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第三章
二人三脚の練習はくっつくものだよ
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うう……。こんなにぴったり密着しているのは恥ずかしいよ。
ドキドキしながら、硬く引き締まった駿介の腕に支えられて必死で走った。その横を、時おり俺たちと同じような二人組が走って行くのが目に入っても妄想に駆られる余裕もない。
走って汗を掻いて体温が上がると同時に、駿介の男らしいうえに色っぽい匂いに包まれて、クラクラする……。
これって作者の設定なんだろうか? だとしたら、やっぱり駿介はかなり作者にも気に入られているに違いないよな。だってリアルにこんないい匂いをさせている奴なんて、出会ったことなんてないもん。
「真紀……」
困惑したような声で俺を呼び、駿介はゆっくりとスピードを落とし立ち止まった。
「えっ、あっ……」
他人の妄想に浸っている余裕は無かったけど、意識が駿介の匂いに向いていて、俺は知らない内に駿介に抱きつくような形になっていた。
「ごっ、ごめん。……うわっ!」
「おっと」
慌てて駿介から体を離そうとしたせいで、危うく二人とも転びそうになった。もちろん駿介が受け止めてくれたので、そんな無様な事にはならなかったんだけど。
「俺としては真紀の方から積極的になってくれるのは嬉しいんだけど、これじゃ走りにくいだろ?」
「ご、ごめ……」
「謝るなって。……嬉しいって言ったろ?」
うわわわわ。
もうこいつ嫌。何、この甘い匂いに甘い声。今ビクンってなって、体に電流が走っちゃったよ。
……腰、砕けそう。
俺はこんなにおたおたしているのに、駿介は本当に楽しそうだ。
「見せつけるなあ」
突然間近から別の声が割り込んできてびっくりした。振り返ると谷口が立っていて、ギョッとした俺は思わず駿介に余計にしがみついてしまった。
「驚かせるなよ。何か用か?」
駿介の嫌そうな表情に、谷口は楽しそうに笑う。
「いや? 練習終えて戻るところだ。……そしたらいちゃついてる二人が目に入っちゃってさ」
「……そう見えるんなら、邪魔するな」
「へーえ?」
駿介の言葉に、谷口はまるで値踏みをするように俺を見た。
「お前、真紀に変なちょっかい掛けたら許さないからな」
「……っ」
駿介が、俺の肩に回した掌に力を込めた。駿介の、俺を守りたいという気持ちが直に伝わってきて、こんな事態だと言うのに心臓がまたドキドキと言い始める。
「ああ……、なるほどね」
「なに?」
「いーや? 邪魔したな」
谷口は嫌な笑みを残し、手を振り去っていった。
ドキドキしながら、硬く引き締まった駿介の腕に支えられて必死で走った。その横を、時おり俺たちと同じような二人組が走って行くのが目に入っても妄想に駆られる余裕もない。
走って汗を掻いて体温が上がると同時に、駿介の男らしいうえに色っぽい匂いに包まれて、クラクラする……。
これって作者の設定なんだろうか? だとしたら、やっぱり駿介はかなり作者にも気に入られているに違いないよな。だってリアルにこんないい匂いをさせている奴なんて、出会ったことなんてないもん。
「真紀……」
困惑したような声で俺を呼び、駿介はゆっくりとスピードを落とし立ち止まった。
「えっ、あっ……」
他人の妄想に浸っている余裕は無かったけど、意識が駿介の匂いに向いていて、俺は知らない内に駿介に抱きつくような形になっていた。
「ごっ、ごめん。……うわっ!」
「おっと」
慌てて駿介から体を離そうとしたせいで、危うく二人とも転びそうになった。もちろん駿介が受け止めてくれたので、そんな無様な事にはならなかったんだけど。
「俺としては真紀の方から積極的になってくれるのは嬉しいんだけど、これじゃ走りにくいだろ?」
「ご、ごめ……」
「謝るなって。……嬉しいって言ったろ?」
うわわわわ。
もうこいつ嫌。何、この甘い匂いに甘い声。今ビクンってなって、体に電流が走っちゃったよ。
……腰、砕けそう。
俺はこんなにおたおたしているのに、駿介は本当に楽しそうだ。
「見せつけるなあ」
突然間近から別の声が割り込んできてびっくりした。振り返ると谷口が立っていて、ギョッとした俺は思わず駿介に余計にしがみついてしまった。
「驚かせるなよ。何か用か?」
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「いや? 練習終えて戻るところだ。……そしたらいちゃついてる二人が目に入っちゃってさ」
「……そう見えるんなら、邪魔するな」
「へーえ?」
駿介の言葉に、谷口はまるで値踏みをするように俺を見た。
「お前、真紀に変なちょっかい掛けたら許さないからな」
「……っ」
駿介が、俺の肩に回した掌に力を込めた。駿介の、俺を守りたいという気持ちが直に伝わってきて、こんな事態だと言うのに心臓がまたドキドキと言い始める。
「ああ……、なるほどね」
「なに?」
「いーや? 邪魔したな」
谷口は嫌な笑みを残し、手を振り去っていった。
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