上 下
31 / 80
第三章

甘すぎる……

しおりを挟む
「じゃあ、そろそろ行こうぜ」
「うん」

廊下を歩きながら駿介が手を差し出した。手をつないで歩こうと言ってくれているのだと分かったけれど、やっぱりちょっと恥ずかしいんだよな。手を伸ばすと、パシッとつかまれてギュッと握られた。

駿介は、やっぱりいつでもどこでも堂々としている。居心地悪いのは俺だけだ。
だってさ、みんながじろじろ見て行くんだよ。不釣り合いだって言われているようで、やっぱり気になる。

「こらっ、どこ見てるんだよ」
「だって……」
「他の男のことなんて気にしないでいい。真紀は俺のことだけ見てろ」
「…………」

カッコ良すぎる言葉に思わず固まる。チラッと駿介の顔を見ると、それはそれは爽やかに笑っている。

なんだかなあ。イケてる奴は、どんなに恥ずかしい言葉でも様になるから嫌になる。

「真紀、自覚なさ過ぎ」
「え? 何がだよ」
「可愛いって言ったろ?」
「誰もそんなこと思っちゃいないよ」
「そうかあ? 本当にそうなら、俺は安心だけど」

そう言って嬉しそうに笑う駿介が、可愛いけど恥ずかしい。
だってそんな風に思う奴なんて、多分駿介以外にはいないだろうから。

グラウンドに下りると、普通に部活動をしている奴と俺たちみたいに体育祭の練習に励む奴らが結構いた。あちらこちらで、まるでいちゃつくように密着している。

……美味しい光景だ。

「コラ」
「うわっ!」

よそ見をしながらニヤニヤしていると、グイッと肩を引き寄せられ抱きしめられる格好になった。

「お前本当に変な癖があるな。仲良さそうな奴らを見るのは楽しいか?」
「えっ、あっ、そりゃ楽しそうな人を見れば……っ」
「ふうん……」

……?

猫のように目を眇めた駿介が、俺の隣に並び足首をひもで結んだ。そして俺の腰に腕を回し、ギュッと抱き寄せる。

「俺は他人のことより、こっちの方がずっといい」
「しゅ……、駿介」
抱き寄せすぎ、腕の力が強すぎるよ!

「ドキドキ言ってるな。可愛い。早歩きするぞ」
「えっ、うわっ」

すぐによろけだす俺を、駿介は楽しそうに更に腕の力を強めた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!

柑橘
BL
王道詰め合わせ。 ジャンルをお確かめの上お進み下さい。 7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです! ※目線が度々変わります。 ※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。 ※火曜日20:00  金曜日19:00  日曜日17:00更新

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

俺の愉しい学園生活

yumemidori
BL
ある学園の出来事を腐男子くん目線で覗いてみませんか?? #人間メーカー仮 使用しています

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

処理中です...