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信じたい

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 ぼくは嬉しいような、失敗したような複雑な気持ちだった。でもすごく喜んだルークにぎゅうぎゅう抱きしめられているうちに、じわじわと熱くなる頬が、ぼくの気持ちをしっかりと代弁していた。

 ぼくは結局、本当の意味でルークのことを恨むことはできなかったんだ。

「今日、父上と母上にノエルとの婚約のことを許可してもらうよう話すからね」
「……はい」
 もうしょうがない。腹をくくろう。

「本当に良かったですね、ノエル様」
「うん……ありがとう」
 アーネストに、ニコニコ上機嫌で言われ恥ずかしくなる。だってぼく以上に嬉しそうなんだもん。

「ねえ、アーネスト」
「はい、何でしょう」
「君はその……ノエルと随分仲が良いようだけど、特別な何か関係があるってわけではないんだよね?」

 えっ? 何言ってるの? ルーク。
 まさかのやきもち?

「いやいやいやいや。さっきのわたしの反応を聞いてませんでした? わたしはルーク様とは友人ですよ。純粋な、だけどとても大事な友人です」

 アーネストの顔はとても真剣だけど穏やかで、ぼくの胸はきゅうっと痛くなった。
 過ぎていった辛いループの中で、友人や知人がみんな離れていくなかアーネストだけは僕の味方であろうとしてくれた。僕にとっても大事で大切な一番の友人だ。
 うるうるしてきた。

「…………」

 えっ? なに?

 ルークが面白くなさそうにぼくの顔を見ている。

「ノエルとはまだ出会ったばかりだから、僕とそんな気持ちにはなれないんだろうけど。アーネストと君って信頼関係すごいんだね。……ちょっと焼けるんだけど」
「ルーク様……」

 思いもよらないルークの反応に、アーネストはちょっとどん引いている。
 お兄様は目を丸くしている。でもすぐに破顔した。

「これからですよ、ルーク様」
 ハロルド兄様が嬉しそうな顔でルークを激励した。弟好きな兄様のことだ。ぼくが愛されてると思ってきっと嬉しいんだろうけど……ちょっとこっぱずかしい。

 でもルークは、それを真剣に受け取ってくれたようだ。

「そう、だな。ノエル!」
「っ、はい!」

「これから忙しくなる時もあると思うけど、できるだけ時間を作って互いの信頼関係を築いていこうな」
「はい」

 ぼくが神妙に頷くと、ルークは満足そうに微笑んだ。
 
 今回は、きっと違う何かがあるはずだ。ぼくはそう信じようと思った。


 そして、その後すぐにクラーク公爵家の馬車が来たのでぼくらはそこで別れた。
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