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第四章

俺たちがここに連れて来られた理由

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突然現れた美女二人に呆然としていたら、谷口達が失神したのかバタバタと音を立てて倒れた。

助かったけど、何だこの人達。
三森も呆けたように二人を見ている。

「二人とも迷惑を掛けました。私は創作の女神、クレア・スコット・バトラー。これは姪のヘレナ・ボビー・フィングルトンです。ほら、ヘレナ謝りなさい」

創作の女神ぃ~!?

想像の斜め上をいく自己紹介に、あんぐりして声も出ない。
そんなものが居たのか!

「……ごめんなさい」

「あの……」

三森が、おずおずと口を開いた。

「なんですか?」

女神が二人そろって三森を見た。

「えっと、謝られたのはどういう意味で? もしかして、僕たちをここに連れて来たのは……?」
「このヘレナの仕業です」
「だって、クレア叔母さまが私に頼むって言ったんじゃないの」
「ですがこれは禁じ手です」

ピシャリと叱られ、ヘレナと言う女神が唇を尖らせて創作の女神を上目遣いで見た。

女神というだけあって可愛いな、おい。

「分かるように説明して下さい」

何処か現実味を帯びずに心ここにあらずの俺と違って、三森が静かな声で女神たちに言った。

「では、私から話します」

フッと一息吐いて、創作の女神クレアが話し始めた。

「大坪夏樹って知っていますね?」
「はい、もちろんです。『男彼』の作者ですよね」

「そうです。その作者が『男彼』のスピンオフを創るようにと編集側から提案されたのですが、彼女は極度のスランプに陥ってしまって編集側の期待に応えられない状況になっていたんです」

「へえ……」

スピンオフかあ。凄い部数売れてたもんな。
樹だけじゃなくて駿介の人気も凄かったから、駿介を主人公にしたら売れそうだよな。

「それで切羽詰まった彼女は、毎晩毎晩神頼みをしたんです」
「美味しいお供え物の数々でしたわね、叔母様」
「コホン、コホン」

三森と二人で顔を見合せた。
何だ? もしかしてお供え物にほだされて、一介のBL作家の願いを叶えるために創作の女神が動いたってこと?

「……と、とにかく私は彼女に同情して願いを叶えてあげようと思ったのですけど、いかんせん忙しすぎて……。それでこのヘレナに頼んだらこのありさまで――」

「だって、彼女の創作意欲を駆り立てるにはどうしたらいいかって考えてる時に、真紀の妄想がビシビシ入って来たんですもの! 利用したくなるじゃないの」

な、なに? ……妄想がビシビシって。
俺の脳内が、この女神に筒抜けだったってことーーー?

それはそれで、恥ずかし過ぎるー!
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