腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ

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第五章

楽しい夕食

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食堂で全員日替わり定食を注文し、空いている席へと向かった。偶然にも、そのテーブルには三森ら一年生が座っていた。

「うわっ、駿介様だ。……って、生徒会長も一緒だ! こんばんは!」

俺も青島も一緒なんだけどな…… 。
まあ俺には騒がれる要素なんてないけど青島は……。俺様感が強すぎて、本人目の前にしては騒げないか。

「よう、体育祭は楽しめたか?」
「今晩は。今日はお疲れさま」

駿介も水本生徒会長も、にこやかに返事を返した。
しばらく適当な雑談を続けながら食事を進めていく。和やかな雰囲気の真っただ中で、駿介が「そう言えば……」と三森の方を向いた。

「……例の相談事はどうなった? 俺が介入した方がよさそうか?」
「あっ、いえっ! あれは……僕の勘違いでした。ですからもう結構です」
「そうか、わかった」

ヘえ……。柏木と同室になるチャンスもあったのに、そっちは流したんだ。

どうでもいいことではあるけれど、ちょっぴり三森を見直した。なんとなくこいつの事だから、チャンスがあればすぐさまどんな手段にでも飛び付いてしまうかと思っていた。

「駿介はしっかり副寮長をしているね。……さすが青島の親友だな」

ゴックン。

一瞬むせそうになった。
生徒会長ってば、青島の事めちゃめちゃ気に入ってね?
さすが、さすが青島だって!

興奮してテーブルをダンダンと叩きたい気持ちを抑えるのに苦労した。口許も無駄に引き締めたので、プルプルと震えている。
それにしても水本生徒会長って何だかギャップがすごいな。冷たい印象を与える風貌なのに、出てくる言葉は優しい。小説ではあまり出番が無かったからキャラを把握していなかったせいもあるんだろうけど、正直ちょっと驚いてる。

ぎゅっ。

え?

突然駿介が俺の左手を握ったのでびっくりした。反射的に駿介の方を見ると、何だか拗ねた表情で俺を見ている。

「どうしたの?」

なるべくみんなに聞こえないように小さな声で駿介に尋ねた。……んだけど。

「別に……」

とても別にというような表情じゃないんだけど。……拗ねてるよなあ。
気になったのでもう一歩踏み込んで聞こうと思ったのに、頭上から降ってきた言葉に遮られた。

「混んで来てるなー」

もうっ、タイミング悪いなと思いながら顔を上げると、柏木と倉橋がきょろきょろしながら席を探していた。

「あっ、あの。もしよければここ、二人分空いてます!」

そう言って、三森が手を上げていた。
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