腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ

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第一章

せっかくだから願望成就するぞ

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「もうー、遅いよ。早く顔を洗って」
「あ、うん」

現れたのは、大きな瞳が印象的な可愛らしい男子。どこかで会ったような気がするのだけど……。
しかもあの制服。

「あっ!」
「えっ、な、何?」
「あ、ううん。急ぐね」

そうだ、そうだよ。『男なのに彼氏が出来ました』の樹じゃん。
ってことは、何? 俺まだ夢でも見てるの?

ギュムっと頬をつねってみた。
いって! 痛たたた……。

信じられないけどこの痛さは夢じゃない。
てことは、ここは『坂上男子高等学校』の寮の部屋!?

もしかして……。これはもしかしなくても……、駿介に会えるってことじゃない?
それでもって話の進行具合では、樹と駿介の仲を俺が取り持つことが出来るかもしれないじゃないか!

小説の中に居るとか訳わからない状態に混乱はしているけど、俺にとって美味しい状況には間違いないんだと思い込むことにした。だってそうでもしないと、精神のバランスが保てない。
現実逃避と言われようが、俺は俺の思う通りのハッピーエンドに変えていくことに全力を尽くすことを心に誓った。

「お待たせー」
「じゃ、行こうか」

樹の笑顔はやっぱり可愛い。食堂に向かう道すがら、出会う人たちみんなが樹に目を向けて行く。

そうだよな。主人公は皆の注目の的だ。

「ねえ、真紀。俺ずっと思ってたんだけど、真紀は一人部屋って向かないんじゃない?」
「え?」

そう言えば、みんな2人部屋の設定だよな。何で俺だけ……、あ、違った。
寮長とか副寮長とか役職の付いている人達は個室が与えられていたっけ。

「もともと一人余っているからということで真紀が一人部屋になっちゃってたけど、その後鈴木が転校して行って柏木も一人になっただろ? 年度途中だけど、柏木の部屋に移っちゃえば?」

柏木……?
柏木って確か、生真面目でそこそこ顔が良くて少数だけどファンがいる設定だったよな。
柏木と同室になったら、柏木目当ての奴がやって来て、いちゃいちゃするところを間近で見れるのかな?

「真紀? 顔、変」

樹に変な目で見られて慌てて両手で顔をパシンと叩いた。
いかん、いかん。男同士がいちゃいちゃするかもって想像しただけで、顔がニヤける。

「あ、ごめん。でも、そうだね。柏木だったらしっかり朝起こしてくれそうだよね」
「だろう? 後で駿介に相談してみようぜ」
「そうだね! 賛成!」

二年生なのに、駿介副僚長の設定万歳!

さっそく駿介と樹のツーショットが見れるんだ!
めっちゃ楽しみ!
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