3 / 80
第一章
駿介登場
しおりを挟む
食堂内は結構混んでいた。きっと、俺みたいに朝の弱い奴が多いんだろう。
「相変わらず遅いな」
い……イケボ!
甘くて優しい低音ボイスが上から降って来た。
パッと顔を上げて顔がほころぶ。
イラストに忠実な、サラサラヘアーにきりっとした眉。澄んだ、それでいて男らしい切れ長の瞳に少し薄めの唇。どのパーツをとっても、どこもかしこもカッコよくて色っぽくて……!
これ、駿介だよな?
「おはよう、駿介」
やっぱりそうだ!
「お、おはよう」
「……おはよう」
ふぉぉぉぉ……っ。至福の瞬間っ。
間近で駿介と樹のツーショットが拝めるなんて。
嬉し過ぎて駿介をニコニコと眺め続けていたら、気付いた駿介に顔を逸らされてしまった。何で?
……あ、駿介ってモテ過ぎて面倒臭い思いもしていたんだっけ。ウザいと思われちゃったかな?
「そうだ駿介、相談が合ったんだ」
「何だ?」
「真紀の部屋のことなんだけど」
「真紀の?」
樹の相談が俺の事だと分かって、駿介がこちらに視線を向けた。
……俺はいいから、樹と話し続けてくれたらいいのに。
「真紀?」
「あ、うん。朝俺弱いからさ、それで樹が心配してくれて。柏木の部屋に移動したらいいんじゃないかって提案してくれて」
「ダメだ!」
「え?」
「何で?」
いつも融通を聞かせてくれる副寮長の駿介らしからぬ言葉に、俺も樹も驚いた。
「何ででもだ。一人だけ特別扱いなんてできないだろ」
「特別ってなんだよ。駿介らしくない! 二人部屋のこっちから言わせれば、役職も付いてないのに個室同然って言う方が特別扱いだろ」
「そういう事じゃないだろ」
「じゃあどういう事だよ」
あうう……。俺のせいで二人が険悪ムードになっちゃってる。これはまずいよ。二人には恋人同士になってもらわないといけないのに。
「あ……、樹。えっと、いいよ。頑張って何とか朝早く起きるようにするから」
「でもさあ」
樹はまだ不服そうだ。可愛らしいほっぺをぷくっと膨らませている。
うわーっ、マジやばい。こんな樹を間近で見てるんだ。駿介も今なら絶対分かりやすくデレてるはずだ。
そうそう拝めないレアな駿介を見ようとチラリと視線を向けた。……んだけど、駿介はちっともデレてなく真顔でこちらを見ている。
「……?」
「真紀」
「え、は、はいっ?」
うわーっ、声がひっくり返っちゃった!
なんだよ急に、二割増しの低くて甘い声なんか出して! 無駄遣いしないで、樹をくどく時に使えよな。腰に来ちゃったじゃないか。
「朝なら俺も早い。毎朝支度がすんだら、俺がお前を起こしに行ってやる」
えっっっ!?
「え~っ? それなら俺が真紀にしてやってる事と変わらないじゃない。それよりは……」
「変わらない事は無い。俺はお前より朝も早いし、何よりも合鍵を持つ許可が出やすい」
「え? 合鍵?」
それって、何? 俺を起こすために、毎朝カギを開けて入ってくるって事?
「部屋を移動させるよりもずっと現実的だ、そうだろ真紀?」
そう言って微笑む駿介の顔がいやに色っぽくて、なぜか俺の方がドキドキする羽目に陥った。
(いや俺じゃなくて、樹をドキドキさせろよ!)
「相変わらず遅いな」
い……イケボ!
甘くて優しい低音ボイスが上から降って来た。
パッと顔を上げて顔がほころぶ。
イラストに忠実な、サラサラヘアーにきりっとした眉。澄んだ、それでいて男らしい切れ長の瞳に少し薄めの唇。どのパーツをとっても、どこもかしこもカッコよくて色っぽくて……!
これ、駿介だよな?
「おはよう、駿介」
やっぱりそうだ!
「お、おはよう」
「……おはよう」
ふぉぉぉぉ……っ。至福の瞬間っ。
間近で駿介と樹のツーショットが拝めるなんて。
嬉し過ぎて駿介をニコニコと眺め続けていたら、気付いた駿介に顔を逸らされてしまった。何で?
……あ、駿介ってモテ過ぎて面倒臭い思いもしていたんだっけ。ウザいと思われちゃったかな?
「そうだ駿介、相談が合ったんだ」
「何だ?」
「真紀の部屋のことなんだけど」
「真紀の?」
樹の相談が俺の事だと分かって、駿介がこちらに視線を向けた。
……俺はいいから、樹と話し続けてくれたらいいのに。
「真紀?」
「あ、うん。朝俺弱いからさ、それで樹が心配してくれて。柏木の部屋に移動したらいいんじゃないかって提案してくれて」
「ダメだ!」
「え?」
「何で?」
いつも融通を聞かせてくれる副寮長の駿介らしからぬ言葉に、俺も樹も驚いた。
「何ででもだ。一人だけ特別扱いなんてできないだろ」
「特別ってなんだよ。駿介らしくない! 二人部屋のこっちから言わせれば、役職も付いてないのに個室同然って言う方が特別扱いだろ」
「そういう事じゃないだろ」
「じゃあどういう事だよ」
あうう……。俺のせいで二人が険悪ムードになっちゃってる。これはまずいよ。二人には恋人同士になってもらわないといけないのに。
「あ……、樹。えっと、いいよ。頑張って何とか朝早く起きるようにするから」
「でもさあ」
樹はまだ不服そうだ。可愛らしいほっぺをぷくっと膨らませている。
うわーっ、マジやばい。こんな樹を間近で見てるんだ。駿介も今なら絶対分かりやすくデレてるはずだ。
そうそう拝めないレアな駿介を見ようとチラリと視線を向けた。……んだけど、駿介はちっともデレてなく真顔でこちらを見ている。
「……?」
「真紀」
「え、は、はいっ?」
うわーっ、声がひっくり返っちゃった!
なんだよ急に、二割増しの低くて甘い声なんか出して! 無駄遣いしないで、樹をくどく時に使えよな。腰に来ちゃったじゃないか。
「朝なら俺も早い。毎朝支度がすんだら、俺がお前を起こしに行ってやる」
えっっっ!?
「え~っ? それなら俺が真紀にしてやってる事と変わらないじゃない。それよりは……」
「変わらない事は無い。俺はお前より朝も早いし、何よりも合鍵を持つ許可が出やすい」
「え? 合鍵?」
それって、何? 俺を起こすために、毎朝カギを開けて入ってくるって事?
「部屋を移動させるよりもずっと現実的だ、そうだろ真紀?」
そう言って微笑む駿介の顔がいやに色っぽくて、なぜか俺の方がドキドキする羽目に陥った。
(いや俺じゃなくて、樹をドキドキさせろよ!)
171
お気に入りに追加
988
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる