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第六章

とうとう

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それからすぐに、大川達風紀委員(だと思われる)三人がやって来た。勝野に監視されている谷口達を見て眉間にしわを寄せる。

「お前らとうとう現行犯だな」

短髪のいかつい感じの奴が呆れたように言い放った。この風貌から言うと、こいつが大川だろう。
谷口達は、悔しそうに唇を噛んだ。

「来い。今回は逃げられないぞ」
「……わかってるよ」

寮長や駿介に見つかった時点で、逃げられないと観念したんだろう。谷口達は大人しく立ち上がった。そして駿介をチラリと横目で見て、大川たちの後につく。
ギリッと駿介の指が俺の腕に食い込んだ。嫌悪に満ちた顔で谷口を睨んでいる駿介が怖くて、思わずその指を掌で覆う。

「真紀……」

我に返った駿介が、ちょっぴり情けない顔で俺を見た。そんな駿介にキュンとして、俺はがばっと抱きつく。

「駿介……。心配かけてごめん」
「いや、俺こそ気が付かなくて……」

さっきよりいくぶん大人しくなった心臓の音が、心地よく重なって聞こえる。

安心出来る……。
きっとどんな時でも、やっぱり俺にとって一番傍にいて欲しいのは駿介だ。

「ウォッホン!」
「あ……」

二人の世界に没頭している俺たちに、勝野が居心地悪そうにしていた。離れ難いけれど、俺らは苦笑してそっと体を離した。

「すみません、先輩。真紀、歩けるか?」
「うん、大丈夫」
「もしかしたら生徒指導の方から、君に事情を聴きたいと言ってくるかもしれないけど、大丈夫だね?」
「……はい、大丈夫です」
「じゃあそろそろ戻ろうか」
「はい」

教室を出て勝野と別れた後、俺達は最初に約束した通り駿介の部屋へと向かった。
駿介は俺の手を引いて歩いてくれているんだけど、何でだか段々駿介から放たれる雰囲気が変わってきている。最初はそうでも無かったのに、何故か今は話しかけるのも躊躇するような固いオーラを放っていた。

どうしよう。誰かに襲われた俺を、だんだん嫌になってきているってこと……無いよね。

部屋に入り駿介は俺をベッドに座らせた後、真剣な表情で俺を見つめる。怖いくらいなその表情に、背筋がピンと伸びた。

「真紀」
「……はい」

ううう、怖い。怖いよ。

「真紀が攫われるのに全く気が付かなかったんだが、どういう状況だったんだ?」
「あ……」

えっ? そっち?
うああ……。どっ、どうしよう。
駿介といる時は駿介優先だって言っておきながらこの様だなんて……、呆れられるどころの話なんかじゃない。

言わなきゃいけない? 

上目遣いにそっと駿介を窺うと、駿介は一瞬も視線をそらさずにじっと俺を見ている。
そのあまりにも真顔な表情に、俺は誤魔化せそうにないと観念するしかなかった。

「実はその……」

俺は正直に、背後から聞こえて来たイチャイチャ寸前の声に釣られて行って拉致されてしまったことを話した。
俺の説明を聞くうちに、段々と駿介の眉間に深い皺が寄っていく。

こ……、怖い。

「あ……、あのさ」
「そんなに男同士のイチャイチャが見たいのか」
「えっ?」

駿介はスッと立って部屋の隅に行き、そこから大きな鏡を持って来て立て掛けた。
な、何だ?

「ほら、来いよ。好きなだけイチャイチャを見せてやるぞ」
「なっ、何言ってんだよ! そんなんじゃ――。……駿介、怒ってる?」
「当たり前だ! 真紀!」
「えっ!? は、はい」

真剣な表情と声音に、心臓が一瞬大きく跳ねた。緊張で声が上ずる。

「もう余裕のあるふりなんてしない。俺は真紀と一生一緒に居たいんだ。誰にも渡したくない」
「駿介……」
「男同士では結婚出来ないけど、それでもだ。俺が何を言いたいか分かるか?」
「うん……、分かる。俺も駿介と一生一緒にいたいよ。誰かが駿介の隣にいるかもなんて考えるのも、もう出来ない」
「真紀……」

駿介は俺の腕を取り引き寄せた。

「もう、遠慮しない」
「駿介……」

顎を持ち上げられ甘いキスが降ってくる。何度も何度も。
嬉しくて溺れたくて。ぎゅっと背中に回した腕に力を込めた。

――と、その行為に没頭する寸前に、突然カッと眩く強い光が放たれた。
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