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婚約の保留 ルーク視点
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王宮近衛騎士団の特別稽古から帰り、僕は父上と母上の前に座っていた。
「話しとは何だね?」
僕はごくんと唾を飲み込んで、緊張でからからになりかけた口を開いた。
「僕の婚約の件についてです」
「決めたのか?」
「はい、決めました」
「そうか、よかった。で、その幸運の相手は誰だ?」
「モンゴメリー公爵家の次男、ノエルです」
僕のその返事に父上と母上の顔色が変わった。
「私は、それに同意できないな」
言うだろうなと思ってはいた。母上はあの場にいたのだ。ノエルの態度を見て、苦い顔をしていたのを覚えている。
「マークの言うとうりだ。ノエルは甚だしく消極的で話もできないようだと聞いた。家柄は申し分なくてもそんな性質では、この公爵家にはふさわしくない」
「それは違います。あの時のノエルは体調も悪く、それに緊張もしていたとかで本来の彼の姿ではなかったんです。もともとノエルは明るくてハキハキとしています!」
「どうして分かる? 彼ともともと面識があったのか?」
「直接はないです。たまたま稽古場で見かけて一目惚れしました」
「それじゃ分からないじゃないか」
父上と母上は、さも呆れたと言わんばかりにため息をついた。
「ルーク、彼のことは諦めなさい。彼がここに嫁いできても、いらぬ苦労をするだけだ」
「いやです! 僕は彼とじゃないと結婚はしません!」
父上と母上は、僕の必死の形相にびっくりしていた。こんな風に感情的になって、自分の意見を言うことはいままでなかったからだ。
正直、初めて会って一目惚れしたときは、ここまで彼じゃないとダメだなんて思ってはいなかった。
意識が変わったのはお茶会でノエルと会ってからだ。自分でもどうしてなのかわからない。
彼を離しては駄目だ、今度こそ彼をちゃんと守り幸せにしないといけないと自分でも理解できない感情に捕らわれたのだ。
今度こそという気持ちがわからない。はじめて会ったノエルに対して思う感情ではないと思うのに、僕の中からその気持ちは絶対に消えなかった。
間違った道に行くな、引き戻せと僕の魂が叫んでいる。
「気持ちは変わらないのか?」
「絶対に変わりません。僕にとってノエルの代わりはいません」
唇をかみしめ、じっと父上の瞳を見つめる。逸らさずに見つめ続ける僕に、父上がため息をついた。
「ルークがそれほどまでに言うのなら譲歩しよう。彼はハイスランド学園には行くのか?」
「だと思いますけど」
「ルークと婚約する気があるなら、そこに通いなさいと言いなさい。あそこは試験も面接もある。そこに受からないような程度では、ルークとの婚約を認めるわけにはいかない」
「……はい」
「そこに入学するのが最低条件だが。入学して共に学園生活を送り、それでも婚約したいという意志があるならその時は二人で私らに会いに来なさい」
「アラン、そんなに婚約を悠長に待ってあげてもいいのか? せめて期限を切らないと」
「そうだな。では、入学して一年以内ということではどうだ?」
「まあそのぐらいならギリギリだな。ルークはそれでいいな?」
「もちろんです、ありがとうございます!」
僕は席を立って、深々と両親に頭を下げた。
よかった。なんとか両親の了承を得られた。
せっかく僕との婚約に首を縦に振ってくれたノエルに不快な思いをさせてしまうのは嫌だけど。
でも、僕は今回は絶対に間違えない。
心の奥深くにいる僕が、決心に、拳を握りしめているのを感じた。
※ルークの両親は同性婚
父はアラン。母はマーク。
「話しとは何だね?」
僕はごくんと唾を飲み込んで、緊張でからからになりかけた口を開いた。
「僕の婚約の件についてです」
「決めたのか?」
「はい、決めました」
「そうか、よかった。で、その幸運の相手は誰だ?」
「モンゴメリー公爵家の次男、ノエルです」
僕のその返事に父上と母上の顔色が変わった。
「私は、それに同意できないな」
言うだろうなと思ってはいた。母上はあの場にいたのだ。ノエルの態度を見て、苦い顔をしていたのを覚えている。
「マークの言うとうりだ。ノエルは甚だしく消極的で話もできないようだと聞いた。家柄は申し分なくてもそんな性質では、この公爵家にはふさわしくない」
「それは違います。あの時のノエルは体調も悪く、それに緊張もしていたとかで本来の彼の姿ではなかったんです。もともとノエルは明るくてハキハキとしています!」
「どうして分かる? 彼ともともと面識があったのか?」
「直接はないです。たまたま稽古場で見かけて一目惚れしました」
「それじゃ分からないじゃないか」
父上と母上は、さも呆れたと言わんばかりにため息をついた。
「ルーク、彼のことは諦めなさい。彼がここに嫁いできても、いらぬ苦労をするだけだ」
「いやです! 僕は彼とじゃないと結婚はしません!」
父上と母上は、僕の必死の形相にびっくりしていた。こんな風に感情的になって、自分の意見を言うことはいままでなかったからだ。
正直、初めて会って一目惚れしたときは、ここまで彼じゃないとダメだなんて思ってはいなかった。
意識が変わったのはお茶会でノエルと会ってからだ。自分でもどうしてなのかわからない。
彼を離しては駄目だ、今度こそ彼をちゃんと守り幸せにしないといけないと自分でも理解できない感情に捕らわれたのだ。
今度こそという気持ちがわからない。はじめて会ったノエルに対して思う感情ではないと思うのに、僕の中からその気持ちは絶対に消えなかった。
間違った道に行くな、引き戻せと僕の魂が叫んでいる。
「気持ちは変わらないのか?」
「絶対に変わりません。僕にとってノエルの代わりはいません」
唇をかみしめ、じっと父上の瞳を見つめる。逸らさずに見つめ続ける僕に、父上がため息をついた。
「ルークがそれほどまでに言うのなら譲歩しよう。彼はハイスランド学園には行くのか?」
「だと思いますけど」
「ルークと婚約する気があるなら、そこに通いなさいと言いなさい。あそこは試験も面接もある。そこに受からないような程度では、ルークとの婚約を認めるわけにはいかない」
「……はい」
「そこに入学するのが最低条件だが。入学して共に学園生活を送り、それでも婚約したいという意志があるならその時は二人で私らに会いに来なさい」
「アラン、そんなに婚約を悠長に待ってあげてもいいのか? せめて期限を切らないと」
「そうだな。では、入学して一年以内ということではどうだ?」
「まあそのぐらいならギリギリだな。ルークはそれでいいな?」
「もちろんです、ありがとうございます!」
僕は席を立って、深々と両親に頭を下げた。
よかった。なんとか両親の了承を得られた。
せっかく僕との婚約に首を縦に振ってくれたノエルに不快な思いをさせてしまうのは嫌だけど。
でも、僕は今回は絶対に間違えない。
心の奥深くにいる僕が、決心に、拳を握りしめているのを感じた。
※ルークの両親は同性婚
父はアラン。母はマーク。
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