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意外なグレアム王子
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いつもならぼくはお兄様と一緒に馬車で帰るのだけど、今日はルークのお屋敷にお邪魔すると約束をしたので、そのことを伝えるためにお兄様の教室へとアーネストと一緒に向かっている。
「二年生の教室って緊張しますね」
「うん。特にお兄様の教室にはグレアム王子までいるんだもんね。余計に緊張するよ」
「グレアム王子は素晴らしい方ですよ。そんなに緊張なさることはないです。あ、そういえば言い忘れてましたけど、わたしグレアム王子の側近候補という立場になりました」
「ああ、そうか」
そうか、このぐらいの時期だったな。
「あれ、驚かないんですか?」
「えっ、あっ、驚いてるよ。だけどお兄様もそうだから、驚きが半分になってるのかな?」
「何ですか、それ」
「あはは、気にしないで。でも、それじゃあアーネストは、グレアム王子のそばにいなくて大丈夫なのかい?」
「それこそハロルド様がついていらっしゃいますから。わたしは学年も違いますし」
「それもそうか」
「はい」
学年が一年違うというだけで雰囲気が違う気がした。二年生の教室は大人っぽいというか。ぼくらがまだまだ子供っぽく感じる。特にこの特進Aクラスは格別だ。中を窺うと、ほとんどの人が教科書を片手に誰かと熱心に話をしている。とても声をかけられる雰囲気ではない。
お兄様はどこだろうときょろきょろとしていると、ぽんと肩を叩かれた。
もしかしてお兄様かと喜々として振り向いたら、グレアム王子だった。ひゅんっと一瞬、心臓が1m飛び上がった。
「びっくりした? 悪いね」
「グレアム様、お人が悪いですよ」
隣でハロルドお兄様が笑いながらたしなめている。グレアム王子ってこんな感じだったっけ? 前回はあまり関わる機会がなかったからわからなかったけど。
「どうした? 俺に用事?」
「はい、あの……ルーク様のお屋敷に遊びに行くことになりましたので、今日はお兄様と一緒に帰れません。そのことをお伝えしに来ました」
「ああ、そうなんだね。いいよ、楽しんでおいで」
「はい。それでは失礼します」
「ノエル」
挨拶をして戻ろうと踵を返したら、王子に呼び止められた。「はい」と返事をして立ち止まる。
「今度王城に遊びにおいで。アーネストとハロルドも一緒に」
グレアム王子のその一言で、ぼくはびっくりして固まってしまった。
「どうだい?」
王子は人好きのする笑顔を見せた。相変わらずその隣では、ハロルド兄様が笑っている。アーネストがぼくの隣で、わかりましたと返事をしている。ぼくも慌てて楽しみにしていますと言った。
「びっくりした! グレアム王子って意外とフレンドリー!」
「王子ってそういうとこありますよ。でもわたしもびっくりしました」
「そうかー。いずれ側近になる立場だからわかるんだね」
「いえいえ。この話をいただいたのも本当に最近なので、まだまだこれからです」
「そうか、でもびっくりしたなー。まさか誘っていただけるなんて」
「誘ってって?」
えっ?と思いひょいと顔を上げると、ルークが小首をかしげてぼくを見ていた。
「二年生の教室って緊張しますね」
「うん。特にお兄様の教室にはグレアム王子までいるんだもんね。余計に緊張するよ」
「グレアム王子は素晴らしい方ですよ。そんなに緊張なさることはないです。あ、そういえば言い忘れてましたけど、わたしグレアム王子の側近候補という立場になりました」
「ああ、そうか」
そうか、このぐらいの時期だったな。
「あれ、驚かないんですか?」
「えっ、あっ、驚いてるよ。だけどお兄様もそうだから、驚きが半分になってるのかな?」
「何ですか、それ」
「あはは、気にしないで。でも、それじゃあアーネストは、グレアム王子のそばにいなくて大丈夫なのかい?」
「それこそハロルド様がついていらっしゃいますから。わたしは学年も違いますし」
「それもそうか」
「はい」
学年が一年違うというだけで雰囲気が違う気がした。二年生の教室は大人っぽいというか。ぼくらがまだまだ子供っぽく感じる。特にこの特進Aクラスは格別だ。中を窺うと、ほとんどの人が教科書を片手に誰かと熱心に話をしている。とても声をかけられる雰囲気ではない。
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「びっくりした? 悪いね」
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隣でハロルドお兄様が笑いながらたしなめている。グレアム王子ってこんな感じだったっけ? 前回はあまり関わる機会がなかったからわからなかったけど。
「どうした? 俺に用事?」
「はい、あの……ルーク様のお屋敷に遊びに行くことになりましたので、今日はお兄様と一緒に帰れません。そのことをお伝えしに来ました」
「ああ、そうなんだね。いいよ、楽しんでおいで」
「はい。それでは失礼します」
「ノエル」
挨拶をして戻ろうと踵を返したら、王子に呼び止められた。「はい」と返事をして立ち止まる。
「今度王城に遊びにおいで。アーネストとハロルドも一緒に」
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「どうだい?」
王子は人好きのする笑顔を見せた。相変わらずその隣では、ハロルド兄様が笑っている。アーネストがぼくの隣で、わかりましたと返事をしている。ぼくも慌てて楽しみにしていますと言った。
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「王子ってそういうとこありますよ。でもわたしもびっくりしました」
「そうかー。いずれ側近になる立場だからわかるんだね」
「いえいえ。この話をいただいたのも本当に最近なので、まだまだこれからです」
「そうか、でもびっくりしたなー。まさか誘っていただけるなんて」
「誘ってって?」
えっ?と思いひょいと顔を上げると、ルークが小首をかしげてぼくを見ていた。
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