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第三章
不思議な現象
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……キュル。
ん?
キュルルッ。
うわーっ、恥ずかしい。腹が鳴ってるよ。
「ああ、ほんともう可愛いなお前」
感極まったようにそう言った駿介が、ぐりぐりと俺の頬に駿介の頬を擦りつけた。
腹の虫が可愛いってなんだよ! こんなの恥ずかしいだけじゃんか!
しばらくギュギュっと俺を抱きしめ、ついでにぐりぐりを堪能した後、駿介はゆっくりと俺を離した。
「遅くなっちまったな。飯に行くか」
「……うん」
のろのろとベッドから起きて何気に下を向くと、さっき駿介に色々された名残で、シャツのボタンが幾つか外されたままになっていた。慌てて留めて駿介の後に続いた。
「……なんだろうな。真紀の一々のしぐさが可愛く見えて仕方がない」
きゅうん。
……もう、そっちこそ。
駿介ったら一々カッコイイし、しかも癪に障るくらい色っぽいし……。
「なあ、真紀」
「な、なに?」
「お前、覚えているかな?」
駿介は自然に俺の手を引いて、ドアの鍵を掛けた。
しつこいけどこれは、合い鍵だ。……いいんだけどさ。
「何を?」
「真紀さ、ちょっと前になるんだけど虐められてた1年を助けてやってたろ?」
「……え?」
駿介の言葉に驚いた。
確かに俺は少し前に、明らかに嫌がらせを受けている1年を助けたことはあった。自分たちの荷物を無理やり持たせ、囃し立てているところに偶然遭遇した時だ。
最初はただの友達同士のふざけ合いなのかとも思ったのだけど、涙目になっているその子を見た時に、ついカッとなってその子の持たされている荷物を勝手に奪い、囃したてている奴らにぶん投げたんだ。
ただ格好悪いことに俺は喧嘩なんか強くないから、逆ギレした相手に心底ビビったんだけど、運のいいことに先生が通り掛かってくれたおかげで事なきを得たんだったっけ。
……あれ?
でもそれは、この世界に来る前の話しだぞ?
「それって、俺が荷物をいじめヤローに投げつけた時のこと?」
「そうだ」
「……駿介、見てたの?」
「ああ。苛められてるのを目撃した奴が俺を呼びに来たんだよ。……駆け付けた時には、真紀がちょうど荷物を投げた後だったけどな。仲裁に入ろうかとも思ったんだけど、直ぐに木島先生が対処してくれただろう? だから俺は先生に任せて、……真紀のことを見ていたんだ」
びっくりした。
知る筈のない俺の本来の日常を、駿介が知っていた。先生の名前は違うけど。
……と言うよりも、何で俺らの世界が混じり合う形になっているんだ?
「その時からだよ。小さくてちょっぴり可愛いとだけ思っていた真紀のことを、意識し始めたのは」
「…………」
駿介が、……俺のことを本当に知ってて好きになってくれていた。
すごくすごく嬉しい駿介からの告白だ。
だけど、不可解さとうれしさがごちゃ混ぜになってしまった俺は、ただただ真っ赤な顔で呆けたように駿介を見つめることしか出来なかった。
ん?
キュルルッ。
うわーっ、恥ずかしい。腹が鳴ってるよ。
「ああ、ほんともう可愛いなお前」
感極まったようにそう言った駿介が、ぐりぐりと俺の頬に駿介の頬を擦りつけた。
腹の虫が可愛いってなんだよ! こんなの恥ずかしいだけじゃんか!
しばらくギュギュっと俺を抱きしめ、ついでにぐりぐりを堪能した後、駿介はゆっくりと俺を離した。
「遅くなっちまったな。飯に行くか」
「……うん」
のろのろとベッドから起きて何気に下を向くと、さっき駿介に色々された名残で、シャツのボタンが幾つか外されたままになっていた。慌てて留めて駿介の後に続いた。
「……なんだろうな。真紀の一々のしぐさが可愛く見えて仕方がない」
きゅうん。
……もう、そっちこそ。
駿介ったら一々カッコイイし、しかも癪に障るくらい色っぽいし……。
「なあ、真紀」
「な、なに?」
「お前、覚えているかな?」
駿介は自然に俺の手を引いて、ドアの鍵を掛けた。
しつこいけどこれは、合い鍵だ。……いいんだけどさ。
「何を?」
「真紀さ、ちょっと前になるんだけど虐められてた1年を助けてやってたろ?」
「……え?」
駿介の言葉に驚いた。
確かに俺は少し前に、明らかに嫌がらせを受けている1年を助けたことはあった。自分たちの荷物を無理やり持たせ、囃し立てているところに偶然遭遇した時だ。
最初はただの友達同士のふざけ合いなのかとも思ったのだけど、涙目になっているその子を見た時に、ついカッとなってその子の持たされている荷物を勝手に奪い、囃したてている奴らにぶん投げたんだ。
ただ格好悪いことに俺は喧嘩なんか強くないから、逆ギレした相手に心底ビビったんだけど、運のいいことに先生が通り掛かってくれたおかげで事なきを得たんだったっけ。
……あれ?
でもそれは、この世界に来る前の話しだぞ?
「それって、俺が荷物をいじめヤローに投げつけた時のこと?」
「そうだ」
「……駿介、見てたの?」
「ああ。苛められてるのを目撃した奴が俺を呼びに来たんだよ。……駆け付けた時には、真紀がちょうど荷物を投げた後だったけどな。仲裁に入ろうかとも思ったんだけど、直ぐに木島先生が対処してくれただろう? だから俺は先生に任せて、……真紀のことを見ていたんだ」
びっくりした。
知る筈のない俺の本来の日常を、駿介が知っていた。先生の名前は違うけど。
……と言うよりも、何で俺らの世界が混じり合う形になっているんだ?
「その時からだよ。小さくてちょっぴり可愛いとだけ思っていた真紀のことを、意識し始めたのは」
「…………」
駿介が、……俺のことを本当に知ってて好きになってくれていた。
すごくすごく嬉しい駿介からの告白だ。
だけど、不可解さとうれしさがごちゃ混ぜになってしまった俺は、ただただ真っ赤な顔で呆けたように駿介を見つめることしか出来なかった。
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