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第一章
戸惑う俺
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「はい、じゃあ駿介と真紀のペア決定な」
慌てふためく俺や外野のざわつきを無視して、柏木がどんどん進行していく。その様子を見た良介が勢いよく席を立ち、「俺も樹とペア!」と叫んだ。
だけどそれとほぼ同時に、数名が樹を指名したのですんなりと良介とは決まらなかった。
それでジャンケンだのくじだのと騒ぎ立て、なかなか決まらない。
「おい樹、あれ収拾しろよ」
「何言ってんだよ。元はと言えば青島が、俺なんかを推薦したからだろうが」
「しょうがないだろう。なかなか決まらなかったんだから」
「だからってなー」
「それよりいいのか? こいつと組みたいって奴がいたら、とっとと指名した方がいいぞ。友達にも好き嫌いはあるだろう?」
青島のムッとするけど的確な意見に、樹は唇を尖らせた後手を挙げた。
「俺、良介と組むから!」
大声で叫ぶように樹が宣言したことで、柏木が黒板に二人の名前を書いた。駿介と樹につられて二人三脚リレーに手を挙げたみんなは柏木に不公平だと文句を言ったのだけど、ただ進行を進めたいだけの柏木の耳には届かない。残りのみんなに容赦なくくじを引かせてメンバーを決めた後、他の競技の選出に移った。
そして注目のスウェーデンリレーは、柏木、良介、青島、駿介に決まったのだ。
「……はあ」
「大きなため息だな」
樹の隣に腰掛けている良介が、苦笑いをこぼした。
「そりゃ、ため息も吐きたくなるだろう! どう考えたって、駿介の足を引っ張ることになるんだぞ。みんなに恨まれる……」
それに何で俺なんだよ。樹と駿介が密着する貴重なシーンが見たかったのに。見れるはずだったのに……。
――二重の意味で脱力。
「大変だろうけど、決まっちゃったんだから頑張ろうよ」
にっこりと微笑む樹が可愛い。
樹がさっきほど焦っていないのは、ペアを組むのが良介だからなんだろうな。う~ん……。
「真紀」
うわっ! またそんな甘い声出して! こ、腰に来るっ……。イケボの無駄遣いするなってば!
いつの間に現れたのか、駿介がうつ伏せる俺の頭上から顔を出した。
「な、何だよ?」
ここでの駿介は俺にとっては質が悪い。字面から想像されるソレではなくて、声も態度もモロに迫って来るから、ゲイでは無いはずなのにいやにドキドキしてしまう。
だからついついそれを誤魔化そうと、威嚇するような声が出た。
「何だ? 二人三脚に指名したから、ご機嫌斜めか?」
「そ、そんなんじゃないけど」
チクショー、こいつ。本当に格好いいな。
普通に肘をついて座っただけなのに、駿介がするとまるでモデルがポーズを取ったかのようだ。
「じゃあ何?」
駿介は甘く静かなトーンを崩さない。お、落ち着かないんですけど……。
何で対象外のはずの俺に、そんな甘い態度を取るんだよ?
「真紀?」
「だ、だって! 俺足遅いし、絶対駿介の迷惑になるよ!」
俺がそう叫ぶと駿介は一瞬目を見開き、それから…… すごくホッとした表情に変わった。
「気にするな」
「気になるってば……」
「じゃあ」
駿介がズイッと前に身を乗り出した。な、何だ?
「二人て練習しよう。真紀が気にならないよう、俺が全力を尽くすよ」
「……え?」
ちょっと待て。それは樹に言うセリフじゃないのか?
またバクバクし始める心臓に、俺はいろんな意味で戸惑っていた。
慌てふためく俺や外野のざわつきを無視して、柏木がどんどん進行していく。その様子を見た良介が勢いよく席を立ち、「俺も樹とペア!」と叫んだ。
だけどそれとほぼ同時に、数名が樹を指名したのですんなりと良介とは決まらなかった。
それでジャンケンだのくじだのと騒ぎ立て、なかなか決まらない。
「おい樹、あれ収拾しろよ」
「何言ってんだよ。元はと言えば青島が、俺なんかを推薦したからだろうが」
「しょうがないだろう。なかなか決まらなかったんだから」
「だからってなー」
「それよりいいのか? こいつと組みたいって奴がいたら、とっとと指名した方がいいぞ。友達にも好き嫌いはあるだろう?」
青島のムッとするけど的確な意見に、樹は唇を尖らせた後手を挙げた。
「俺、良介と組むから!」
大声で叫ぶように樹が宣言したことで、柏木が黒板に二人の名前を書いた。駿介と樹につられて二人三脚リレーに手を挙げたみんなは柏木に不公平だと文句を言ったのだけど、ただ進行を進めたいだけの柏木の耳には届かない。残りのみんなに容赦なくくじを引かせてメンバーを決めた後、他の競技の選出に移った。
そして注目のスウェーデンリレーは、柏木、良介、青島、駿介に決まったのだ。
「……はあ」
「大きなため息だな」
樹の隣に腰掛けている良介が、苦笑いをこぼした。
「そりゃ、ため息も吐きたくなるだろう! どう考えたって、駿介の足を引っ張ることになるんだぞ。みんなに恨まれる……」
それに何で俺なんだよ。樹と駿介が密着する貴重なシーンが見たかったのに。見れるはずだったのに……。
――二重の意味で脱力。
「大変だろうけど、決まっちゃったんだから頑張ろうよ」
にっこりと微笑む樹が可愛い。
樹がさっきほど焦っていないのは、ペアを組むのが良介だからなんだろうな。う~ん……。
「真紀」
うわっ! またそんな甘い声出して! こ、腰に来るっ……。イケボの無駄遣いするなってば!
いつの間に現れたのか、駿介がうつ伏せる俺の頭上から顔を出した。
「な、何だよ?」
ここでの駿介は俺にとっては質が悪い。字面から想像されるソレではなくて、声も態度もモロに迫って来るから、ゲイでは無いはずなのにいやにドキドキしてしまう。
だからついついそれを誤魔化そうと、威嚇するような声が出た。
「何だ? 二人三脚に指名したから、ご機嫌斜めか?」
「そ、そんなんじゃないけど」
チクショー、こいつ。本当に格好いいな。
普通に肘をついて座っただけなのに、駿介がするとまるでモデルがポーズを取ったかのようだ。
「じゃあ何?」
駿介は甘く静かなトーンを崩さない。お、落ち着かないんですけど……。
何で対象外のはずの俺に、そんな甘い態度を取るんだよ?
「真紀?」
「だ、だって! 俺足遅いし、絶対駿介の迷惑になるよ!」
俺がそう叫ぶと駿介は一瞬目を見開き、それから…… すごくホッとした表情に変わった。
「気にするな」
「気になるってば……」
「じゃあ」
駿介がズイッと前に身を乗り出した。な、何だ?
「二人て練習しよう。真紀が気にならないよう、俺が全力を尽くすよ」
「……え?」
ちょっと待て。それは樹に言うセリフじゃないのか?
またバクバクし始める心臓に、俺はいろんな意味で戸惑っていた。
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