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第二章

これは恋?

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「ふうっ……」

――寝起きでも可愛い。

顔を洗い終わり鏡を見て、ため息をついた。

可愛くなんてねえよ……。
俺なんかよりもずっと、樹や三森の方がずっと可愛い。

はうっ……!
なんでここで三森……。

「真紀ー、まだか?」
「あ、ごめん。済んだ」

ついつい余計な事を考えてしまっていた。俺は慌てて洗面所から飛び出して、制服に着替えようとシャツをとった。

「飯、遅くなるよな。駿介、先に行ってていいよ」
「いいよ。待ってる」
「え? そうなの? じゃあ、急ぐ」

待ってると言ってもらって、素直にうれしかった。普段の倍速で動き、ものすごい勢いで着替えを完了した。
くるんと振り向くと、駿介は向こう側を向いている。

「お待たせ。食堂行こうか」
「おう」

……こういうところ、やっぱり格好いいんだよな。
小説の中でも樹の着替えシーンの時には、自分を抑えられなくなると困るからって理由で、今みたいに後ろを向いていた。

あ……。心の奥がきゅうんってした。
だってきっと今も、その時と同じ理由なんだよね。

……やっぱり三森なんかに渡したくないな。

食堂へ向かう中、多くの人たちとすれ違う。その中のほとんどの人達が、駿介に気が付き会釈をしたり挨拶をしたり。そしてその大半が、その後に俺にきつい視線を向けてよこした。

「真紀」
「何?」

「無いと思いたいが、……もし万が一嫌がらせみたいなことを受けたら、俺にちゃんと言ってくれ。俺はお前を諦める気はないし、誰にもやるつもりないから」

「駿介……」

駿介はすごく真面目な顔でそう言った。端正な顔の澄んだ瞳だ。

はうう……。
樹に対するこういう真摯な態度が好きだったんだよな。それを今、俺がされてるわけで……。

無意識に、俺は手を伸ばして駿介の腕を掴んだ。掴んで、ぎゅっと自分に引き寄せる。
駿介は、すごく驚いた表情で俺を振り返った。

「真紀?」

本来の目的とは全然違う。自分が恋人になりたかったんじゃなくて、目の前で駿介と樹のいちゃいちゃが見たいだけだったのに。
戸惑うし、戸惑ってわけわかんないけど……。

「駿介には幸せになってもらいたいって思ってた。だけど三森には渡したくない。駿介と一緒にいると、嬉しかったり恥ずかしかったり戸惑ったり……。それに胸の奥がきゅうんってなるんだ。これって……」

「…………」
「これって……、恋なのかな?」

おずおずと見上げた先の駿介の顔は、まるで時が止まったかのように固まっていた。
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