腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ

文字の大きさ
上 下
10 / 80
第一章

二人三脚の練習 2

しおりを挟む
「それじゃ、続き始めようか」
「うん」

良介が樹の腰に手を廻し、二人でカウントを取って走り出した。「1,2,1,2」と掛け声を掛けながら。

あ、始まった。
「…………」
まあ、あれはあれでいいんだけどさ、やっぱり駿介の方がなあ……。

「ほら、ボサッとしてないで。俺らも行くぞ」
「あ、うん」
「あ、待て。やっぱ、お前俺の右側に回れ」
「いいけど。何で?」
「俺右利きだから、何かあった時に真紀のこと支えられるだろ」

イケメン……!!

あーもう、あーもう! 聞いた?
俺じゃなくて樹に言ってもらいたいよ! く~っ。

「おい?」

一人感極まっていたら、駿介に催促されてしまった。慌てて右側に回り込み、駿介と密着してお互いの腰に手を廻す。

うわ~、やっぱ緊張するわー。実生活でも、こんなイケメンと密着する事なんてそうそう無いもんな。
しかも想像していた通りの逞しい体だ。……ヤバいな。緊張通り越してドキドキしてきた。

「じゃあまずは外側の足から出してみようか」
「わかった」
「よし、行くぞ。せーの! 1,2,1,2……。……もう少し速く走れないか?」
「お、おう」

1,2,1,2とお互いに掛け声を掛け合って前へと進む。身長の差があり過ぎるのか、なかなか歩調が合わなかった。
…… 意外と難しいものなんだな。

俺らの隣では、やっぱり樹が良介に支えられながら苦戦していた。

時々お互いのものをチェックしながら何回か練習している最中に、樹たちの動きが止まった。良介が樹に何かを言った後、俺らの方へと振り向く。

「悪い。俺そろそろ部活の時間だから、行くな」
「ああ、もうそんな時間か。おう、お疲れ」

俺ら三人は手を振って良介を見送った。チラッと見た樹の表情は、やっぱり少しさみしそうだ。
俺がじっと見ていたのに気が付いた樹が、笑いながら話し掛けた。

「思ってたよりも結構大変だな、これ」
「あ、うん。樹もそう思う?」
「思うよー」
「簡単に出来ちまったら、運営側としても面白みがないだろ?」
「面白味がないって……。それは運動神経のいい奴らが考えることだよ」

駿介の発言に樹が反論する。俺も同意だ。

「なあ、これってもしかして、身長差が無い方がやりやすいんじゃないのか?」
「んん? そうなのかな?」

お、可愛いっ!
樹の小首を傾げた姿は秀逸だ。

「なあなあ、俺より樹の方が背高いだろ? ちょっと駿介と組んでやって見せてよ」
「え、なんで?」
「コツつかみたいんだよな。自分だと客観的に見れないから、駿介のペースも観察してみたい」
「でもコツって言うのは、自分で何度も練習してみないと……」
「もちろん分かってる。だから一回だけ、一回だけ!」

両手をパンと合わせて拝み倒した。その甲斐あって二人は訝しい顔をしながらも、俺の頼みを聞いてくれた。ヨッシャ!

……俺の目の前で、駿介と樹が互いの腰に手を回し合って密着している。

BLの神様ありがとう!!

俺は歓喜と妄想の渦の中で、一人幸せに酔いしれたのだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。 浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。 攻め:浅宮(16) 高校二年生。ビジュアル最強男。 どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。 受け:三倉(16) 高校二年生。平凡。 自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

処理中です...