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第三章

同じ境遇?

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例えば、ここに来てすぐに三森と出会っていて、しかも俺と同じ腐男子で、妄想が過ぎてこの世界に入り込んでしまったという状況だったのなら、仲間だって思えたかもしれないけど。
今の俺は駿介の事が好きだし、しかもどうやらこいつも駿介狙いみたいだから、どう転んでも仲間意識は持てそうにない。

「それを言うなら、三森もだよな?」
「認めるんですね? で、どうやってここに入って来たんですか?」
「……お前こそ、どうやって入って来たんだよ?」

「知りませんよ。ここで目が覚めて気が付いたんですから。……だけど、起きる寸前に『どうしよう、間違えた』って女の人の声が聞こえて来たから、誰かにここに連れて来られたんじゃないかって思ってますけど」

「……声?」
「そうです。……芹沢先輩の時はどうだったんですか?」
「俺の時はそんな物なかったな。気が付いたら部屋のベッドの上だった」
「そうですか」
「……なあ、お前も腐男子なのか?」
「……どうでしょうね。僕は完ぺきゲイですけど」
「そうなんだ……」
「芹沢先輩は違うんですか? 駿介と付き合ってますよね」
「そんなつもりは無かったよ。第一俺は、樹に駿介と付き合ってもらいたいと思ってたんだもん」
「へえ? だったら僕に駿介下さいよ」
「は? 何でだよ」
「おい、真紀……。あ?」

俺がトイレからなかなか戻ってこないのを心配したのか、駿介が俺を呼びに来ていた。そして、三森がそこにいるのに驚いたようだった。
三森はそんな駿介に苦笑して、「じゃあ、お先に」と言ってトイレを出て行った。

「何話してたんだ?」
「……あー、うん……。ライバルだって」
「ライバル? 何の?」

駿介の事だから気づいているんじゃないの?
俺は無言で駿介を指差した。

「なりっこないだろ。あいつには全然何も感じない」
「そう、なの……?」
「なんだ? 自信ないのか?」
「それは、だって……」

顔だって性格だって、俺は並みだって自覚あるし。取り柄と言えるものなんて何一つ無い。そんな俺がこんなイケメンに、ずっと好きでいてもらえる自信なんてないよ。

「しょうがないなあ……。それじゃあ真紀には、俺に愛されてるっていう自信を持ってもらおうか」
「……え?」

甘い声音で囁くように言う駿介に、体の中を痺れるような電流が走る。

恐る恐る見上げたその表情は、声音通りの甘く色っぽいものだった。
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