5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ

文字の大きさ
上 下
21 / 57

意外なグレアム王子

しおりを挟む
 いつもならぼくはお兄様と一緒に馬車で帰るのだけど、今日はルークのお屋敷にお邪魔すると約束をしたので、そのことを伝えるためにお兄様の教室へとアーネストと一緒に向かっている。

「二年生の教室って緊張しますね」
「うん。特にお兄様の教室にはグレアム王子までいるんだもんね。余計に緊張するよ」

「グレアム王子は素晴らしい方ですよ。そんなに緊張なさることはないです。あ、そういえば言い忘れてましたけど、わたしグレアム王子の側近候補という立場になりました」
「ああ、そうか」
 そうか、このぐらいの時期だったな。
「あれ、驚かないんですか?」
「えっ、あっ、驚いてるよ。だけどお兄様もそうだから、驚きが半分になってるのかな?」
「何ですか、それ」
「あはは、気にしないで。でも、それじゃあアーネストは、グレアム王子のそばにいなくて大丈夫なのかい?」
「それこそハロルド様がついていらっしゃいますから。わたしは学年も違いますし」
「それもそうか」
「はい」

 学年が一年違うというだけで雰囲気が違う気がした。二年生の教室は大人っぽいというか。ぼくらがまだまだ子供っぽく感じる。特にこの特進Aクラスは格別だ。中を窺うと、ほとんどの人が教科書を片手に誰かと熱心に話をしている。とても声をかけられる雰囲気ではない。
 お兄様はどこだろうときょろきょろとしていると、ぽんと肩を叩かれた。
 もしかしてお兄様かと喜々として振り向いたら、グレアム王子だった。ひゅんっと一瞬、心臓が1m飛び上がった。

「びっくりした? 悪いね」
「グレアム様、お人が悪いですよ」
 隣でハロルドお兄様が笑いながらたしなめている。グレアム王子ってこんな感じだったっけ? 前回はあまり関わる機会がなかったからわからなかったけど。

「どうした? 俺に用事?」
「はい、あの……ルーク様のお屋敷に遊びに行くことになりましたので、今日はお兄様と一緒に帰れません。そのことをお伝えしに来ました」
「ああ、そうなんだね。いいよ、楽しんでおいで」
「はい。それでは失礼します」

「ノエル」
 挨拶をして戻ろうと踵を返したら、王子に呼び止められた。「はい」と返事をして立ち止まる。

「今度王城に遊びにおいで。アーネストとハロルドも一緒に」
 グレアム王子のその一言で、ぼくはびっくりして固まってしまった。
「どうだい?」
 王子は人好きのする笑顔を見せた。相変わらずその隣では、ハロルド兄様が笑っている。アーネストがぼくの隣で、わかりましたと返事をしている。ぼくも慌てて楽しみにしていますと言った。


「びっくりした! グレアム王子って意外とフレンドリー!」
「王子ってそういうとこありますよ。でもわたしもびっくりしました」
「そうかー。いずれ側近になる立場だからわかるんだね」
「いえいえ。この話をいただいたのも本当に最近なので、まだまだこれからです」
「そうか、でもびっくりしたなー。まさか誘っていただけるなんて」

「誘ってって?」
 えっ?と思いひょいと顔を上げると、ルークが小首をかしげてぼくを見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが

ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク 王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。 余談だが趣味で小説を書いている。 そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが? 全8話完結

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

王子の恋

うりぼう
BL
幼い頃の初恋。 そんな初恋の人に、今日オレは嫁ぐ。 しかし相手には心に決めた人がいて…… ※擦れ違い ※両片想い ※エセ王国 ※エセファンタジー ※細かいツッコミはなしで

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

婚約者の恋

うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。 そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した! 婚約破棄? どうぞどうぞ それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい! ……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね? そんな主人公のお話。 ※異世界転生 ※エセファンタジー ※なんちゃって王室 ※なんちゃって魔法 ※婚約破棄 ※婚約解消を解消 ※みんなちょろい ※普通に日本食出てきます ※とんでも展開 ※細かいツッコミはなしでお願いします ※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

処理中です...