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風魔法が付与された剣  ※タイトル変わってますが中身は一緒です

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 剣を取りに来たのはぼくだけかと思ったが、そうではなかった。ぼくらと同じ年齢くらいの令息がもうひとりいて、ちょっとホッとした。
 ただ、彼の場合は僕の冷やかしと違い、真剣に剣を学びに来たようだった。ただ剣術を学んだことはなかったようで、適性があるかどうか体験しに来たといった風情だった。付き人と担当騎士と、真剣に剣を選んでいる。

「ノエル?」
「あっ、はい」
 ルークが一つの剣を持って、こちらをじっと見ていた。

「よそ見してないでちゃんと自分のものを選ばないと」
「そうだよね、ごめん」
 素直に謝ると、ルークはにこりと笑った。

「これ、ノエルにいいと思うんだ。ちょっと待ってみて」

 ルークに手渡されて持ってみると、見た目に反して意外と軽かった。しかもシックリと手になじむ。

「あ、これいいかも」
「だよね? これ特別な風魔法が付与されてる。超初心者用だ」
「へえ? そういうのがあるんですね。知らなかった」
「うん、僕もこんなの初めて見る。こんなものをかけられるなんてすごい人なのかな……?」
 会ってみたいな。ルークはポツリと呟いた。

 この国には一応魔法というものが存在してはいても、だいぶお粗末なものだ。というのも、人口減少がはなはだしい時代が長く続いている最中に国を統治していた国王が癇癪持ちで諍いが起こり、さまざまな思惑が入り乱れ、魔術の高い者たちを弾圧する傾向に向かった。
 八つ当たりともいえる迫害の状況に嫌気がさした高名な魔術師たちは国外に逃亡したり、身を隠したりとこの国から去っていってしまった。
 そのために魔力の衰退は計り知れなく、現在は少しずつ独自の方法で魔力の復活を試みている状態なのだ。だから魔法の使いかたも、ほかの国と比べお粗末だったり独特だったりする。国が剣術の育成鍛錬に熱を入れているのもそういう事情もあっての事だった。

「みんなの手元に剣があるな。それではこれから稽古を始める。まずは、構え!」

 講師を務める騎士の合図で、みんながそれぞれ剣を構えた。
 ぼくは、少しそれは重く感じたけれど、ここはなんとかうまく凌いだ。

「それでは剣をそのまま上に振り上げて!」

 一斉に、勢いよくみんなが剣を振り上げた。ぼくの両隣のお兄様もルークも、すっと綺麗に剣を振り上げる。体幹がしっかりしていて綺麗だ。もちろんお兄様の隣に並んだアーネストもそうだった。
 なのに僕だけがグラグラと揺れ動く。先ほど見かけた、僕と同じように自分の剣を持たない彼もしっかりと剣を振り上げられているのに。

「おろして!」

 ざっと風を切るように、みんなが一斉に剣を振り下ろす。ぼくの両側の2人なんてちょっとすごくて、剣が振り下ろされると同時に、小さな突風が吹いていた。さすがとしか言いようがない。
 だけど僕はそれどころじゃなかった。勢いよく振り下ろすというよりも、剣の重さに耐えかねて転びそうになったのだ。
 それでも転ばずにすんだのは、僕の背中から腰にかけて、弾力のある空気の塊のようなものが支えてくれたからだった。
 なに今の……?

 お兄様たちも目を丸くして見ている。

「見たか、今の」
「はい、見ました」
「すごいですね、この剣」
「そうだよな? 今の、この剣から発動されてたよな?」
「はい」
「この国で、魔力をこんな風に扱える人物がいるなんて思ってもいなかった。後でこれを付与した人が誰なのか、やっばり聞いてみたいな」
「それでしたら俺もご一緒させてください。興味があります」
「わたしも興味あります」
「ああ、わかった」

「そこの君たち、何をしてるんだ」
 僕を囲んで剣を眺める3人をみとがめて、講師が注意をする。

「すみません。魔法が発動されたようだったので驚いて」
 ルークの返事に、講師がそばにやってきた。そしてぼくの持っている剣を一目見て苦笑いをする。

「ああ、これは……。お茶目な人だ」
「えっ?」
「いや。この剣を選んだとは、君には見る目があるね」
 講師に微笑まれ声をかけられてぼくは慌てた。

「あ、いえ、これを選んだのはぼくではなくて」
「僕です」
 ルークがすっと手を上げた。

「あの、これに魔法を付与した方に、会わせて頂けないでしょうか?」
「えっ?」
「興味があるんです」
「僕も!」
「わたしもです」

 講師は顎にうーんと手を置いた。
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