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第三章
甘い寝起きの後は……、(ため息)
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とりあえず悩むのは後にして、課題を先に仕上げた。
「はあ……」
小説の中で樹は大変な目に遭っていた。
谷口に突然拉致られ、服を脱がされあちこち触られて……。
ああ、もう冗談じゃないよ!
読者としてはドキドキハラハラで興奮MAXでも、自分がされるとしたら別問題だ。
あ~、何でこんなことになっちゃったんだろう。
ベッドにダイブして、布団を抱きしめた。
……だけど、今さらもう駿介から離れることなんてできるわけないよ。
駿介……。
「真紀……」
「ん……」
「起きろよ、真紀」
「…………」
「真紀?」
ん~、うるさいぃ~。
「しょうがない奴だなあ。着替えさせるぞ。いいのか?」
「んん~」
「……こらっ、本当にこいつは……、どれだけ俺の忍耐を試す気だ」
気持ちいい……。
髪を撫でられる感触に、低音の甘い声。
もっと、もっと……。
「ひゃあっ!」
くすぐったいような感触の後、ビクビクッと甘い痺れが駆け上った。
びっくりして目を開けると、間近で綺麗な顔が笑っている。
「駿介……」
「お前本当に、朝弱すぎるぞ」
「っ……、だからって。あっ!」
ね、寝起き……!
俺寝起き、本当に不細工なんだよ!
「しゅ、駿介退いて。顔洗ってくるから」
「……お前、やっと起きたと思ったらつれないな」
「ひゃうんっ!」
「…………」
「…………」
「かっわいいなー」
「ばっ、何が可愛いだ! 駿介が変なとこ触るからっ!」
パジャマの裾のボタンが幾つか外されていた。その中に、駿介の指が入っている。
「ちょっ、……うんっ、……バカ……ッ」
ウギャーッ! 変な声漏れてんじゃねーか! 指、指動かすな、てか触んな……!
「くっ、くくくっ」
「しゅ、駿介……?」
「悪い、悪い。ちょっと揶揄っただけだ」
「もうっ!」
ぷくっと頬を膨らませて駿介を睨んだ。
本当に恥ずかしいんだからな!
「……いいから、早く顔を洗って来い。いつまでもベッドの上で寝転んでると、俺の理性が持たない」
「!!? わ、分かった。顔洗って来る!」
バタバタと洗面所へ向かう俺の背後で、駿介の小さなため息が聞こえてきた。
仕度を終えて廊下に出て、俺は隣を歩く駿介の袖を引っ張った。駿介が「ん?」と俺の方を向いた。
「あの……、呆れないでよ? 俺、その……、頑張って朝起きるようにするから」
「…………」
顔を洗って戻って来てから、ちょっぴり駿介の口数が少ないのが気になっていた。優しいから、茶化した物言いで誤魔化してくれていたけど、本当はきっと呆れているに違いないんだ。
頑張ってぼそぼそと駿介に訴えたのに、駿介は不思議な表情で俺を見つめたまま何も言わない。シュンとして視線を落とすと大きなため息が聞こえて来た。
「……誰が呆れたって?」
「だ、だって。駿介さっきから言葉少ないし……」
「アホか! 可愛い寝顔に無防備な寝姿に勝手に煽られてたんだよ。理性なんて総動員だ!」
「駿介……」
目を瞬く俺を見て、駿介は苦笑した。
「俺を煽るつもりが無いんなら、頑張って早く起きてくれよ」
「う……、頑張る。だけど駿介も、あんまり甘い声出さないでよ」
「え?」
「だって俺を起こす時の駿介の声、優しくて甘くて……。余計に眠たくなくちゃうんだもん」
「真紀……」
ハアーッとでっかいため息をついて、駿介が俺にのしかかるように抱きついた。
「え? しゅ、駿介?」
「だからあいつに何かしたわけじゃ無いって!」
え?
数メートルくらい離れた所から良介の怒ったような声が聞こえて来た。
俺に抱きついていた駿介も、ビックリしたのか体を離した。
「だったらなんで、親しくもない三森が、良介にあんなに纏わり付いたりしてたんだよ!」
樹の言葉に驚いた。三森がまた、自分の意志で何やら勝手に動いていたなんて!
駿介とのことで頭の中がお花畑になっていたのに、一瞬でそれらは蹴散らされてしまった。
三森が何を考えているのか知らないけれど、あいつと話をしないといけないと思った。
「はあ……」
小説の中で樹は大変な目に遭っていた。
谷口に突然拉致られ、服を脱がされあちこち触られて……。
ああ、もう冗談じゃないよ!
読者としてはドキドキハラハラで興奮MAXでも、自分がされるとしたら別問題だ。
あ~、何でこんなことになっちゃったんだろう。
ベッドにダイブして、布団を抱きしめた。
……だけど、今さらもう駿介から離れることなんてできるわけないよ。
駿介……。
「真紀……」
「ん……」
「起きろよ、真紀」
「…………」
「真紀?」
ん~、うるさいぃ~。
「しょうがない奴だなあ。着替えさせるぞ。いいのか?」
「んん~」
「……こらっ、本当にこいつは……、どれだけ俺の忍耐を試す気だ」
気持ちいい……。
髪を撫でられる感触に、低音の甘い声。
もっと、もっと……。
「ひゃあっ!」
くすぐったいような感触の後、ビクビクッと甘い痺れが駆け上った。
びっくりして目を開けると、間近で綺麗な顔が笑っている。
「駿介……」
「お前本当に、朝弱すぎるぞ」
「っ……、だからって。あっ!」
ね、寝起き……!
俺寝起き、本当に不細工なんだよ!
「しゅ、駿介退いて。顔洗ってくるから」
「……お前、やっと起きたと思ったらつれないな」
「ひゃうんっ!」
「…………」
「…………」
「かっわいいなー」
「ばっ、何が可愛いだ! 駿介が変なとこ触るからっ!」
パジャマの裾のボタンが幾つか外されていた。その中に、駿介の指が入っている。
「ちょっ、……うんっ、……バカ……ッ」
ウギャーッ! 変な声漏れてんじゃねーか! 指、指動かすな、てか触んな……!
「くっ、くくくっ」
「しゅ、駿介……?」
「悪い、悪い。ちょっと揶揄っただけだ」
「もうっ!」
ぷくっと頬を膨らませて駿介を睨んだ。
本当に恥ずかしいんだからな!
「……いいから、早く顔を洗って来い。いつまでもベッドの上で寝転んでると、俺の理性が持たない」
「!!? わ、分かった。顔洗って来る!」
バタバタと洗面所へ向かう俺の背後で、駿介の小さなため息が聞こえてきた。
仕度を終えて廊下に出て、俺は隣を歩く駿介の袖を引っ張った。駿介が「ん?」と俺の方を向いた。
「あの……、呆れないでよ? 俺、その……、頑張って朝起きるようにするから」
「…………」
顔を洗って戻って来てから、ちょっぴり駿介の口数が少ないのが気になっていた。優しいから、茶化した物言いで誤魔化してくれていたけど、本当はきっと呆れているに違いないんだ。
頑張ってぼそぼそと駿介に訴えたのに、駿介は不思議な表情で俺を見つめたまま何も言わない。シュンとして視線を落とすと大きなため息が聞こえて来た。
「……誰が呆れたって?」
「だ、だって。駿介さっきから言葉少ないし……」
「アホか! 可愛い寝顔に無防備な寝姿に勝手に煽られてたんだよ。理性なんて総動員だ!」
「駿介……」
目を瞬く俺を見て、駿介は苦笑した。
「俺を煽るつもりが無いんなら、頑張って早く起きてくれよ」
「う……、頑張る。だけど駿介も、あんまり甘い声出さないでよ」
「え?」
「だって俺を起こす時の駿介の声、優しくて甘くて……。余計に眠たくなくちゃうんだもん」
「真紀……」
ハアーッとでっかいため息をついて、駿介が俺にのしかかるように抱きついた。
「え? しゅ、駿介?」
「だからあいつに何かしたわけじゃ無いって!」
え?
数メートルくらい離れた所から良介の怒ったような声が聞こえて来た。
俺に抱きついていた駿介も、ビックリしたのか体を離した。
「だったらなんで、親しくもない三森が、良介にあんなに纏わり付いたりしてたんだよ!」
樹の言葉に驚いた。三森がまた、自分の意志で何やら勝手に動いていたなんて!
駿介とのことで頭の中がお花畑になっていたのに、一瞬でそれらは蹴散らされてしまった。
三森が何を考えているのか知らないけれど、あいつと話をしないといけないと思った。
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