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第三章

確信犯なのか、その声は!

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寝転ぶ俺の両脇に手をついて、覆いかぶさるような形で駿介がじっと俺を見ている。その瞳の真っ直ぐだけど熱のこもったそれが、ざわざわと俺を落ち着かなくさせていた。

「しゅ……、つっ」

何だかこのまま受け入れてしまっていたら、俺がいつもニヤニヤドキドキしながら読んでいるあのシーンに突入してしまいそうだと思ったから、食堂に行かなきゃと言おうと思ったのに……。駿介が更に体を密着させて、俺の頬から首筋を撫でるものだから言葉が詰まってしまった。

「少しだけ、いいか?」
「……っ、」

吐息まじりの甘い声で俺の耳もとで囁くものだから、びくんと身体が震えてまた変な電流が走る。
恥ずかしくてギュッと目をつぶると、身体にも自然と力が入った。

「真紀……?」
「……、やっ」

もう、もうその声……!
やだ、もう。それどうにかして……っ。

「……俺に触られるのは嫌か?」
「違……、その声っ」
「……声?」

無意識なのか確信犯なのか、駿介は囁くような甘い声を止めようとはしない。おかげで俺は、勝手に一人で感じている変な奴になってしまっている。

「真紀……?」
「だから……、そんな声で耳許で囁くなっ……」
「……そんな声って?」
「……っ」

声色が少し変わった。甘い声はそのままだけど、その中に明らかにうれしさが混じっている。
……しかも駿介の重みがさっきより増しているぞ?

「真紀?」

両肘をついた駿介が、俺の両頬を挟むように少し持ち上げた。そして返事を催促するように俺の目をじっと見る。

もう本当に、もう本当にこいつヤダ。

「好きだ……」
「ふわわ……っ」

駿介のバカヤロー!
甘さ倍増に吹き込むように囁くから、また変な声が出ちゃったじゃないか!

焦る俺を横目に、駿介の顔が更に甘くほころぶ。

「可愛いな。好きだよ、真紀」
「駿……」

続く言葉は駿介の唇によって塞がれた。
甘くしっとり柔らかい。そんな駿介とのキスに俺が溺れないわけがなく、いっぱいいっぱいなのに俺の震える指先は、駿介のシャツをしっかりと握っていた。
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