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第一章

もしかして…!

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「……まったく」

呆れたといった感じでため息を吐く御影さん。それこそ口の悪いヤローなら『チッ』とでも言いたそうな表情だ。
だけど……。

「すみません、御影さん。……でも、俺は御影さんと2人になれて嬉しいんですけど」

「……うれしい?」

なぜだか御影さんは不思議そうな表情で俺を見た。

「決まってるじゃないですか、嬉しいですよ! ……そりゃ、御影さんには迷惑かもしれませんけど……、俺、それでも御影さんのこと好きですから。2人っきりってだけで、それだけですごくドキドキしています」

俺が出来る目いっぱいの告白に、御影さんが目をパチパチとさせる。本気で驚いているようだ。……なぜ?


「だってお前、……愁たちと一緒の時の方が楽しそうじゃないか。俺にはあんな顔、しないくせに」

「……え?」

とてもじゃないけど御影さんの口から出てくるとは思えない意外過ぎる言葉に、今度は俺が目を瞬かせた。

「……俺を見る時は、いつも引き攣ったような……なんとも言えない顔をしてるだろ」
「それは……っ!」

好きな人を目の前にして緊張している俺の姿が、御影さんの目にそう映ってしまっているという事実に驚愕した。驚愕して、気が付いたら咄嗟に前に出て御影さんの腕を掴む。

「緊張してるからに決まってるじゃないですか! 大好きで、片思いしている人が目の前にいるんですよ? 少しでもカッコつけたいし、出来れば好感を持ってもらいたいから!」

凄い間近で言い募る俺を、目を真ん丸にして御影さんが見ている。
自然と力が籠る俺の手を、御影さんは嫌がりも外そうともしなかった。


「好き……なんです。本当に。御影さんのことが好きなんです」

今度こそ、ちゃんと気持ちが伝わってほしい。そんな気持ちで真っ直ぐ御影さんを見つめて訴える。そんな俺に御影さんは小さく息を飲み込んで、そっと目を伏せた。


「俺は……、俺が目の前にいるのに、他の奴らとだけ楽しそうにしているのを見て、ずっとモヤモヤしてた」

「……え?」

トクン、と俺の心臓が軽く波立つ。

「初めて……、俺のおとなしそうな容姿にだけじゃなく、強い姿に興奮したと言ってくれたお前が……、気になってた。しかもお前、明るく真っ直ぐで性格もよさそうだし……。俺はお前に好きだと言われてから、どんどんどんどん気になる存在になってきてるのに、俺に対してだけは楽しそうな表情を見せないから……。愛想がよくないのは自覚してるし……、お前の気持ちは離れて行ってるんじゃないかってそう思ってた」


……不貞腐れていた?
御影さんが?


思わぬ御影さんの告白に、俺の血が逆流してるんじゃないかと思うくらい心臓がバクバクと煩くなっていた。
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