上 下
43 / 80
第三章

甘い寝起きの後は……、(ため息)

しおりを挟む
とりあえず悩むのは後にして、課題を先に仕上げた。


「はあ……」

小説の中で樹は大変な目に遭っていた。
谷口に突然拉致られ、服を脱がされあちこち触られて……。

ああ、もう冗談じゃないよ!
読者としてはドキドキハラハラで興奮MAXでも、自分がされるとしたら別問題だ。

あ~、何でこんなことになっちゃったんだろう。

ベッドにダイブして、布団を抱きしめた。

……だけど、今さらもう駿介から離れることなんてできるわけないよ。
駿介……。



「真紀……」
「ん……」 
「起きろよ、真紀」
「…………」
「真紀?」

ん~、うるさいぃ~。

「しょうがない奴だなあ。着替えさせるぞ。いいのか?」
「んん~」
「……こらっ、本当にこいつは……、どれだけ俺の忍耐を試す気だ」

気持ちいい……。
髪を撫でられる感触に、低音の甘い声。
もっと、もっと……。

「ひゃあっ!」

くすぐったいような感触の後、ビクビクッと甘い痺れが駆け上った。
びっくりして目を開けると、間近で綺麗な顔が笑っている。

「駿介……」
「お前本当に、朝弱すぎるぞ」
「っ……、だからって。あっ!」

ね、寝起き……!
俺寝起き、本当に不細工なんだよ!

「しゅ、駿介退いて。顔洗ってくるから」
「……お前、やっと起きたと思ったらつれないな」
「ひゃうんっ!」
「…………」
「…………」
「かっわいいなー」
「ばっ、何が可愛いだ! 駿介が変なとこ触るからっ!」

パジャマの裾のボタンが幾つか外されていた。その中に、駿介の指が入っている。

「ちょっ、……うんっ、……バカ……ッ」

ウギャーッ! 変な声漏れてんじゃねーか! 指、指動かすな、てか触んな……!

「くっ、くくくっ」
「しゅ、駿介……?」
「悪い、悪い。ちょっと揶揄っただけだ」
「もうっ!」

ぷくっと頬を膨らませて駿介を睨んだ。
本当に恥ずかしいんだからな!

「……いいから、早く顔を洗って来い。いつまでもベッドの上で寝転んでると、俺の理性が持たない」
「!!? わ、分かった。顔洗って来る!」

バタバタと洗面所へ向かう俺の背後で、駿介の小さなため息が聞こえてきた。


仕度を終えて廊下に出て、俺は隣を歩く駿介の袖を引っ張った。駿介が「ん?」と俺の方を向いた。

「あの……、呆れないでよ? 俺、その……、頑張って朝起きるようにするから」
「…………」

顔を洗って戻って来てから、ちょっぴり駿介の口数が少ないのが気になっていた。優しいから、茶化した物言いで誤魔化してくれていたけど、本当はきっと呆れているに違いないんだ。

頑張ってぼそぼそと駿介に訴えたのに、駿介は不思議な表情で俺を見つめたまま何も言わない。シュンとして視線を落とすと大きなため息が聞こえて来た。

「……誰が呆れたって?」
「だ、だって。駿介さっきから言葉少ないし……」
「アホか! 可愛い寝顔に無防備な寝姿に勝手に煽られてたんだよ。理性なんて総動員だ!」
「駿介……」

目を瞬く俺を見て、駿介は苦笑した。

「俺を煽るつもりが無いんなら、頑張って早く起きてくれよ」
「う……、頑張る。だけど駿介も、あんまり甘い声出さないでよ」
「え?」
「だって俺を起こす時の駿介の声、優しくて甘くて……。余計に眠たくなくちゃうんだもん」
「真紀……」

ハアーッとでっかいため息をついて、駿介が俺にのしかかるように抱きついた。

「え? しゅ、駿介?」

「だからあいつに何かしたわけじゃ無いって!」

え?

数メートルくらい離れた所から良介の怒ったような声が聞こえて来た。
俺に抱きついていた駿介も、ビックリしたのか体を離した。

「だったらなんで、親しくもない三森が、良介にあんなに纏わり付いたりしてたんだよ!」

樹の言葉に驚いた。三森がまた、自分の意志で何やら勝手に動いていたなんて!

駿介とのことで頭の中がお花畑になっていたのに、一瞬でそれらは蹴散らされてしまった。
三森が何を考えているのか知らないけれど、あいつと話をしないといけないと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

異世界に来たけど、自分はモブらしいので帰りたいです。

蒼猫
BL
聖女召喚に巻き込まれた就活中の27歳、桜樹 海。 見知らぬ土地に飛ばされて困惑しているうちに、聖女としてもてはやされる女子高生にはストーカー扱いをされ、聖女を召喚した王様と魔道士には邪魔者扱いをされる。元いた世界でもモブだったけど、異世界に来てもモブなら俺の存在意義は?と悩むも……。 暗雲に覆われた城下町を復興支援しながら、騎士団長と愛を育む!? 山あり?谷あり?な異世界転移物語、ここにて開幕! 18禁要素がある話は※で表します。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

BLゲーに転生!!やったーーー!しかし......

∞輪廻∞
BL
BLゲーの悪役に転生した!!!よっしゃーーーー!!!やったーーー!! けど、、なんで、、、 ヒロイン含めてなんで攻略対象達から俺、好かれてるんだ?!? ヒロイン!! 通常ルートに戻れ!!! ちゃんとヒロインもヒロイン(?)しろーー!!! 攻略対象も! ヒロインに行っとけ!!! 俺は、観セ(ゴホッ!!ゴホッ!ゴホゴホッ!! 俺はエロのスチルを見てグフグフ言うのが好きなんだよぉーー!!!( ̄^ ̄゜) 誰かーーー!!へるぷみぃー!!! この、悪役令息 無自覚・天然!!

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!

甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!! ※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...