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第二章

こいつは誰だ

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食堂内は既に結構な人出だったけど、座れる場所がないという程のものではなかった。俺も駿介も青島も、日替わり定食を手に取って、空いてる席へと向かった。

「真紀は、甘い物は……」
「あ、好き!」

デザートに付いているカップのプリンを手に、駿介がユラユラと揺らしている。
そうだ。駿介は甘いものが苦手なキャラなんだ。プリンを貰えるチャンスとばかりに、満面の笑みで駿介を見上げる。そんな俺の顔を見て、駿介は楽しそうに俺の掌にプリンを乗っけた。

「わあい、ありがとう」

食い意地張って思わずはしゃいでしまった俺に、あちらこちらから鋭く嫉妬にまみれた眼圧が押し寄せてくる。

あ、やべっ。

「あの、こちらいいですか?」

こちらに話し掛けている声に気付き顔を上げると、すごく可愛らしい一年生らしき子が目の前に立っていた。

「どうぞ、空いてるよ」
青島の返事に、そいつはありがとうございますと言って席に着いた。それを見た他の連中も、我先にと駿介近くの空いている席を目指してやって来た。

……それにしても、この声を掛けてきた一年生は誰だろう?
こんなに可愛らしく描写されてる奴だ。モブキャラなんて考えられないけど。
だけど自慢じゃないが、この小説を隅々まで把握している俺だけど、こいつに当てはまるキャラが誰なのか思い当たらない。

誰なのか分からないモヤモヤとしたこの感じが気持ち悪くて、じいっと見つめていると目が合った。目が合うと、そいつも訝しい表情で俺を見た。……なんだ?

しばらくお互いを探るような表情で見合った後、そいつは視線を逸らし駿介を見た。

「あの……、副僚長に相談したい事があるんですけど」
「なんだ?」
「僕……、同室者の事がちょっと気になって」
「気になる? 君、名前は?」

「あ、三森智紀みつもりともきです。その……、もしかしたら思い過ごしかもしれないんですけど、石橋が僕の事をじろじろ観察してるような気がして気味が悪いんです」

「じろじろ……、ねえ」

青島が、値踏みするように三森を見る。ちょっぴり失礼なその態度に、駿介が「おいっ」とたしなめた。

「見られているような気がするだけか? 他に気になる事は?」
「いえ、今のところは……。ただ、着替える時の見られ方が気持ち悪くて」
「なるほどね……」

駿介はそう言って椅子の背にもたれかかり、腕を組んだ。

「もしかしたらその石橋は三森に気があるのかもしれないけど、他に何かされたわけではないんだろ?」
「そうですけど……」

「だったら、もう少し様子を見てみろ。変に煽るような真似をしないで、あくまで友達として接していれば相手も察してくれるかもしれないだろ?」

「そう、ですね……」

「だけどもし万が一それ以上の事があって、本気でやばいなと思ったら連絡してくれ。寮長と相談して、何らかの措置を考えるから」

「はい!」

駿介の言葉に明るく顔を上げた三森は、嬉しそうに、それでいて愛らしいはにかんだような笑みを見せた。
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