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第四章
心配かけて、ごめん
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ショックだった。まさか三森がそこまで考えていたなんて知らなくて。
確かに俺はあいつに比べるとだいぶ恵まれた環境だけど、でももし俺があいつの立場だったとしてもあんなふうに妬んだり恨んだりしたとは思わない。
逆にモブの立場なら、思いっきり腐男子ライフを楽しんでいたはずだ。
「真紀!」
眉間に皺を寄せて三森の事を考えながら歩いていると、樹と良介が血相を変えて俺に走り寄ってきた。
「樹、良介……」
「一人でどこ行ってたんだよ! 危ないから勝手に行動するなって、駿介に言われてたんじゃないのか?」
「心配してくれてたのか?」
「当り前だろう! 気が付いたら三人ともいないから! 駿介は実行委員の奴らに連れていかれたって言うし、真紀は突然走り出してどっかに行ったって言うから! 何かあったのかって心配するだろう!」
「そうだよ。駿介たちがいない時は、俺らに一声掛けてくれよ」
「……っ、ごめん……」
……そうだ。俺は確かに恵まれている。こんな風に心配して怒ってくれる友人がいる。しかもそれは主人公の樹や、みんなの人気者たちだ。
「あ~、ごめん、ごめん。言い方きつかったかな。でもマジで心配したから、つい……」
「ううん……。俺の方こそ、心配させてごめん」
俯いて謝る俺に、樹はポンと俺の肩を叩いた。
「うん! じゃあ、戻ろうか。駿介が戻って来て真紀がいないことに気付いたら、大騒ぎになりそうだ」
「そうだよな、あいつ本当に心配性だから」
うわっ、そうだった! 駿介が帰ってくる前に戻らなきゃって思ってたんだ。
「そうだった、急ごう!」
しんみりしている場合じゃなかった。
俺は樹と良介と三人で駆け足でグラウンドへと戻った。
運の良いことに、まだ駿介は戻って来ていなかった。ただ青島の方は俺らより一足早く戻っていたようで、焦って俺を探しに行こうとしているところだった。
俺を見つけた青島が、血相を変えて走り寄って来た。
「芹沢、お前どこ行ってたんだ! 一人でうろつくなって、言っておいただろう!」
「ご、ごめん。ちょっと……」
「ちょっとって何だ。一人でどこ行ってた」
いつもの青島よりもさらに迫力が増して怖い。追及されて、手のひらから汗がにじんだ。
「青島、真紀も反省してるんだからさ」
「芹沢を甘やかすのは駿介だけでいい。――どこ行ってた」
う……。
これはどうあっても、見逃してはくれなさそうだ。
「三森が……」
「三森?」
俺の言葉が相当意外だったらしい。三人とも目を見開いて、俺を見た。
「三森がどうした? ……呼び出されたのか?」
「そうじゃなくて。……こないだ良介に余計なちょっかい出してるって聞いたから、文句言わなきゃ気が済まなくて」
「……は?」
青島の目が点になった。そしてまたすぐに怒り出す。
「お前、そんな事の為にこんな時に一人になったって言うのか!? もしかしたら狙われてるかもしれないってことを、もうちょっと真剣に考えろ!」
「ご、ごめん。でも……」
「でもじゃない!」
「ちょっと青島、何も無かったんだしもういいだろ。……ありがとう真紀。俺のことで怒ってくれたんだよな? でも俺も真紀に何かあったら嫌だし、一人になるのはなるべく控えてよ」
みんなから真剣な表情で見られて、ものすごく居心地が悪かった。
だって本当に、こんな俺のためにみんなが心配してくれてるのが伝わってきたから。
「うん。……みんな心配かけてごめんね」
ぺこりと頭を下げると、青島は「しょうがねえなあ」と溜息をつき、樹と良介は笑って頷いてくれた。
三森の事は、後で考えることにしよう。
……考えたところで、俺にはどうしようもないかもしれないけど。
確かに俺はあいつに比べるとだいぶ恵まれた環境だけど、でももし俺があいつの立場だったとしてもあんなふうに妬んだり恨んだりしたとは思わない。
逆にモブの立場なら、思いっきり腐男子ライフを楽しんでいたはずだ。
「真紀!」
眉間に皺を寄せて三森の事を考えながら歩いていると、樹と良介が血相を変えて俺に走り寄ってきた。
「樹、良介……」
「一人でどこ行ってたんだよ! 危ないから勝手に行動するなって、駿介に言われてたんじゃないのか?」
「心配してくれてたのか?」
「当り前だろう! 気が付いたら三人ともいないから! 駿介は実行委員の奴らに連れていかれたって言うし、真紀は突然走り出してどっかに行ったって言うから! 何かあったのかって心配するだろう!」
「そうだよ。駿介たちがいない時は、俺らに一声掛けてくれよ」
「……っ、ごめん……」
……そうだ。俺は確かに恵まれている。こんな風に心配して怒ってくれる友人がいる。しかもそれは主人公の樹や、みんなの人気者たちだ。
「あ~、ごめん、ごめん。言い方きつかったかな。でもマジで心配したから、つい……」
「ううん……。俺の方こそ、心配させてごめん」
俯いて謝る俺に、樹はポンと俺の肩を叩いた。
「うん! じゃあ、戻ろうか。駿介が戻って来て真紀がいないことに気付いたら、大騒ぎになりそうだ」
「そうだよな、あいつ本当に心配性だから」
うわっ、そうだった! 駿介が帰ってくる前に戻らなきゃって思ってたんだ。
「そうだった、急ごう!」
しんみりしている場合じゃなかった。
俺は樹と良介と三人で駆け足でグラウンドへと戻った。
運の良いことに、まだ駿介は戻って来ていなかった。ただ青島の方は俺らより一足早く戻っていたようで、焦って俺を探しに行こうとしているところだった。
俺を見つけた青島が、血相を変えて走り寄って来た。
「芹沢、お前どこ行ってたんだ! 一人でうろつくなって、言っておいただろう!」
「ご、ごめん。ちょっと……」
「ちょっとって何だ。一人でどこ行ってた」
いつもの青島よりもさらに迫力が増して怖い。追及されて、手のひらから汗がにじんだ。
「青島、真紀も反省してるんだからさ」
「芹沢を甘やかすのは駿介だけでいい。――どこ行ってた」
う……。
これはどうあっても、見逃してはくれなさそうだ。
「三森が……」
「三森?」
俺の言葉が相当意外だったらしい。三人とも目を見開いて、俺を見た。
「三森がどうした? ……呼び出されたのか?」
「そうじゃなくて。……こないだ良介に余計なちょっかい出してるって聞いたから、文句言わなきゃ気が済まなくて」
「……は?」
青島の目が点になった。そしてまたすぐに怒り出す。
「お前、そんな事の為にこんな時に一人になったって言うのか!? もしかしたら狙われてるかもしれないってことを、もうちょっと真剣に考えろ!」
「ご、ごめん。でも……」
「でもじゃない!」
「ちょっと青島、何も無かったんだしもういいだろ。……ありがとう真紀。俺のことで怒ってくれたんだよな? でも俺も真紀に何かあったら嫌だし、一人になるのはなるべく控えてよ」
みんなから真剣な表情で見られて、ものすごく居心地が悪かった。
だって本当に、こんな俺のためにみんなが心配してくれてるのが伝わってきたから。
「うん。……みんな心配かけてごめんね」
ぺこりと頭を下げると、青島は「しょうがねえなあ」と溜息をつき、樹と良介は笑って頷いてくれた。
三森の事は、後で考えることにしよう。
……考えたところで、俺にはどうしようもないかもしれないけど。
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