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第二章

もう誤魔化せない

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しばらくほぼ呆然といった感じで俺を見つめていた駿介だったけれど、周りのざわざわとした騒がしさで我に返った。ぎゅっと俺の手を握り、スタスタと食堂めがけて速足で歩く。

ううっ……。そうだよな。こんな時間がない時にあんなこと言われても困っちゃうよな。

間の抜けた自分の容量の悪さに恥ずかしくなり、何の抵抗もせずに駿介に引きずられていたら食堂を目前に駿介はいきなり左に曲がった。そしてズンズン進み、どんどん食堂から離れていく。

タンッ。

え……?
ええっ?

「本当にお前は質が悪い」
「駿……介」

近い……、近いぃ……。

これはいわゆる壁ドン状態……。
しかも今度は、鼻先がくっ付き合いそうな近さだ。

「好きだ」
「駿介……」
「好きだ―」

駿介の掌が、するりと俺の頬を撫でる。
ドクンドクンと煩く鳴り響く心臓の音。体温が上昇して手が震える。
だけど―、

どうしよう、俺……。泣きたいくらいに嬉しい……。

「俺も……、俺も駿介のこと好き……」
みたいだと続けようとした唇を、駿介に塞がれた。

何度も啄まれ、びっくりして硬直する俺の少し開いた唇の隙間から、駿介の熱い舌が入り込んできた。

上顎を舐め内頬をなぞり、熱く舌を絡める。

な、何だよ。この上級なキス。小説には駿介のキスシーンなんて書いてなかったぞ!

ぼーっとする。思考が止まる。気持ちい……。

「ふ……、っ、ん」

……!! 
な、何だ今の? 俺の声!?

あ……。

キスが更に深くなった。
駿介は壁に押し付けていた俺の背中に腕を回し、さらに首裏を支えて俺の体を仰け反らせる。そんな状態で俺の口腔内を貪るものだから、いっぱいいっぱいの俺は駿介の背中に縋り付くしか術はない。
震える指で必死で駿介のシャツを掴んで ……、やっと長いキスから解放された。

「真紀……」

うれしそうに、それでいて熱のこもった目で、駿介が俺をじっと見ている。

「…………」

なんだよ、もう。すげー恥ずかしい。
顔もすごい熱いから、俺の顔はきっと真っ赤だ。

「両想いだと思ってもいいんだよな?」

う……。改めて念押しされると……。

「…………」
「好きだよ、真紀」

真剣な顔。射貫くように俺を見続けている。――そしてその中でチラつく、少し不安な表情。

ああ……、もう。

こんなつもりじゃなかったけど……。

「……好きだよ。俺も……、駿介のことが好きだ」

そう言った途端、駿介に凄い力で抱きしめられた。
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