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第二章
駿介の周り
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「混むの御免だから先行くぞ」
駿介が俺の肩を抱き、谷口の厭らしい視線から隠すようにして歩き出す。
「ああ、そうだよな。俺も急ごうっと」
そう言って、谷口も俺らの後をついて歩いた。嫌な感じだ……。
だんだん食堂に近づくにつれ人が増えて来た。そしてあちらこちらから、「駿介だ」だの、「駿介様♡」と言う声が聞こえて来て、その中には「谷口さんもいる」って声まで聞こえてきた。
谷口は性格は悪いけど、見た目はそう悪くないから、確か一部の下級生に人気があったんだよな。
歩くスピードを駿介に合わせて、周りのみんながぞろぞろと歩く。おそらくみんな、出来れば駿介と同じテーブルで食べたいと思っているのだろう。
「相変わらずのご一行様だなー」
駿介の親友、青島が、向こう側からやって来て、笑いながら手を振っている。
「信也、水本先輩の用事はすんだのか?」
「ああ。大した用じゃ無かったからな」
「そうか」
水本先輩というのはここの生徒会長だ。青島は、その生徒会長に気に入られている。ただそこにBL的意味が含まれていないところは、俺にとっては不満が残るところなんだけど。
青島が、チラリと視線を後ろに向けた。鋭い眼差しで谷口の事を威嚇するようなその感じに、谷口は少しいやそうな顔をした。青島の厳つく健全な雰囲気を、谷口は苦手にしているんだ。
……こういう設定は、小説内そのままなんだけどな。
「ああ、そうそう。芹沢、駿介との二人三脚うまくいきそう?」
青島の言葉にハッとした。そうだった。元はと言えば、こいつが俺を指名したから――。
「もう! 俺なんかを推薦するから、駿介に迷惑かけてるじゃないか! 自慢じゃないけど俺は運動神経鈍いんだぞ。だから10人11脚に出ようと思っていたのにー」
「俺は別に迷惑じゃないぞ。……逆に喜んでるくらいだけど」
!!
柔らかな声で、相変わらずの直球な駿介に、俺の顔がじわじわと熱くなる。
もう本当に、何なのこいつ。
「おっ。もしかして脈ありか?」
「ちょっともう、何言ってんだよ!」
茶々を入れてくる青島に、恥ずかしさのあまり叩く振りをする。と、同時に横から手が伸びてきてグイッと青島から引き離された。
「他の男にむやみに近付くんじゃねえよ」
ふわわっ……!
耳許で、あの腰に来る低く甘い声で囁かれて腰が崩れ落ちそうになった。とっさに駿介に抱きとめてもらったけれど、恥ずかしさは半端ない。
抗議の意味で駿介を振り返って睨んだのに、逆に驚かれ、そしてすぐにうれしそうに顔を甘くほころばせた。
「胸焼けしそうだ……」
青島のからかいの声と同時に、周りの嫉妬にまみれたオーラを感じつつ、俺は食堂へと駿介に引っ張られて行った。
駿介が俺の肩を抱き、谷口の厭らしい視線から隠すようにして歩き出す。
「ああ、そうだよな。俺も急ごうっと」
そう言って、谷口も俺らの後をついて歩いた。嫌な感じだ……。
だんだん食堂に近づくにつれ人が増えて来た。そしてあちらこちらから、「駿介だ」だの、「駿介様♡」と言う声が聞こえて来て、その中には「谷口さんもいる」って声まで聞こえてきた。
谷口は性格は悪いけど、見た目はそう悪くないから、確か一部の下級生に人気があったんだよな。
歩くスピードを駿介に合わせて、周りのみんながぞろぞろと歩く。おそらくみんな、出来れば駿介と同じテーブルで食べたいと思っているのだろう。
「相変わらずのご一行様だなー」
駿介の親友、青島が、向こう側からやって来て、笑いながら手を振っている。
「信也、水本先輩の用事はすんだのか?」
「ああ。大した用じゃ無かったからな」
「そうか」
水本先輩というのはここの生徒会長だ。青島は、その生徒会長に気に入られている。ただそこにBL的意味が含まれていないところは、俺にとっては不満が残るところなんだけど。
青島が、チラリと視線を後ろに向けた。鋭い眼差しで谷口の事を威嚇するようなその感じに、谷口は少しいやそうな顔をした。青島の厳つく健全な雰囲気を、谷口は苦手にしているんだ。
……こういう設定は、小説内そのままなんだけどな。
「ああ、そうそう。芹沢、駿介との二人三脚うまくいきそう?」
青島の言葉にハッとした。そうだった。元はと言えば、こいつが俺を指名したから――。
「もう! 俺なんかを推薦するから、駿介に迷惑かけてるじゃないか! 自慢じゃないけど俺は運動神経鈍いんだぞ。だから10人11脚に出ようと思っていたのにー」
「俺は別に迷惑じゃないぞ。……逆に喜んでるくらいだけど」
!!
柔らかな声で、相変わらずの直球な駿介に、俺の顔がじわじわと熱くなる。
もう本当に、何なのこいつ。
「おっ。もしかして脈ありか?」
「ちょっともう、何言ってんだよ!」
茶々を入れてくる青島に、恥ずかしさのあまり叩く振りをする。と、同時に横から手が伸びてきてグイッと青島から引き離された。
「他の男にむやみに近付くんじゃねえよ」
ふわわっ……!
耳許で、あの腰に来る低く甘い声で囁かれて腰が崩れ落ちそうになった。とっさに駿介に抱きとめてもらったけれど、恥ずかしさは半端ない。
抗議の意味で駿介を振り返って睨んだのに、逆に驚かれ、そしてすぐにうれしそうに顔を甘くほころばせた。
「胸焼けしそうだ……」
青島のからかいの声と同時に、周りの嫉妬にまみれたオーラを感じつつ、俺は食堂へと駿介に引っ張られて行った。
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