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第二章

両想いです

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「真紀……、真紀……」

うわ言のように俺の名を呼びながら、抱きしめる腕の力がだんだん強くなる。

ちょ、ちょっとこれは苦しいぞ。
パンパンと駿介の背中を何度も叩いて訴えて、やっと腕の力が緩み始めた。

「悪い……。嬉し過ぎて我を忘れた」

そう言って、間近で幸せそうに笑うこの世界で一番のイケメンに、俺は思わずポーッと見惚れてしまった。

「真紀?」
「う……、もう。は……、恥ずかしいからそんなにくっつくな」
「恥ずかしい? 何で?」

あー、なんだよその嬉しそうな顔。しかも俺の背中に回した手、まだ解いてないし。

「何で?」

どれだけ舞い上がってるのか、駿介は見たことも無いような極上な笑顔で、再度俺に同じ質問をぶつけた。
まったく……。

「だ……誰だって、好きな奴とこんなに密着してたら恥ずかしいだろ。しかも駿介、めっちゃカッコいいし」
「俺は嬉しいの方が強いけどな。真紀とこんなに早く、両想いになれるだなんて思ってなかったから」

静かにほほ笑む駿介のその笑顔があまりにも綺麗で、俺の胸の奥でトクンと小さく音が鳴った。

やっぱり俺、駿介のこと好きだなあ。駿介が幸せそうだと、俺も嬉しい。
あ、もちろん三森なんかと一緒だったら、めっちゃ嫌だけど。

「さて、食堂に行くか」
「あ、ほんとだ。急がなきゃ」

せっかく駿介が起こしに来てくれたのに、いろいろと余分な事をしていたせいで結局はいつもと変わらない時間になってしまった。

朝食を受け取りテーブルに着いた時には、青島と樹が食べ終わり席を立つところだった。

「何だ、なんだぁー。今頃食事?」
「あ、樹。おはよう」
「おはよ。……駿介、こんなんじゃあさー、俺が起こしに行くのと変わりなくない?」
「そうか?」
「そうだよー。だから柏木と同室にさせちゃえば ――」
「その話は無しだ。真紀の面倒は俺が見る。な?」

駿介は樹の提案をきっぱりと否定して、最後に同意を求めて俺を見た。
毎朝毎朝不細工な顔を駿介に見られるのかと思うとかなり複雑な気持ちだけど、でもだからと言って駿介の気持ちを無碍にしてまで柏木と同室になりたいわけじゃない。

「うん。今日はその……、特別にちょっと色々あったから遅くなったけど、明日からは大丈夫だと思うから」
「色々って、まさか……」

樹がびっくりしたように目を丸くして(可愛いな、おい!)、俺と駿介を交互に見た。コクリと頷く俺を見て、二人は更に目を丸くする。

「うわっ、そうなんだお前! 良かったな、三森様様だ!」
青島がそう言いながら、駿介の背中をバシバシ叩く。

なんてこと言うんだよ、こいつは!

「そっかー。駿介は格好いいし、いい奴だけど……。良過ぎてライバルがうじゃうじゃ居るからなあ」
「心配するな。俺は浮気はしないし、真紀に変なちょっかいは出させない」

一途で格好いい駿介らしい発言に、俺はドキドキし、樹と青島は『ああ、はいはい。お前はそういう奴だよな』って顔をしていた。
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