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第一章
二人三脚の練習 2
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「それじゃ、続き始めようか」
「うん」
良介が樹の腰に手を廻し、二人でカウントを取って走り出した。「1,2,1,2」と掛け声を掛けながら。
あ、始まった。
「…………」
まあ、あれはあれでいいんだけどさ、やっぱり駿介の方がなあ……。
「ほら、ボサッとしてないで。俺らも行くぞ」
「あ、うん」
「あ、待て。やっぱ、お前俺の右側に回れ」
「いいけど。何で?」
「俺右利きだから、何かあった時に真紀のこと支えられるだろ」
イケメン……!!
あーもう、あーもう! 聞いた?
俺じゃなくて樹に言ってもらいたいよ! く~っ。
「おい?」
一人感極まっていたら、駿介に催促されてしまった。慌てて右側に回り込み、駿介と密着してお互いの腰に手を廻す。
うわ~、やっぱ緊張するわー。実生活でも、こんなイケメンと密着する事なんてそうそう無いもんな。
しかも想像していた通りの逞しい体だ。……ヤバいな。緊張通り越してドキドキしてきた。
「じゃあまずは外側の足から出してみようか」
「わかった」
「よし、行くぞ。せーの! 1,2,1,2……。……もう少し速く走れないか?」
「お、おう」
1,2,1,2とお互いに掛け声を掛け合って前へと進む。身長の差があり過ぎるのか、なかなか歩調が合わなかった。
…… 意外と難しいものなんだな。
俺らの隣では、やっぱり樹が良介に支えられながら苦戦していた。
時々お互いのものをチェックしながら何回か練習している最中に、樹たちの動きが止まった。良介が樹に何かを言った後、俺らの方へと振り向く。
「悪い。俺そろそろ部活の時間だから、行くな」
「ああ、もうそんな時間か。おう、お疲れ」
俺ら三人は手を振って良介を見送った。チラッと見た樹の表情は、やっぱり少しさみしそうだ。
俺がじっと見ていたのに気が付いた樹が、笑いながら話し掛けた。
「思ってたよりも結構大変だな、これ」
「あ、うん。樹もそう思う?」
「思うよー」
「簡単に出来ちまったら、運営側としても面白みがないだろ?」
「面白味がないって……。それは運動神経のいい奴らが考えることだよ」
駿介の発言に樹が反論する。俺も同意だ。
「なあ、これってもしかして、身長差が無い方がやりやすいんじゃないのか?」
「んん? そうなのかな?」
お、可愛いっ!
樹の小首を傾げた姿は秀逸だ。
「なあなあ、俺より樹の方が背高いだろ? ちょっと駿介と組んでやって見せてよ」
「え、なんで?」
「コツつかみたいんだよな。自分だと客観的に見れないから、駿介のペースも観察してみたい」
「でもコツって言うのは、自分で何度も練習してみないと……」
「もちろん分かってる。だから一回だけ、一回だけ!」
両手をパンと合わせて拝み倒した。その甲斐あって二人は訝しい顔をしながらも、俺の頼みを聞いてくれた。ヨッシャ!
……俺の目の前で、駿介と樹が互いの腰に手を回し合って密着している。
BLの神様ありがとう!!
俺は歓喜と妄想の渦の中で、一人幸せに酔いしれたのだ。
「うん」
良介が樹の腰に手を廻し、二人でカウントを取って走り出した。「1,2,1,2」と掛け声を掛けながら。
あ、始まった。
「…………」
まあ、あれはあれでいいんだけどさ、やっぱり駿介の方がなあ……。
「ほら、ボサッとしてないで。俺らも行くぞ」
「あ、うん」
「あ、待て。やっぱ、お前俺の右側に回れ」
「いいけど。何で?」
「俺右利きだから、何かあった時に真紀のこと支えられるだろ」
イケメン……!!
あーもう、あーもう! 聞いた?
俺じゃなくて樹に言ってもらいたいよ! く~っ。
「おい?」
一人感極まっていたら、駿介に催促されてしまった。慌てて右側に回り込み、駿介と密着してお互いの腰に手を廻す。
うわ~、やっぱ緊張するわー。実生活でも、こんなイケメンと密着する事なんてそうそう無いもんな。
しかも想像していた通りの逞しい体だ。……ヤバいな。緊張通り越してドキドキしてきた。
「じゃあまずは外側の足から出してみようか」
「わかった」
「よし、行くぞ。せーの! 1,2,1,2……。……もう少し速く走れないか?」
「お、おう」
1,2,1,2とお互いに掛け声を掛け合って前へと進む。身長の差があり過ぎるのか、なかなか歩調が合わなかった。
…… 意外と難しいものなんだな。
俺らの隣では、やっぱり樹が良介に支えられながら苦戦していた。
時々お互いのものをチェックしながら何回か練習している最中に、樹たちの動きが止まった。良介が樹に何かを言った後、俺らの方へと振り向く。
「悪い。俺そろそろ部活の時間だから、行くな」
「ああ、もうそんな時間か。おう、お疲れ」
俺ら三人は手を振って良介を見送った。チラッと見た樹の表情は、やっぱり少しさみしそうだ。
俺がじっと見ていたのに気が付いた樹が、笑いながら話し掛けた。
「思ってたよりも結構大変だな、これ」
「あ、うん。樹もそう思う?」
「思うよー」
「簡単に出来ちまったら、運営側としても面白みがないだろ?」
「面白味がないって……。それは運動神経のいい奴らが考えることだよ」
駿介の発言に樹が反論する。俺も同意だ。
「なあ、これってもしかして、身長差が無い方がやりやすいんじゃないのか?」
「んん? そうなのかな?」
お、可愛いっ!
樹の小首を傾げた姿は秀逸だ。
「なあなあ、俺より樹の方が背高いだろ? ちょっと駿介と組んでやって見せてよ」
「え、なんで?」
「コツつかみたいんだよな。自分だと客観的に見れないから、駿介のペースも観察してみたい」
「でもコツって言うのは、自分で何度も練習してみないと……」
「もちろん分かってる。だから一回だけ、一回だけ!」
両手をパンと合わせて拝み倒した。その甲斐あって二人は訝しい顔をしながらも、俺の頼みを聞いてくれた。ヨッシャ!
……俺の目の前で、駿介と樹が互いの腰に手を回し合って密着している。
BLの神様ありがとう!!
俺は歓喜と妄想の渦の中で、一人幸せに酔いしれたのだ。
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