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第五章

邪魔なのはお前だ、バカッ!

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「さて、そろそろ行こうか。まとまって空いてる席がなくなるぞ」
「ああ、そうですね」

そういえば周りがざわざわしてきた。しかも目立つ男が三人もいるせいでみんな燥いでいる。
駿介様だ、とか水本会長も一緒だとか嬉しそうな声が聞こえてくる。

「ほら、行こう青島」

水本生徒会長が青島の背を叩いて促す。
うん、近いよな。……生徒会長は、期待できるかも。

ああ~、いいよなあ。青島に甘える生徒会長。見てみたいなあ……。

「真紀……」
「へ?」

今度は駿介が半目で俺を見ている。

あ、そうだった。駿介が傍にいる時は、駿介のことだけを考えなきゃだった。

「ごめん、ごめん。駿介が一番だよ」

誤魔化すようにそう言って、駿介の腕を取った。
途端に背中をグサグサと、鋭い視線がつき刺さる。

知るか。そんな事にひるんでたら、目標達成には程遠い。
そんな思いで心の中を鼻息荒く武装する。

上から視線を感じチラリとそちらに目を向けると、駿介が何とも言えない表情でこちらを見ていた。

「どうしたの?」
「いや……、俺ってちょろいよなあと思って」
「えっ、何? 誰かに誘われてるの?」
「まさか! 相手は真紀に決まってるだろ!」
「こういうのをバカップルって言うんでしたっけ」
「かもしれないね……」

駿介の返事に「?」を飛ばしている俺の耳に、青島と水本生徒会長の失礼な会話が聞こえて来た。前を向くと、二人で面白そうに俺らを見ている。

呆れられバカにされてるんだなと思いつつ、やっぱなんと言うか、二人ともいい感じなんだよな。

「…………」

……あっ、だめだ、だめだ。今は妄想禁止。

そんなことより、今は優先しなきゃいけない事がある。俺は駿介と、この世界を出てからもずっと一緒にいたいんだ。

こっそりと深呼吸をして、気持ちを奮い立たせた。

「駿介、あのさ ……」
「うん?」
「俺、駿介にはずっとずっと幸せになってもらいたいって思ってたけど、今は俺と幸せになってもらいたいと思っているんだ。……それくらい駿介の事をすごく好きだってこと、分かってくれてる?」

「ああ……」

緊張して少し上ずったような声が出てしまったけれど、駿介は優しく微笑んでくれた。

「俺だってそうだよ。俺だって……」

優しい笑顔を真剣な表情に変えて、駿介が俺の目をじっと見つめる。

あっ……、もしかしたら。もしかしたらプロポーズしてくれる……?

そんな風に意識したら、急激に心臓がうるさくなった。ドッキンドッキンバックンバックンと今にも噴火しそうだ。

「真……」
「そんなとこでのろのろ歩いてたら邪魔だなあ」

それこそ邪魔な大声で、せっかく噴火するほど高揚していた気持ちが鎮火してしまった。そんな不躾な奴にムッとして目を向けると、……案の定と言うべきか、俺らの天敵、谷口が立っていた。
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