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庭のキリンス
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帰宅すると、ハロルド兄様がぼくの部屋にやってきた。
「ルーク様との勉強はどうだった? 捗ったかい?」
「はい。ルーク様、とても教え方がうまかったです」
「そうか、そうか。楽しい時間でもあったようだな」
「えっ? あっ、はい」
「俺はノエルとしばらく帰りが一緒じゃないんだと思ったら、ちょっと寂しいんだけどな」
「あっ、」
ぼくもですと続けようと思ったんだけど、帰り際のルークとのキスを思い出して、ちょっと言葉に詰まった。
「あー、いいよ、いいよ。ノエルが幸せそうなら。それよりグレアム様に遊びに来るよう言われた件だけど、この日曜日でいいか? 何か予定ある?」
「ぼくは大丈夫ですけど。アーネストには確認とりました?」
「うん、彼は大丈夫だって言ってたよ」
「そうですか、ならいいですね」
「ああ。……そういえば何かノエルに見せたいものがあるらしいから、楽しみにしてなよ」
ぼくに見せたいもの? なんだろう?
「見てのお楽しみとかで、俺も教えてもらってないんだ。とにかく楽しみにしてて」
「はい」
ハロルド兄様は、まだ課題が残っているからと言って部屋を出て行った。ぼくの方は図書館でついでに終わらせてきたので、庭にキリンスを見に行くことにした。教えてもらった相性も試してみたいし。
もう遅い時間だからすぐに暗くなりそうなので、ランプも持って行くことにした。
庭へと歩きながら、学園に通うようになってからキリンスたちを見に行く頻度が減っているなと思った。ちょっと反省しなければ。
キリンスはいつも通りだった。みずみずしい緑に肉厚の葉。ぼくの代わりにメイド達がしっかり手入れをしてくれている証拠だ。そっと指で触れてみると、ぷるんと葉っぱが揺れた。
教えてもらったように、キリンスに手をかざしてみる。神経を集中させていると手のひらが段々温かくなってきた。そして淡く発光する。そしてその光は、小さな粒になり霧散した。
とても綺麗だった。綺麗だけど、なぜか切なく人恋しくなった。
どういうことだろう? キリンスは何かぼくに訴えたいんだろうか?
相性が良いんだと思う嬉しさよりも、そちらの方が気になってしまった。
そう思ってしまうくらいに、キリンスから感じ取れる思いは強く切ないものだった。
「ルーク様との勉強はどうだった? 捗ったかい?」
「はい。ルーク様、とても教え方がうまかったです」
「そうか、そうか。楽しい時間でもあったようだな」
「えっ? あっ、はい」
「俺はノエルとしばらく帰りが一緒じゃないんだと思ったら、ちょっと寂しいんだけどな」
「あっ、」
ぼくもですと続けようと思ったんだけど、帰り際のルークとのキスを思い出して、ちょっと言葉に詰まった。
「あー、いいよ、いいよ。ノエルが幸せそうなら。それよりグレアム様に遊びに来るよう言われた件だけど、この日曜日でいいか? 何か予定ある?」
「ぼくは大丈夫ですけど。アーネストには確認とりました?」
「うん、彼は大丈夫だって言ってたよ」
「そうですか、ならいいですね」
「ああ。……そういえば何かノエルに見せたいものがあるらしいから、楽しみにしてなよ」
ぼくに見せたいもの? なんだろう?
「見てのお楽しみとかで、俺も教えてもらってないんだ。とにかく楽しみにしてて」
「はい」
ハロルド兄様は、まだ課題が残っているからと言って部屋を出て行った。ぼくの方は図書館でついでに終わらせてきたので、庭にキリンスを見に行くことにした。教えてもらった相性も試してみたいし。
もう遅い時間だからすぐに暗くなりそうなので、ランプも持って行くことにした。
庭へと歩きながら、学園に通うようになってからキリンスたちを見に行く頻度が減っているなと思った。ちょっと反省しなければ。
キリンスはいつも通りだった。みずみずしい緑に肉厚の葉。ぼくの代わりにメイド達がしっかり手入れをしてくれている証拠だ。そっと指で触れてみると、ぷるんと葉っぱが揺れた。
教えてもらったように、キリンスに手をかざしてみる。神経を集中させていると手のひらが段々温かくなってきた。そして淡く発光する。そしてその光は、小さな粒になり霧散した。
とても綺麗だった。綺麗だけど、なぜか切なく人恋しくなった。
どういうことだろう? キリンスは何かぼくに訴えたいんだろうか?
相性が良いんだと思う嬉しさよりも、そちらの方が気になってしまった。
そう思ってしまうくらいに、キリンスから感じ取れる思いは強く切ないものだった。
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