10 / 57
風魔法が付与された剣 ※タイトル変わってますが中身は一緒です
しおりを挟む
剣を取りに来たのはぼくだけかと思ったが、そうではなかった。ぼくらと同じ年齢くらいの令息がもうひとりいて、ちょっとホッとした。
ただ、彼の場合は僕の冷やかしと違い、真剣に剣を学びに来たようだった。ただ剣術を学んだことはなかったようで、適性があるかどうか体験しに来たといった風情だった。付き人と担当騎士と、真剣に剣を選んでいる。
「ノエル?」
「あっ、はい」
ルークが一つの剣を持って、こちらをじっと見ていた。
「よそ見してないでちゃんと自分のものを選ばないと」
「そうだよね、ごめん」
素直に謝ると、ルークはにこりと笑った。
「これ、ノエルにいいと思うんだ。ちょっと待ってみて」
ルークに手渡されて持ってみると、見た目に反して意外と軽かった。しかもシックリと手になじむ。
「あ、これいいかも」
「だよね? これ特別な風魔法が付与されてる。超初心者用だ」
「へえ? そういうのがあるんですね。知らなかった」
「うん、僕もこんなの初めて見る。こんなものをかけられるなんてすごい人なのかな……?」
会ってみたいな。ルークはポツリと呟いた。
この国には一応魔法というものが存在してはいても、だいぶお粗末なものだ。というのも、人口減少がはなはだしい時代が長く続いている最中に国を統治していた国王が癇癪持ちで諍いが起こり、さまざまな思惑が入り乱れ、魔術の高い者たちを弾圧する傾向に向かった。
八つ当たりともいえる迫害の状況に嫌気がさした高名な魔術師たちは国外に逃亡したり、身を隠したりとこの国から去っていってしまった。
そのために魔力の衰退は計り知れなく、現在は少しずつ独自の方法で魔力の復活を試みている状態なのだ。だから魔法の使いかたも、ほかの国と比べお粗末だったり独特だったりする。国が剣術の育成鍛錬に熱を入れているのもそういう事情もあっての事だった。
「みんなの手元に剣があるな。それではこれから稽古を始める。まずは、構え!」
講師を務める騎士の合図で、みんながそれぞれ剣を構えた。
ぼくは、少しそれは重く感じたけれど、ここはなんとかうまく凌いだ。
「それでは剣をそのまま上に振り上げて!」
一斉に、勢いよくみんなが剣を振り上げた。ぼくの両隣のお兄様もルークも、すっと綺麗に剣を振り上げる。体幹がしっかりしていて綺麗だ。もちろんお兄様の隣に並んだアーネストもそうだった。
なのに僕だけがグラグラと揺れ動く。先ほど見かけた、僕と同じように自分の剣を持たない彼もしっかりと剣を振り上げられているのに。
「おろして!」
ざっと風を切るように、みんなが一斉に剣を振り下ろす。ぼくの両側の2人なんてちょっとすごくて、剣が振り下ろされると同時に、小さな突風が吹いていた。さすがとしか言いようがない。
だけど僕はそれどころじゃなかった。勢いよく振り下ろすというよりも、剣の重さに耐えかねて転びそうになったのだ。
それでも転ばずにすんだのは、僕の背中から腰にかけて、弾力のある空気の塊のようなものが支えてくれたからだった。
なに今の……?
お兄様たちも目を丸くして見ている。
「見たか、今の」
「はい、見ました」
「すごいですね、この剣」
「そうだよな? 今の、この剣から発動されてたよな?」
「はい」
「この国で、魔力をこんな風に扱える人物がいるなんて思ってもいなかった。後でこれを付与した人が誰なのか、やっばり聞いてみたいな」
「それでしたら俺もご一緒させてください。興味があります」
「わたしも興味あります」
「ああ、わかった」
「そこの君たち、何をしてるんだ」
僕を囲んで剣を眺める3人をみとがめて、講師が注意をする。
「すみません。魔法が発動されたようだったので驚いて」
ルークの返事に、講師がそばにやってきた。そしてぼくの持っている剣を一目見て苦笑いをする。
「ああ、これは……。お茶目な人だ」
「えっ?」
「いや。この剣を選んだとは、君には見る目があるね」
講師に微笑まれ声をかけられてぼくは慌てた。
「あ、いえ、これを選んだのはぼくではなくて」
「僕です」
ルークがすっと手を上げた。
「あの、これに魔法を付与した方に、会わせて頂けないでしょうか?」
「えっ?」
「興味があるんです」
「僕も!」
「わたしもです」
講師は顎にうーんと手を置いた。
ただ、彼の場合は僕の冷やかしと違い、真剣に剣を学びに来たようだった。ただ剣術を学んだことはなかったようで、適性があるかどうか体験しに来たといった風情だった。付き人と担当騎士と、真剣に剣を選んでいる。
「ノエル?」
「あっ、はい」
ルークが一つの剣を持って、こちらをじっと見ていた。
「よそ見してないでちゃんと自分のものを選ばないと」
「そうだよね、ごめん」
素直に謝ると、ルークはにこりと笑った。
「これ、ノエルにいいと思うんだ。ちょっと待ってみて」
ルークに手渡されて持ってみると、見た目に反して意外と軽かった。しかもシックリと手になじむ。
「あ、これいいかも」
「だよね? これ特別な風魔法が付与されてる。超初心者用だ」
「へえ? そういうのがあるんですね。知らなかった」
「うん、僕もこんなの初めて見る。こんなものをかけられるなんてすごい人なのかな……?」
会ってみたいな。ルークはポツリと呟いた。
この国には一応魔法というものが存在してはいても、だいぶお粗末なものだ。というのも、人口減少がはなはだしい時代が長く続いている最中に国を統治していた国王が癇癪持ちで諍いが起こり、さまざまな思惑が入り乱れ、魔術の高い者たちを弾圧する傾向に向かった。
八つ当たりともいえる迫害の状況に嫌気がさした高名な魔術師たちは国外に逃亡したり、身を隠したりとこの国から去っていってしまった。
そのために魔力の衰退は計り知れなく、現在は少しずつ独自の方法で魔力の復活を試みている状態なのだ。だから魔法の使いかたも、ほかの国と比べお粗末だったり独特だったりする。国が剣術の育成鍛錬に熱を入れているのもそういう事情もあっての事だった。
「みんなの手元に剣があるな。それではこれから稽古を始める。まずは、構え!」
講師を務める騎士の合図で、みんながそれぞれ剣を構えた。
ぼくは、少しそれは重く感じたけれど、ここはなんとかうまく凌いだ。
「それでは剣をそのまま上に振り上げて!」
一斉に、勢いよくみんなが剣を振り上げた。ぼくの両隣のお兄様もルークも、すっと綺麗に剣を振り上げる。体幹がしっかりしていて綺麗だ。もちろんお兄様の隣に並んだアーネストもそうだった。
なのに僕だけがグラグラと揺れ動く。先ほど見かけた、僕と同じように自分の剣を持たない彼もしっかりと剣を振り上げられているのに。
「おろして!」
ざっと風を切るように、みんなが一斉に剣を振り下ろす。ぼくの両側の2人なんてちょっとすごくて、剣が振り下ろされると同時に、小さな突風が吹いていた。さすがとしか言いようがない。
だけど僕はそれどころじゃなかった。勢いよく振り下ろすというよりも、剣の重さに耐えかねて転びそうになったのだ。
それでも転ばずにすんだのは、僕の背中から腰にかけて、弾力のある空気の塊のようなものが支えてくれたからだった。
なに今の……?
お兄様たちも目を丸くして見ている。
「見たか、今の」
「はい、見ました」
「すごいですね、この剣」
「そうだよな? 今の、この剣から発動されてたよな?」
「はい」
「この国で、魔力をこんな風に扱える人物がいるなんて思ってもいなかった。後でこれを付与した人が誰なのか、やっばり聞いてみたいな」
「それでしたら俺もご一緒させてください。興味があります」
「わたしも興味あります」
「ああ、わかった」
「そこの君たち、何をしてるんだ」
僕を囲んで剣を眺める3人をみとがめて、講師が注意をする。
「すみません。魔法が発動されたようだったので驚いて」
ルークの返事に、講師がそばにやってきた。そしてぼくの持っている剣を一目見て苦笑いをする。
「ああ、これは……。お茶目な人だ」
「えっ?」
「いや。この剣を選んだとは、君には見る目があるね」
講師に微笑まれ声をかけられてぼくは慌てた。
「あ、いえ、これを選んだのはぼくではなくて」
「僕です」
ルークがすっと手を上げた。
「あの、これに魔法を付与した方に、会わせて頂けないでしょうか?」
「えっ?」
「興味があるんです」
「僕も!」
「わたしもです」
講師は顎にうーんと手を置いた。
1,928
お気に入りに追加
2,653
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
やり直せるなら、貴方達とは関わらない。
いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。
エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。
俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。
処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。
こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…!
そう思った俺の願いは届いたのだ。
5歳の時の俺に戻ってきた…!
今度は絶対関わらない!
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
物語なんかじゃない
mahiro
BL
あの日、俺は知った。
俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。
それから数百年後。
俺は転生し、ひとり旅に出ていた。
あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる