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第四章
煽りあって、どうするの
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100m走が、いよいよスタートを切った。駿介のスタートダッシュは完璧で、すぐに皆を突き放しトップを走っている。
「行けー! 駿介ー!」
「駿介様ぁ~」
他のみんなを応援する声も飛んでいたけど、駿介への声援でほぼかき消されている。そんな声援に混じって、谷口を応援する声も聞こえて来た。
谷口と言えば、駿介から2mほど離れた位置をキープして必死で食らいついている。
もう後ちょっとだ。頑張れ、頑張れー!
「やったー! 駿介ー!」
駿介が一着でゴールした。そのすぐ後を、谷口が走り抜けていく。
もちろん駿介が勝つとは思っていたけど、目の前でゴールを見届けて感極まった。樹や青島や良介とハイタッチをし、喜び合う。近くにいる他の奴らとも喜びを分かち合った。
駿介の方にまた目をやると彼もこちらを向いていて、パチッと眼が合いガッツポーズをされた。もちろん俺も大きく手を振ってそれに応えた。
「あ~あ、あいつまた谷口に恨み買ったぞ」
「えっ?」
良介の不穏な言葉に驚いて手を上げた状態で固まった。すると青島が俺の肩にポンと手を置いて、「恨みって言うのとは、ちょっと違うと思うな」と言った。
あ~、もしかして、あの駿介を好き過ぎてって奴……?
「何、どう言う事?」
樹と良介が驚いた顔で青島を見た。
「うん? あいつのあれは、駿介に憧れ過ぎてる結果じゃないかなーと」
「ええっ?」
「だから余計に質が悪いんだけどな」
青島の言葉に瞬時に、樹が腕をさすった。
「わかる! 気持ち悪いよな!」
樹と二人で「わかる、わかる」と言いながら、腕をさすりながら頷き合う。そこへ駿介が戻って来た。
「何が分かるんだ?」
「あ、駿介おめでとう!」
現金なもので、駿介が傍に来たことで鳥肌は引いていった。くりんと駿介を仰ぎ見る。
走った直後のせいか、頬が少し上気して色気が増していた。
うう~、しかもどういうわけか爽やかさまで倍増していて、いつもより二割増しにかっこいい。
ぽ~っと駿介に見惚れちゃう。
「……あ~、真紀。お前さ……」
「ん? 何?」
何?って聞いてるのに駿介は俺に答えず、青島を見た。
「……いいか?」
「は? ……ダメだろ」
「…………」
「アホを煽るな。絶対見てるぞ」
「――正論だ」
う~んと駿介が腕組をする。
「え~? 何なの、二人だけで意味深に」
相棒ならではの二人の会話に、駿介の腕を揺さぶり唇を尖らせて文句を言うと、駿介がふにゃふにゃな顔になる。そして俺に掴まれていない方の手で、顔を覆った。
「~~~~」
「えっ? どうしたの、駿介!?」
「無自覚に煽ってやるな。駿介はお前が可愛すぎるからって、ギューッと抱きしめて頬をスリスリしたいそうだぞ」
「えっ、何言ってんの!?」
「……そこまでは言ってない」
ムッとしたように、駿介が青島を睨んだ。
「だが、だいたいそんなもんだろ?」
「まあ、そうだけどさ」
そう言って駿介が極上の笑みを向けるものだから、俺の顔が瞬時に熱くなる。
あ~、もう、無自覚に煽っているのはどっちだよ。
「あ、クラブ対抗リレーが始まったよ!」
樹の言葉にみんなが前を向く。サッカー部や陸上部はみんな真剣に走っているけれど、勝負を捨てて自分たちのパフォーマンスに重点を置いているクラブもあって、そこは小説の世界と全く同じだった。
みんなで笑いながら応援し、午前の部を終えたのだった。
「行けー! 駿介ー!」
「駿介様ぁ~」
他のみんなを応援する声も飛んでいたけど、駿介への声援でほぼかき消されている。そんな声援に混じって、谷口を応援する声も聞こえて来た。
谷口と言えば、駿介から2mほど離れた位置をキープして必死で食らいついている。
もう後ちょっとだ。頑張れ、頑張れー!
「やったー! 駿介ー!」
駿介が一着でゴールした。そのすぐ後を、谷口が走り抜けていく。
もちろん駿介が勝つとは思っていたけど、目の前でゴールを見届けて感極まった。樹や青島や良介とハイタッチをし、喜び合う。近くにいる他の奴らとも喜びを分かち合った。
駿介の方にまた目をやると彼もこちらを向いていて、パチッと眼が合いガッツポーズをされた。もちろん俺も大きく手を振ってそれに応えた。
「あ~あ、あいつまた谷口に恨み買ったぞ」
「えっ?」
良介の不穏な言葉に驚いて手を上げた状態で固まった。すると青島が俺の肩にポンと手を置いて、「恨みって言うのとは、ちょっと違うと思うな」と言った。
あ~、もしかして、あの駿介を好き過ぎてって奴……?
「何、どう言う事?」
樹と良介が驚いた顔で青島を見た。
「うん? あいつのあれは、駿介に憧れ過ぎてる結果じゃないかなーと」
「ええっ?」
「だから余計に質が悪いんだけどな」
青島の言葉に瞬時に、樹が腕をさすった。
「わかる! 気持ち悪いよな!」
樹と二人で「わかる、わかる」と言いながら、腕をさすりながら頷き合う。そこへ駿介が戻って来た。
「何が分かるんだ?」
「あ、駿介おめでとう!」
現金なもので、駿介が傍に来たことで鳥肌は引いていった。くりんと駿介を仰ぎ見る。
走った直後のせいか、頬が少し上気して色気が増していた。
うう~、しかもどういうわけか爽やかさまで倍増していて、いつもより二割増しにかっこいい。
ぽ~っと駿介に見惚れちゃう。
「……あ~、真紀。お前さ……」
「ん? 何?」
何?って聞いてるのに駿介は俺に答えず、青島を見た。
「……いいか?」
「は? ……ダメだろ」
「…………」
「アホを煽るな。絶対見てるぞ」
「――正論だ」
う~んと駿介が腕組をする。
「え~? 何なの、二人だけで意味深に」
相棒ならではの二人の会話に、駿介の腕を揺さぶり唇を尖らせて文句を言うと、駿介がふにゃふにゃな顔になる。そして俺に掴まれていない方の手で、顔を覆った。
「~~~~」
「えっ? どうしたの、駿介!?」
「無自覚に煽ってやるな。駿介はお前が可愛すぎるからって、ギューッと抱きしめて頬をスリスリしたいそうだぞ」
「えっ、何言ってんの!?」
「……そこまでは言ってない」
ムッとしたように、駿介が青島を睨んだ。
「だが、だいたいそんなもんだろ?」
「まあ、そうだけどさ」
そう言って駿介が極上の笑みを向けるものだから、俺の顔が瞬時に熱くなる。
あ~、もう、無自覚に煽っているのはどっちだよ。
「あ、クラブ対抗リレーが始まったよ!」
樹の言葉にみんなが前を向く。サッカー部や陸上部はみんな真剣に走っているけれど、勝負を捨てて自分たちのパフォーマンスに重点を置いているクラブもあって、そこは小説の世界と全く同じだった。
みんなで笑いながら応援し、午前の部を終えたのだった。
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