腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ

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第一章

駿介登場

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食堂内は結構混んでいた。きっと、俺みたいに朝の弱い奴が多いんだろう。

「相変わらず遅いな」

い……イケボ!
甘くて優しい低音ボイスが上から降って来た。

パッと顔を上げて顔がほころぶ。
イラストに忠実な、サラサラヘアーにきりっとした眉。澄んだ、それでいて男らしい切れ長の瞳に少し薄めの唇。どのパーツをとっても、どこもかしこもカッコよくて色っぽくて……!
これ、駿介だよな?

「おはよう、駿介」

やっぱりそうだ!
「お、おはよう」
「……おはよう」

ふぉぉぉぉ……っ。至福の瞬間っ。
間近で駿介と樹のツーショットが拝めるなんて。

嬉し過ぎて駿介をニコニコと眺め続けていたら、気付いた駿介に顔を逸らされてしまった。何で?
……あ、駿介ってモテ過ぎて面倒臭い思いもしていたんだっけ。ウザいと思われちゃったかな?

「そうだ駿介、相談が合ったんだ」
「何だ?」
「真紀の部屋のことなんだけど」
「真紀の?」
 
樹の相談が俺の事だと分かって、駿介がこちらに視線を向けた。
……俺はいいから、樹と話し続けてくれたらいいのに。

「真紀?」
「あ、うん。朝俺弱いからさ、それで樹が心配してくれて。柏木の部屋に移動したらいいんじゃないかって提案してくれて」

「ダメだ!」
「え?」
「何で?」

いつも融通を聞かせてくれる副寮長の駿介らしからぬ言葉に、俺も樹も驚いた。

「何ででもだ。一人だけ特別扱いなんてできないだろ」

「特別ってなんだよ。駿介らしくない! 二人部屋のこっちから言わせれば、役職も付いてないのに個室同然って言う方が特別扱いだろ」

「そういう事じゃないだろ」
「じゃあどういう事だよ」

あうう……。俺のせいで二人が険悪ムードになっちゃってる。これはまずいよ。二人には恋人同士になってもらわないといけないのに。

「あ……、樹。えっと、いいよ。頑張って何とか朝早く起きるようにするから」
「でもさあ」

樹はまだ不服そうだ。可愛らしいほっぺをぷくっと膨らませている。

うわーっ、マジやばい。こんな樹を間近で見てるんだ。駿介も今なら絶対分かりやすくデレてるはずだ。
そうそう拝めないレアな駿介を見ようとチラリと視線を向けた。……んだけど、駿介はちっともデレてなく真顔でこちらを見ている。

「……?」
「真紀」
「え、は、はいっ?」

うわーっ、声がひっくり返っちゃった! 
なんだよ急に、二割増しの低くて甘い声なんか出して! 無駄遣いしないで、樹をくどく時に使えよな。腰に来ちゃったじゃないか。

「朝なら俺も早い。毎朝支度がすんだら、俺がお前を起こしに行ってやる」

えっっっ!?

「え~っ? それなら俺が真紀にしてやってる事と変わらないじゃない。それよりは……」
「変わらない事は無い。俺はお前より朝も早いし、何よりも合鍵を持つ許可が出やすい」
「え? 合鍵?」

それって、何? 俺を起こすために、毎朝カギを開けて入ってくるって事?

「部屋を移動させるよりもずっと現実的だ、そうだろ真紀?」

そう言って微笑む駿介の顔がいやに色っぽくて、なぜか俺の方がドキドキする羽目に陥った。
(いや俺じゃなくて、樹をドキドキさせろよ!)
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