39 / 80
第三章
正式にご招待
しおりを挟む
「じゃあな、駿介は真紀の部屋に寄って行くんだろ?」
「……そうだな」
食事を終えた廊下での会話だ。
青島の言葉に、駿介はらしくなく少し迷った素振を見せた。
「どうしたの? もし用事があるんなら、いいよ」
「いや、用事があるわけではないんだけど……。副寮長に就任が決まった時にさ、勝野先輩に時々は部屋に居て相談事もたまには聞いてやるようにと言われてたからさ」
「ああ、なるほど。なら芹沢が、駿介の部屋に行けばいいな」
「それはそうなんだが」
「……邪魔?」
「まさか!」
「だって今……」
煮え切らない感じの駿介にちょっと拗ねて、上目使いで彼を見た。すると駿介は、バツが悪そうに頭を掻く。
「そうじゃなくてさ、二人きりでいると真紀の事を甘やかしたくなるんだよ。そんな状態で誰かが来たら、拙いだろ」
「……え?」
「真紀の部屋なら鍵も掛けられるけどな」
色っぽく笑いながら言う駿介に顔が熱くなった。
「じゃ、じゃあ……邪魔ってわけじゃないんだ」
「当たり前だろう」
微笑んで言う駿介にホッとした。
そう言えば、サラッと書かれていただけだから忘れていたけれど、副寮長の駿介の部屋には相談事を名目に結構な人が訪ねて来ていたと書かれていたっけ。
「やっぱ、俺行く」
「え?」
「邪魔じゃないって言ったろ?」
「それはそうだけど……」
「じゃあ、行く。だって相談って言いながら、絶対駿介目当ての奴がいるに決まって……あっ!」
ちょっと待て、俺。
三森に対して勝手に目立つような行動するなって怒ったくせに、自分はいいだなんてモロ棚上げじゃん。駿介の傍に来る奴に一々嫉妬して、相手に俺の存在をアピールしようだなんて目立つ行為じゃないなんて言えない。
相手はこの駿介だし…。
「ごめん、やっぱ……!?」
俺の雰囲気が変わったことに気がついたんだろう。手を振って「今の無し」って言おうとした俺の手を、駿介がパシッと掴まえた。
「いいよ、来い」
「や……、でも」
戸惑い始めた俺をよそに、駿介は青島の方に顔を向けた。
「お前も来いよ」
「は? 何で?」
怪訝な顔をする青島に、駿介は口角を上げてニヤリと笑った。
「――クッション材だ」
「――――」
一瞬目を見開いた青島は、すぐに大声を出して笑った。
「ほんっと、お前はヤな奴だなあ」
「それはお互い様だ」
キョトンとする俺を余所に、駿介達は楽しそうに笑っている。
そしてひとしきり笑った後、駿介は俺の方に顔を向け目を細めた。その優しい表情に、心臓がキュウって甘く痛んだ。
「さて、と。真紀――」
「う、うん」
「俺の部屋に正式に招待するよ」
そして掴んでいる俺の手を、さらにキュッと握った。
ああ、もう。ああ、もう!
何だよこれ。どこの王子様だよ!
優しい表情で俺の手を引く駿介。その前方を、青島が肩を震わせて笑いながら歩いている。
駿介に大事にされていて嬉しいと思う反面、この二人のお互いを理解し合っている関係が本当に羨ましいと思った。
勿論これは、小説通りの関係なんだけど。
……俺、本当にこの話の中に入り込んでいるんだよな。ただ、俺や三森が入り込んでしまっているせいでかなり展開が違っているような気がするけど。
「……そうだな」
食事を終えた廊下での会話だ。
青島の言葉に、駿介はらしくなく少し迷った素振を見せた。
「どうしたの? もし用事があるんなら、いいよ」
「いや、用事があるわけではないんだけど……。副寮長に就任が決まった時にさ、勝野先輩に時々は部屋に居て相談事もたまには聞いてやるようにと言われてたからさ」
「ああ、なるほど。なら芹沢が、駿介の部屋に行けばいいな」
「それはそうなんだが」
「……邪魔?」
「まさか!」
「だって今……」
煮え切らない感じの駿介にちょっと拗ねて、上目使いで彼を見た。すると駿介は、バツが悪そうに頭を掻く。
「そうじゃなくてさ、二人きりでいると真紀の事を甘やかしたくなるんだよ。そんな状態で誰かが来たら、拙いだろ」
「……え?」
「真紀の部屋なら鍵も掛けられるけどな」
色っぽく笑いながら言う駿介に顔が熱くなった。
「じゃ、じゃあ……邪魔ってわけじゃないんだ」
「当たり前だろう」
微笑んで言う駿介にホッとした。
そう言えば、サラッと書かれていただけだから忘れていたけれど、副寮長の駿介の部屋には相談事を名目に結構な人が訪ねて来ていたと書かれていたっけ。
「やっぱ、俺行く」
「え?」
「邪魔じゃないって言ったろ?」
「それはそうだけど……」
「じゃあ、行く。だって相談って言いながら、絶対駿介目当ての奴がいるに決まって……あっ!」
ちょっと待て、俺。
三森に対して勝手に目立つような行動するなって怒ったくせに、自分はいいだなんてモロ棚上げじゃん。駿介の傍に来る奴に一々嫉妬して、相手に俺の存在をアピールしようだなんて目立つ行為じゃないなんて言えない。
相手はこの駿介だし…。
「ごめん、やっぱ……!?」
俺の雰囲気が変わったことに気がついたんだろう。手を振って「今の無し」って言おうとした俺の手を、駿介がパシッと掴まえた。
「いいよ、来い」
「や……、でも」
戸惑い始めた俺をよそに、駿介は青島の方に顔を向けた。
「お前も来いよ」
「は? 何で?」
怪訝な顔をする青島に、駿介は口角を上げてニヤリと笑った。
「――クッション材だ」
「――――」
一瞬目を見開いた青島は、すぐに大声を出して笑った。
「ほんっと、お前はヤな奴だなあ」
「それはお互い様だ」
キョトンとする俺を余所に、駿介達は楽しそうに笑っている。
そしてひとしきり笑った後、駿介は俺の方に顔を向け目を細めた。その優しい表情に、心臓がキュウって甘く痛んだ。
「さて、と。真紀――」
「う、うん」
「俺の部屋に正式に招待するよ」
そして掴んでいる俺の手を、さらにキュッと握った。
ああ、もう。ああ、もう!
何だよこれ。どこの王子様だよ!
優しい表情で俺の手を引く駿介。その前方を、青島が肩を震わせて笑いながら歩いている。
駿介に大事にされていて嬉しいと思う反面、この二人のお互いを理解し合っている関係が本当に羨ましいと思った。
勿論これは、小説通りの関係なんだけど。
……俺、本当にこの話の中に入り込んでいるんだよな。ただ、俺や三森が入り込んでしまっているせいでかなり展開が違っているような気がするけど。
35
お気に入りに追加
971
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる