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第一章
駿介の告白
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樹と駿介の密着練習をニヤニヤと堪能し、俺ももう少し練習をした後寮に戻ることになった。
「じゃあな、お疲れ」
樹の部屋は階段を上がって右側にある。俺の部屋は逆に左に曲がるので、階段を上ったところで樹は手を振って部屋へと向かった。
「お疲れ、付き合ってくれて悪かったな」
駿介もそれに手を振って答えた。
「駿介、駿介!」
駿介の腕をパシパシと叩いた。
「なんだ?」
「樹、樹のこと送って行けよ」
「何で?」
「なんでって、二人っきりになれるチャンスじゃん」
「はあ?」
駿介はせっかくの俺の申し出を、さも嫌そうな顔で返した。
……何で?
駿介は俺の顔をまじまじと見た後、無言で俺の手を引っ張って俺の部屋の前まで来た。そして勝手に鍵を開けて中に入る。
あ、合い鍵!
何だか知らないけど一変して不穏な空気を漂わせる駿介に、気圧されて文句も言えない。そのまま固まって駿介を見ていると、ズカズカと駿介に近付かれて気が付いたら壁際に追いやられていた。
「ええっと……」
「お前もしかして、俺と樹をくっ付けようとしてる?」
「……もしかしなくても」
俺がそう返事をすると、駿介の表情がますます怖くなる。
「何でだ?」
「だって駿介、樹のこと好きだろ?」
「はあ?」
「ええっ? 違うの?」
「違う!」
はああ!? 何それ!
なんでそんな展開になってるの!?
「だってだって、樹のこと一番大切に思ってたんじゃないのか? いつもさりげなく気に掛けたりしてたじゃないか」
イケメンで頭が良くて優しくて、それなのに一途に樹を思っている駿介を応援してたのに。
じっと駿介を見つめていると、大きなため息を吐かれた。
「……いつの話しだよ」
「え?」
「確かに、樹のこと好きだった時期もあったよ。だけどそれは去年までの話しだ。今は……、今は真紀と出会ってからは、ずっとお前の事を見ている」
「え……?」
お、俺? ええっ!?
マジでびっくりして、目と口をぽかーんと開ける。
そんな間抜けな顔で駿介を見続けていたら、駿介はひどくがっかりしたような顔になった。
「参ったな……。俺の気持ちは全く伝わってなかったってわけだ」
いやだって、ここでの展開は一体どうなってるんだよ? だって駿介は一途に樹の事を好きだったのに。
……てか、駿介が俺を好き?
ええっ? ええええーーーっ?
目の前ではおそろしく綺麗で格好いい男が俺の事をじっと見ている。色っぽく、しかも真剣な表情で。
や、ヤバくね?
傍観者のはずの俺が、何でこんな事になってるの?
「少しずつ距離を縮めていこうだなんてまどろっこしい事は止めにした。真紀――」
「は、はい?」
「攻めていくから。――覚悟しろよ」
「…………」
壮絶という言葉が似合いそうな色っぽい表情で、駿介が甘く低く囁く。
俺はへなへなと崩れ落ちそうになるのを一生懸命踏ん張って、ただただ呆然と駿介を見た。
「じゃあな、お疲れ」
樹の部屋は階段を上がって右側にある。俺の部屋は逆に左に曲がるので、階段を上ったところで樹は手を振って部屋へと向かった。
「お疲れ、付き合ってくれて悪かったな」
駿介もそれに手を振って答えた。
「駿介、駿介!」
駿介の腕をパシパシと叩いた。
「なんだ?」
「樹、樹のこと送って行けよ」
「何で?」
「なんでって、二人っきりになれるチャンスじゃん」
「はあ?」
駿介はせっかくの俺の申し出を、さも嫌そうな顔で返した。
……何で?
駿介は俺の顔をまじまじと見た後、無言で俺の手を引っ張って俺の部屋の前まで来た。そして勝手に鍵を開けて中に入る。
あ、合い鍵!
何だか知らないけど一変して不穏な空気を漂わせる駿介に、気圧されて文句も言えない。そのまま固まって駿介を見ていると、ズカズカと駿介に近付かれて気が付いたら壁際に追いやられていた。
「ええっと……」
「お前もしかして、俺と樹をくっ付けようとしてる?」
「……もしかしなくても」
俺がそう返事をすると、駿介の表情がますます怖くなる。
「何でだ?」
「だって駿介、樹のこと好きだろ?」
「はあ?」
「ええっ? 違うの?」
「違う!」
はああ!? 何それ!
なんでそんな展開になってるの!?
「だってだって、樹のこと一番大切に思ってたんじゃないのか? いつもさりげなく気に掛けたりしてたじゃないか」
イケメンで頭が良くて優しくて、それなのに一途に樹を思っている駿介を応援してたのに。
じっと駿介を見つめていると、大きなため息を吐かれた。
「……いつの話しだよ」
「え?」
「確かに、樹のこと好きだった時期もあったよ。だけどそれは去年までの話しだ。今は……、今は真紀と出会ってからは、ずっとお前の事を見ている」
「え……?」
お、俺? ええっ!?
マジでびっくりして、目と口をぽかーんと開ける。
そんな間抜けな顔で駿介を見続けていたら、駿介はひどくがっかりしたような顔になった。
「参ったな……。俺の気持ちは全く伝わってなかったってわけだ」
いやだって、ここでの展開は一体どうなってるんだよ? だって駿介は一途に樹の事を好きだったのに。
……てか、駿介が俺を好き?
ええっ? ええええーーーっ?
目の前ではおそろしく綺麗で格好いい男が俺の事をじっと見ている。色っぽく、しかも真剣な表情で。
や、ヤバくね?
傍観者のはずの俺が、何でこんな事になってるの?
「少しずつ距離を縮めていこうだなんてまどろっこしい事は止めにした。真紀――」
「は、はい?」
「攻めていくから。――覚悟しろよ」
「…………」
壮絶という言葉が似合いそうな色っぽい表情で、駿介が甘く低く囁く。
俺はへなへなと崩れ落ちそうになるのを一生懸命踏ん張って、ただただ呆然と駿介を見た。
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