら特進クラスを後にした。

「震えてます?」
「えっ?」
 アーネストに言われて初めて気がついた。足がちょっとガタガタと震えている。

「頑張りましたね」 
「そんなこと言うなよ」
 うるうるしてきちゃうじゃないか。

 ぼくのそんな反応を見て、アーネストがそっと肩を引き寄せた。
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