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第五章
惚れなおしました
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一生懸命声援している樹の可愛いこと。
そんな可愛い声援を一身に浴びて走る良介も、凄い走りを見せていた。
1組の奴が先頭を走っているのだけど、そいつに肉薄し、あと一歩で追い抜きそうなところに来た。俺らも大はしゃぎで声援を送る。
だけどいったん抜きそうになったそれは、前の奴が察知しギアを上げたせいでかなわなかった。おかげで付いたり離れたりを繰り返し、結局良介は2位のまま青島にバトンを渡した。
「手に汗握ったな。惜しかった」
「うん。でもあの一生懸命さが良介の格好いいところなんだよな」
うん。
ついでに嬉しそうに良介を褒める樹も可愛い。
それにしても200mをあの走りだもんなー。樹で無くても、とことん運動神経の無い俺は素直に凄いと思えるよ。
「青島は300だよな。300mをどう配分したら、タイムを短くできるんだろう。俺には想像つかないや」
「俺も」
俺らにとっては気の長くなるような距離を、青島は結構なスピードで走っていく。ただ最初は余力を残すつもりなのか、みんなに必死さは見て取れない。
「あっ、ギア入れ始めたぞ」
半分を過ぎた辺りから、一様にみんなのスピードが上がった。
「……体力勝負だな」
一度ひしめき合う状態を見せた後、青島と他にあと二人が抜け出して来た。抜きつ抜かれつをしながら、三つ巴の様相だ。
「頑張れ、青島ーーー!」
「青島あぁーーー!」
とんでもない状態だ。なだれ込むように掛けてきた三人は、ほぼ同時にバトンパスをした。
「駿介えぇぇーーー!!」
「駿介様ー」
「頑張って駿介様ぁ」
すっげ応援。やっぱ駿介だよなあ。
長い400mを、結構なスピードで走り抜けていく。さっきの青島の時も思ったけど、いったい皆どんな体力だ。
「見てよ、真紀。じわじわと駿介が二位との差を離していく」
うん、うんすごい。
あれが駿介で、俺の彼……、彼氏なんだっ……!
「駿介、頑張れー!」
立ち上がって手でメガホンを作り、大声で駿介を応援した。
俺も盛り上がったけど、クラスの皆も大盛り上がりで駿介へと声援を送る。
その声援はしっかりと駿介に届き、彼は1着でゴールをした。
みんなの拍手喝采の中、4人が戻って来た。
「すごかったぞ、皆」
「お疲れー」
あちらこちらから感嘆や労いの声が飛ぶ中、良介と駿介がこちらに向かって一直線に歩いて来る。
「良介、格好よかったよ」
樹の花のような笑顔に迎えられて、良介は頭を掻いた。
「もうちょっと頑張りたかったんだけどな」
「ええっ? 俺をこれ以上惚れさせてどうする気だよ」
……可愛らしい会話だ。
「真紀」
「あっ、駿介! お疲れ、おめでとう!」
「……それだけか?」
「えっ? えっ?」
思わぬ駿介の催促に、俺はきょろきょろと辺りを見回した。いろんな意味で視線がこちらに集中している。
それは俺の気持ちとしては、駿介に抱きついて惚れ直したって言いたいところだけど……。
駿介がじっと俺を見ている。
ううっ……、もう。そんな恰好いい顔で催促するなよ。
「惚れ直したよ。もう、馬鹿!」
言いながら、俺はやけくそ気味に駿介に抱きついた。
そんな可愛い声援を一身に浴びて走る良介も、凄い走りを見せていた。
1組の奴が先頭を走っているのだけど、そいつに肉薄し、あと一歩で追い抜きそうなところに来た。俺らも大はしゃぎで声援を送る。
だけどいったん抜きそうになったそれは、前の奴が察知しギアを上げたせいでかなわなかった。おかげで付いたり離れたりを繰り返し、結局良介は2位のまま青島にバトンを渡した。
「手に汗握ったな。惜しかった」
「うん。でもあの一生懸命さが良介の格好いいところなんだよな」
うん。
ついでに嬉しそうに良介を褒める樹も可愛い。
それにしても200mをあの走りだもんなー。樹で無くても、とことん運動神経の無い俺は素直に凄いと思えるよ。
「青島は300だよな。300mをどう配分したら、タイムを短くできるんだろう。俺には想像つかないや」
「俺も」
俺らにとっては気の長くなるような距離を、青島は結構なスピードで走っていく。ただ最初は余力を残すつもりなのか、みんなに必死さは見て取れない。
「あっ、ギア入れ始めたぞ」
半分を過ぎた辺りから、一様にみんなのスピードが上がった。
「……体力勝負だな」
一度ひしめき合う状態を見せた後、青島と他にあと二人が抜け出して来た。抜きつ抜かれつをしながら、三つ巴の様相だ。
「頑張れ、青島ーーー!」
「青島あぁーーー!」
とんでもない状態だ。なだれ込むように掛けてきた三人は、ほぼ同時にバトンパスをした。
「駿介えぇぇーーー!!」
「駿介様ー」
「頑張って駿介様ぁ」
すっげ応援。やっぱ駿介だよなあ。
長い400mを、結構なスピードで走り抜けていく。さっきの青島の時も思ったけど、いったい皆どんな体力だ。
「見てよ、真紀。じわじわと駿介が二位との差を離していく」
うん、うんすごい。
あれが駿介で、俺の彼……、彼氏なんだっ……!
「駿介、頑張れー!」
立ち上がって手でメガホンを作り、大声で駿介を応援した。
俺も盛り上がったけど、クラスの皆も大盛り上がりで駿介へと声援を送る。
その声援はしっかりと駿介に届き、彼は1着でゴールをした。
みんなの拍手喝采の中、4人が戻って来た。
「すごかったぞ、皆」
「お疲れー」
あちらこちらから感嘆や労いの声が飛ぶ中、良介と駿介がこちらに向かって一直線に歩いて来る。
「良介、格好よかったよ」
樹の花のような笑顔に迎えられて、良介は頭を掻いた。
「もうちょっと頑張りたかったんだけどな」
「ええっ? 俺をこれ以上惚れさせてどうする気だよ」
……可愛らしい会話だ。
「真紀」
「あっ、駿介! お疲れ、おめでとう!」
「……それだけか?」
「えっ? えっ?」
思わぬ駿介の催促に、俺はきょろきょろと辺りを見回した。いろんな意味で視線がこちらに集中している。
それは俺の気持ちとしては、駿介に抱きついて惚れ直したって言いたいところだけど……。
駿介がじっと俺を見ている。
ううっ……、もう。そんな恰好いい顔で催促するなよ。
「惚れ直したよ。もう、馬鹿!」
言いながら、俺はやけくそ気味に駿介に抱きついた。
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