上 下
13 / 80
第二章

駿介の周り

しおりを挟む
「混むの御免だから先行くぞ」

駿介が俺の肩を抱き、谷口の厭らしい視線から隠すようにして歩き出す。

「ああ、そうだよな。俺も急ごうっと」

そう言って、谷口も俺らの後をついて歩いた。嫌な感じだ……。

だんだん食堂に近づくにつれ人が増えて来た。そしてあちらこちらから、「駿介だ」だの、「駿介様♡」と言う声が聞こえて来て、その中には「谷口さんもいる」って声まで聞こえてきた。
谷口は性格は悪いけど、見た目はそう悪くないから、確か一部の下級生に人気があったんだよな。

歩くスピードを駿介に合わせて、周りのみんながぞろぞろと歩く。おそらくみんな、出来れば駿介と同じテーブルで食べたいと思っているのだろう。

「相変わらずのご一行様だなー」

駿介の親友、青島が、向こう側からやって来て、笑いながら手を振っている。

「信也、水本先輩の用事はすんだのか?」
「ああ。大した用じゃ無かったからな」
「そうか」

水本先輩というのはここの生徒会長だ。青島は、その生徒会長に気に入られている。ただそこにBL的意味が含まれていないところは、俺にとっては不満が残るところなんだけど。

青島が、チラリと視線を後ろに向けた。鋭い眼差しで谷口の事を威嚇するようなその感じに、谷口は少しいやそうな顔をした。青島の厳つく健全な雰囲気を、谷口は苦手にしているんだ。

……こういう設定は、小説内そのままなんだけどな。

「ああ、そうそう。芹沢、駿介との二人三脚うまくいきそう?」

青島の言葉にハッとした。そうだった。元はと言えば、こいつが俺を指名したから――。

「もう! 俺なんかを推薦するから、駿介に迷惑かけてるじゃないか! 自慢じゃないけど俺は運動神経鈍いんだぞ。だから10人11脚に出ようと思っていたのにー」

「俺は別に迷惑じゃないぞ。……逆に喜んでるくらいだけど」

!!
柔らかな声で、相変わらずの直球な駿介に、俺の顔がじわじわと熱くなる。
もう本当に、何なのこいつ。

「おっ。もしかして脈ありか?」
「ちょっともう、何言ってんだよ!」

茶々を入れてくる青島に、恥ずかしさのあまり叩く振りをする。と、同時に横から手が伸びてきてグイッと青島から引き離された。

「他の男にむやみに近付くんじゃねえよ」

ふわわっ……!

耳許で、あの腰に来る低く甘い声で囁かれて腰が崩れ落ちそうになった。とっさに駿介に抱きとめてもらったけれど、恥ずかしさは半端ない。
抗議の意味で駿介を振り返って睨んだのに、逆に驚かれ、そしてすぐにうれしそうに顔を甘くほころばせた。

「胸焼けしそうだ……」

青島のからかいの声と同時に、周りの嫉妬にまみれたオーラを感じつつ、俺は食堂へと駿介に引っ張られて行った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!

柑橘
BL
王道詰め合わせ。 ジャンルをお確かめの上お進み下さい。 7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです! ※目線が度々変わります。 ※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。 ※火曜日20:00  金曜日19:00  日曜日17:00更新

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

俺の愉しい学園生活

yumemidori
BL
ある学園の出来事を腐男子くん目線で覗いてみませんか?? #人間メーカー仮 使用しています

処理中です...